ここから本文です

増加する外国人留学生は空室対策の「切り札」になるか《楽待新聞》

3月22日(金)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© DragonImages-Fotolia)
拡大写真
(写真© DragonImages-Fotolia)
日本で学ぶ外国人留学生が増加の一途をたどっている。急速に少子高齢化と人口減少が進む中で、政府は2020年の「留学生30万人計画」を掲げるなど、今後も優秀な学生の取り込みに力を入れる方針だ。

 賃貸市場ではこれまで、文化の違いによるトラブルの懸念などから外国人の受け入れに消極的なオーナーが多かったが、近年は空室率の上昇に伴って状況が変化。逆に入居者の対象を外国人に絞ることで、収益性を高める戦略も出始めた。そのメリットとリスクを探る。

■受け入れには大きな危険も伴う

 「区分に入居していたベトナム人に洗面台を破壊されました」

 千葉県に住む30代の投資家Mさんは、天井の異変に気付いた階下住民からのクレームでそれを知った。無理な体重をかけたのか、壁から排水管ごと洗面台が外された状態だった。床は水浸しで、階下にも水が漏れていた。

 「すぐに菓子折りを持って謝りに行きました。階下の住人は実需で住んでいる方で、当然カンカンです。怒りの矛先は言葉が通じない入居者ではなく私に向けられるので、相手の感情が収まるまでひたすら平謝り。本当に針のむしろ状態でした。幸い深刻な水漏れではなかったので、階下の家財に影響がなかったのが救いです」

 埼玉県在住の中村貴広さん(38)は11年の東日本大震災発生後、入居していた中国人が一斉に帰国し、家賃滞納状態に陥った経験を持つ。

 「自主管理で運営しているのですが、オーナーに連絡もなく一斉に帰国してしまったので本当に焦りました。幸い数カ月後には戻って来てくれて滞納も解消されたものの、もし彼らが戻ってこなかったら、荷物の撤去費用も考えると100万円近い損害を覚悟しないといけませんでした」

 空室に悩むオーナーにとって、外国人入居者は積極的に取り込むべきターゲットである一方、さまざまなトラブルを想定した上で受け入れていく覚悟も必要となる。

■増加し続ける留学生

 日本学生支援機構によると、15年5月1日現在の外国人留学生数は20万8379人。1年前の18万4155人と比べて13.2%増加した。09年の入管難民法改正で留学のハードルが引き下げられたことも追い風となり、その数は右肩上がりを続けている。

■蕨市で急増している「ある国」

 埼玉県南部に位置する蕨市。外国人の数は総人口の7%にあたる約5300人に上り、県内トップの外国人比率を誇る街だ。市の担当者は「もともと蕨市と隣の川口市は中小の工場が多く、早い段階から外国人労働力を受け入れてきた土地柄です。加えて物価も安く『暮らしやすい街』であることが定着につながったのでは」と語る。

 市によると、ここ数年は中国人と韓国人の増加は緩やか。代わって存在感を増しているのがベトナム人だ。この2、3年で3倍以上に増え、その数450人以上。蕨市では中国人に次ぐ数字となった。彼らの多くが日本語学校に通う留学生だという。

 駅前にある不動産会社のスタッフも「肌感覚では確かにベトナム人が増えていると感じます」と語る。「日本語学校が多い池袋や新宿から埼京線に乗って赤羽まで来たとしても、そこは都内なので家賃はまだ高い。その先、川を1本越えるだけで家賃相場がぐっと下がる川口や蕨などのエリアに注目した結果ではないでしょうか」

 「家賃が安い」「暮らしやすい」といった口コミが外国人コミュニティの間で広がり、新たな外国人を呼ぶサイクルを生み出しているようだ。

■「ワラビスタン」の現実

 蕨市には多くのクルド人が集まることから「ワラビスタン」と呼ばれることもある。しかし、蕨市の統計資料ではクルド人(トルコ国籍)の数は40人程度。街や駅前で見かける光景から受ける印象と大きくかけ離れている。市の担当者は「蕨市は市域が非常に狭いので、蕨駅の東口から少し歩くと川口市になります。『ワラビスタン』といっても、実際には川口市に住む方が多いのでは」と指摘する。

 政治的事情から「仮放免」(不法滞在者は入管施設に収容されるのが原則だが、体調や情状を酌量して収容が解かれた状態)という不安定な立場で日本に滞在しているケースも少なくなく、クルド人の全容を正確に把握するのは難しいようだ。それらを考慮すると、実際の外国人比率はさらに上がると考えられる。

 蕨駅東口から少し歩くと、クルド人の憩いの場になっているケバブ店「ハッピーケバブ」がある。店内にいたクルド人にインタビューを試みるも、彼らにとって住む場所に関する話題はかなりセンシティブなようで、多くを語りたがらない。オーナーもこの店の開業にあたって、店舗探しではさまざまな苦労があったことを匂わせていた。

■ベトナム人留学生を積極的に受け入れて高収益を実現

 外国人留学生が増加する状況を、好機と捉える不動産投資家が存在する。都内在住の三田俊治さん(51)もそのひとり。ベトナム人に特化した独自の客付けネットワークを構築することで、高収益での運営を実現している。

 三田さんは区分マンション5戸、戸建て2戸、アパート1棟、借地権付きビル1棟などを所有し、全17戸中7戸を15人のベトナム人に貸し出している。月間家賃収入は100万円以上にのぼる。

 外国人入居者を受け入れるようになったきっかけは、自身が経営していた飲食店での人手不足にあった。

 もともと都内で焼肉店を経営していた三田さんだが、飲食店のアルバイトは日本人の学生には人気がなく、人材確保に苦戦。そこで近くの日本語学校に求人の相談に行き始めた。当初は中国人、韓国人の学生の応募が多かったが、徐々にベトナム人の応募が増え、最終的にはアルバイトの大半をベトナム人が占めるようになった。

 「所有している店舗物件の2階と3階は寮になっているので、アルバイト従業員に住んでもらうようにしました。これが私の外国人向け賃貸の原型になっています。当時は支払ったバイト代の一部が毎月の家賃として戻ってくるような感覚でした」

 現在は賃貸経営が順調なことから、自分の店を畳んで居抜きでテナントに入居してもらい、物件オーナーとして賃料を得る立場を選択している三田さん。外国人留学生をアルバイト採用する中で、彼らの部屋探し事情にも理解が深まった。

 「日本に来て間もない彼らが部屋探しをする時の予算感は、光熱費込みで3万円とかなりシビア。3万円では都内で借りられる部屋はほとんどありません」。外国人留学生は入管難民法で就労時間が週28時間までと制限されている上、昼は日本語学校で勉強するケースが多く、働けるのは夜だけという事情もある。

 そこで、三田さんはルームシェアを前提とした貸し出しを行っている。主なターゲットはベトナム人だ。「昔は中国人、韓国人入居者も相部屋OKでしたが、今はルームシェアを嫌がります」。かつて多かった母国の仕送りのための"出稼ぎ"を兼ねた留学ではなく、裕福な留学生が勉学に打ち込むために来日するケースが増え、住まいに求める水準が上がってきたことが背景にある。

■外国人留学生の物件ニーズとは

 三田さんの元には、知人が所有する物件の入居者付けに関する相談も舞い込んでくる。これまでの経験から、外国人留学生の物件ニーズについて「日本語学校が多い池袋や新宿に一本でアクセスできる沿線の需要が高く、駅から物件までの距離はあまり問われない」と分析する。

 ただ、同じターミナル駅でも、日本語学校が少ない渋谷などはあまり人気がないという。外国人留学生は費用の面からバスより自転車での移動を好むため、物件の場所によっては自転車をサービスするなどの工夫もしている。

 「学校とバイト先、そして住む場所。この3つが同じ沿線にあったり、3点で作る三角形の面積が小さいのが理想です」と三田さん。日本語学校の入学シーズンは4月以外にも、7月、10月、1月とあるため、ほぼ1年を通して需要が途切れないことも安定経営につながっている。

■一番のネックを取り除く

 来日間もない留学生が部屋を借りる場合にネックとなるのが、15万円や20万円といった初期費用の工面だ。そこで、三田さんは初期費用ゼロ、しかも家具家電付きで募集し、退去時の清掃費用のみデポジットとして預かっている。「彼らは価格を重視するので、部屋は最低限の清潔感があれば十分。退去後の原状回復も、壁紙はそのままで清掃だけすれば次の人に貸し出せます」

 外国人受け入れのリスク低減を図るため、三田さんは内覧時に「時間や約束を守れるか」「社会生活の基本ができるか」といった人物像を見極めるようにしている。

 外国人留学生のニーズを汲み取った募集条件と、ルームシェアの合わせ技が高収益での運営につながっている。三田さんは「物件によっては、普通に日本人に貸した場合と比べて2倍の収益も期待できます」と語る。

 しかし、ただ高収益を追求するだけでは運営は行き詰まる。三田さんはオーナー側が一方的に得することがないよう、ルームシェアの人数に応じて1人あたりの家賃を下げたり、初期費用をゼロにして家具家電を付けたりと、常に彼らとWin-Winの関係になることを心がけているという。

 「そういった取り組みによって、留学生の間で『あのオーナーはいいオーナーだ』と口コミが広がるので、空き部屋が出た時も次の募集がしやすくなります。入居者から『2人部屋に3人で住むことで一人あたりの家賃を少し下げてもらえないか』と相談されるほどです」

■賃貸募集はコストゼロで

 一般の賃貸管理会社は責任の所在があいまいな相部屋を敬遠するが、三田さんは自主管理による運営でコストカットを実現。加えて、独自のネットワークによる入居付けができることが大きな強みだ。入居者の募集はFacebookで完結するという。

 「まずは、日本語で書いた募集条件を語学が堪能なベトナム人入居者に翻訳してもらいます。それをコミュニティに投稿してもらうと、1時間で数十件の反響が来ます。週末は内覧対応を1日で10件以上することになって大変ですが、だいたいこれで入居が決まります」

 ベトナムではFacebookがポピュラーだが、韓国ではカカオトークの人気が高いなど、SNSにもお国柄があるそうで、ターゲットに応じて使い分けるのがコツだという。しかし、来日間もない外国人留学生では、日本語がうまく話せないはず。コミュニケーションへの不安はないのだろうか。

 「『留学生の青田買い』と呼んでいるのですが、日本に来て数年経った人よりも、実は来日すぐの人のほうが入居マナーが良い」と三田さん。「日本に長く滞在すると『不良外国人化』する人が一定数いる一方で、『日本語を勉強する』という目的意識をしっかり持っている留学生には真面目な人が多いと感じます」

 最初にゴミ出しなどのルールをしっかり説明する必要があるため、場合によっては日本語が得意なベトナム人に時給1000円のアルバイト代を払って「通訳」をお願いすることもあるという。

■外国人の受け入れには世話人となる覚悟が必要

 とはいえ、言葉や文化が違う入居者を受け入れるのは容易ではない。三田さんも、入居者が強制送還されたため輸送費12万円を支払い、部屋に残された荷物を母国に送り返す―といったトラブルを経験している。

 また、自炊する入居者が多いためゴキブリなどが発生しやすく、業者による定期的な害虫駆除も欠かせないという。「彼らは人を招き入れる習慣があるので、近隣住民から『声がうるさい』などクレームを受けることもあります」

 もともと世話好きな性格ということもあり、ベトナム人入居者とは積極的にFacebookで友達になっているという三田さん。「SNSでつながっていると、たまに困りごとを相談されるので、その時はきちんと相談に乗るようにしています。そこを面倒に感じる人は、外国人向け賃貸の自主管理は不向きかもしれません。自分は、おせっかい焼きオヤジとして楽しみながら運営している感じです」

■外国人入居者とどう向き合うか

 都内で外国人向けシェアハウスを10年以上運営するKさんは、外国人の受け入れについて「日本人入居者にも問題を起こす人は一定数いるわけで、外国人だからといって色眼鏡で見るべきではない」と指摘。「トラブルを分析すれば、国籍の違いに起因するものはそう多くありません。『日本人だから』『外国人だから』といった見方ではなく、その人個人を評価すべきではないかと思います」

 厚生労働省が発表した外国人雇用の届出状況によると、2016年、日本で働く外国人は108万3769人と初めて100万人を超えた。そのうち20万人は留学生だ。人手不足が深刻化する日本の労働現場、特にサービス業では外国人留学生の労働力は不可欠となっている。彼らの生活基盤を支える住まいの需要は、今後ますます高まっていくだろう。
楽待新聞編集部

最終更新:3月22日(金)20時00分

不動産投資の楽待

 

情報提供元(外部サイト)

不動産投資の楽待

不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

最新記事を毎日更新

実際に不動産投資を行っている投資家の
「失敗談」や「成功談」をはじめ、
不動産投資をするなら必ず抑えておきたい
ノウハウを記事にして毎日配信!

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン