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子どもを「花粉症にさせない」ためにできること

3月23日(土)6時10分配信 東洋経済オンライン

免疫の強い子と弱い子の違いはどこで生まれるのでしょうか。そこには「動物と触れ合うこと」が深く関係していました(写真:MakiEni/PIXTA)
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免疫の強い子と弱い子の違いはどこで生まれるのでしょうか。そこには「動物と触れ合うこと」が深く関係していました(写真:MakiEni/PIXTA)
つらい花粉症の季節がやってきた。目は痒く、鼻はむずむずし、くしゃみが止まらない……。わが子にはこんな目に遭わせたくないと考える親御さんもいるだろう。
子どもを花粉症から守りたいなら一体どうすればいいのだろうか?  実は、幼少時に動物と触れ合うとアレルギーを発症しにくいという研究結果がある。町で育った子どもと比べて、牧場で育った子どもは花粉症や喘息になることが半分ないし3分の1少なかったのだ。
シカゴ大学外科学教授のジャック・ギルバートらが上梓した『子どもの人生は「腸」で決まる 3歳までにやっておきたい最強の免疫力の育て方』は、「子どもを牧場に連れていくべき?」「薬用石鹸を使うべき?」「抗生物質は腸に影響する?」といった親御さんからの素朴な疑問に答える内容となっている。ここでは、本書の本文から抜粋し、一部編集のうえ掲載する。
■干し草に寝転び、動物と触れ合おう

 これまでの研究で、清潔すぎる環境はかえって子どもによくないことがわかっている。一方、細菌と触れ合うことで子どもの免疫力は高まり、病気になりにくくなる。それでは、子どもを適度に細菌に触れさせるにはどうすればいいのだろう。

 信頼できる最新の研究結果によると、「子どもを牧場に連れていくべき」と言える。できるだけ早期に、しかもできるだけ頻繁に連れていってあげよう。牧場では、好きなだけ動物をなで、動物が嫌がらないようなら頬をすり寄せてもよい。
 土、泥、粗土、ほこり、そこにあるもの何でも楽しませてあげる。干し草の中に寝転がってもいい。動物に手ずから餌をあげるのは楽しい。1つだけ注意すべきなのは、床の上に落ちている動物のフンを食べさせないこと。動物、とくにブタ、爬虫類、両生類は、病気の原因となる寄生虫や細菌を持っている(フンだけでなく皮膚にも持つ)。

 私たちの祖先は特定の動物を家畜にした。イヌは狩猟と見張り番に、ウシは乳と肉に、ブタ、ニワトリ、ヤギ、ウマ、ネコはいろいろな目的で家畜にされた。家畜となって牧場、畜舎、家に入った動物が畜産農家の人々の免疫機能を形成した。やがて、これらの動物は遠い親戚のあなたとあなたのお子さんの免疫機能も形成した。私たちは、こうして家畜を育てた人々の子孫なのだ。
 幼い子どもが動物に親しむとき、じつにさまざまな戸外の細菌にさらされ、発達中の免疫が訓練される。できるだけ牧場に行こうというのは、このためだ。

 牧場で育った子どもは、喘息やアレルギーになる可能性が低い。iPadを1日中手放さない子どもと違って、外でよく遊ぶ子は花粉、植物、土、環境中の細菌にさらされる。この子たちもアレルギー反応を見せることは少ない。

 興味深いことに、19世紀末にはイギリスやアメリカの上流階級で花粉症が流行っていた。しかし、動植物との接触が多い畜産農家の子弟はそうでもなかった。1990年代のスイスで、科学者が「牧場効果」を発見した。町で育った子どもと比べて、牧場で育った子どもは花粉症や喘息になることが半分ないし3分の1少なかったのだ。牛舎にたくさんいる微生物が牧場の子どもたちを守ったのである。
 研究者の私たちにも、思い当たる節がある。子どものころ、著者の1人ジャックはラット、カメ、イモリ、カエル、ヘビ、ナナフシ、昆虫、イヌ、トカゲを飼い、アレチネズミを家の外のトンネルで飼っていた。もう1人の著者のロブのテラリウムにはカエル、トカゲ、ヘビ、カメ、サンショウウオがいて、家族はニワトリ、ネコ、ラット(そう、わざわざ飼ったのだ)、イヌ、野外で捕まえたシカを飼っていた。当時はなぜそれが大事なのかは知らなかったが、私たちは動物の珍しい細菌に親しんだ。
■周囲にアレルゲンが少ないほどアレルギーに

 子どもを自然にさらすのがよいという考えは「衛生仮説」として知られる。研究仲間のエリカ・フォン・ミュティウスが信奉するこの説によれば、免疫系を効果的に刺激するには子どもたちの環境は「あまりに清浄すぎる」ことが多いのだそうだ。

 科学者が衛生仮説を提唱しはじめたころ、子どもがアレルギーか喘息を発症する率と、その子の家から約1.6キロメートル範囲内に見つかる動植物種の数に明確な相関性が見つかった。どうやら、局所的な生物学的多様性が子どもの免疫経験を左右するように思われる。周囲にアレルゲンが少なければ少ないほど、子どもはアレルギーを起こすのだ。
 エリカの研究では、接触した動植物の数ではなく、それらの動植物にいる細菌の種数が重要であることが示されている。こうした微生物の多様性が衛生仮説に信憑性を与える。動物が持つ広範な細菌種にさらされて育った子どもは、これらの細菌によって免疫が訓練される。細菌が多様であればあるほどいい結果が望めるのだ。

 現在、免疫不全の人が少ない集団を探すと、家畜とまだ直接触れ合う機会のある人々が見つかる。イヌに親しむ環境にある子どもは、そうでない子どもより喘息の発症率が13%低い。喘息治療にかかわる免疫学者の大半が、イヌを喘息の「原因」、ないしは少なくとも守ってくれるというより悪化させる要因と見なしていることを考えるなら、これは驚くべき数字と言える。同様に、牧場で育つ子どもは多くの似たような理由によって喘息の発症率が50%低い。
 私たちがエリカらと行った研究では、この点を追認する多くの事例を見つけた。アーミッシュとフッター派の人々は、テクノロジーを拒否して素朴な暮らしを選んだ、アメリカの二大宗教集団である。だが、両者には興味深いちがいがある。アーミッシュでは喘息の発症率が低いのに対して、フッター派の人々ではアメリカ平均の4、5倍だ。2つの集団間で唯一違うのはライフスタイルである。どちらも、多くの世代にわたって東欧で農耕によって暮らした同一の祖先の末裔で、遺伝学的に両者を分けるものは何もない。
 では、何が起きたのだろう?  アーミッシュは家族の牧場で暮らし、子どもたちは牧場という環境と広く関わりながら育つ。親と同じ場所で働き、ブタ、ウシ、ヒツジの世話をする。赤ちゃんのときも、両親が牧場で働くあいだ背負われていることが多い。

 フッター派の子どもはこれとは異なる経験をする。文化と生活上の必要性によって、牧場に立ち入ることを許されない。フッター派は巨大な集団を形成して暮らし、家々が中央の牧場周辺に配置されている。毎朝、男性と14歳以上の少年は車で牧場に連れていかれ、家畜の世話をしたり畑地で働いたりする。
 アーミッシュに比べてかなり機械化を進めているとはいえ、それでもまだ喘息の発症率のちがいは原因がわからない。フッター派の子どもたちが早期に動物と触れ合わないことが、喘息になる率が高い原因であるように思われる。ヨーロッパの祖先は牧場のあらゆる細菌やアレルゲンにさらされ、その結果強力な免疫系を獲得したが、アメリカで生まれた子孫は子どもたちからこの経験を奪い取ってしまったのだ。

■子どもを牧場・農場へ連れて行こう
 私たちは、研究で衛生仮説を検証した。喘息になりやすいマウスをこれら2つの牧場環境から採取したハウスダスト(家の中のほこり)にさらし、喘息の発症率の変化を調べた。驚くことに、アーミッシュの家の埃と微生物にさらされたマウスは喘息から守られたのに対して、フッター派の場合はそうならなかった。

 現代人の暮らしはとても快適だ。子どもは労働に駆り出されない。家事も最小限で、子どもたちは危険な病気から守られている。人間にとっていかにも好都合だ。公的な保健制度が、小児の死亡率を減らし、疾患の蔓延を防ぐのに大きな役割を果たした。
 清浄な水や良好な衛生状態は特定の病原体に対するワクチンとは目的が異なるが(ワクチンは危険な病原体に対する暴露を防ぐというより、暴露されたときに私たちを守ってくれる)、私たちの体は現実の世界にあるさまざまな危険から保護され、祖先が日頃慣れ親しんでいた無害な細菌や危険度の低い細菌にさらされることもなくなった。

 だから、牧場に出かける、または――できれば――地元の農業やガーデニングの体験プロジェクトに参加することが大切なのだ。必要なワクチンを接種し、感染症の病原体にまつわる基本的知識(ブタのフンを食べない、生肉や腐った肉に触った手を口に入れないなど)を身につけていれば、お子さんは自由に環境を探検して汚れていい。
ジャック・ギルバート :シカゴ大学外科学教授/ロブ・ナイト :カリフォルニア大学サンディエゴ校小児科学教授

最終更新:3月23日(土)6時10分

東洋経済オンライン

 

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