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課税所得「800万円超」なら法人化を検討すべきか《楽待新聞》

3月19日(火)15時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© tkyszk-Fotolia)
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賃貸経営を行うにあたって、法人化を検討したことがある人、そして実際に法人での経営を行っている人は多い。しかし、果たして法人化のメリット・デメリットをきちんと把握しているだろうか?

取材をしてみると、「法人より個人で持っていたほうが良かった……」と後悔するオーナーもいたが、どのような人が法人化することの恩恵を得られるのか? 税務のプロ・税理士に法人化することのメリットを取材。どういう人なら法人化しても成功できるのかを確認した。さらに、4人のオーナーに法人化にまつわるエピソードを聞いた。

■勧める理由は「使い勝手の良さ」

叶税理士法人の税理士・小田和典さんは、不動産賃貸業においては「基本的には法人化を勧めています」と断言する。その理由は 「経費にできる幅が広いなど、使い勝手が良いから」だという。

「例えば保険ですが、個人には年間で控除ができる上限額が決まっています。法人であれば、こうした上限額はありません」

個人の場合、生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料のそれぞれにつき最高4万円、つまり年間で12万円までしか控除が認められていない。法人にはこうした制限がなく、場合によってはすべて経費にすることができる。また減価償却費については、法人の方が自由は多い。個人の場合には強制償却となるが、法人の場合は任意のため、償却限度額の範囲内で自由に利益の幅を調整することができる。

「不動産を取得した際の経費もそうです。登録免許税や不動産取得税は、個人の場合には必ず経費となりますが、法人の場合には資産計上か経費計上か選択することが可能なのです」

つまり、法人で不動産を取得し、これらの税金を経費にすると赤字となってしまう場合には、資産計上することができるということだ。小田さんは「銀行向けの決算表の見せ方、という点で、法人の方が自由が利き、工夫しやすいです」と語る。

■繰り越し期間の違い、所得分散もメリット

この他にも法人化によるメリットはある。小田さんは「賃貸経営を行う上でマイナスが出た場合、青色申告で繰り越すことで翌年以降の利益などとの相殺が可能になりますが、この繰り越し期間は、個人が3年間、法人だと10年間です。3倍の差がありますから、大きな違いですね」と話す。

これまで法人の繰り越し期間は9年だったが、2016年度の税制改正によって、2018年4月1日以後の事業開始年度は10年間となっている。

さらに「法人で賃貸経営を行う際に、他に給与を受け取っていない家族を法人の役員とし、仕事をしてもらうことで、役員報酬を支払うことができます」と小田さん。所得の分散をすることで法人の所得を圧縮、税率を低く抑えることが可能になるのだ。

■法人の方が得になる可能性がある所得金額は

「法人化することの最大のメリットは節税になることです。法人税と所得税の税率の差によって、節税が可能となります」(小田さん)

個人の所得税には、プラス10%の住民税がかかってくることになるので、個人での所得金額が900~1800万円の範囲では税率は43%(所得税33%+住民税10%)。対して、法人は800万円超の所得金額で実効税率が約34%となるため、800万円でほぼ同じ税率、900万円を超えると法人の方が税率が低くなる。なお、所得税は社会保険料や扶養控除などによっても変動する。

こうしたことから、「課税所得金額が800万円を超えたら、法人での賃貸経営を考え始める余地があると思います」と小田さんはアドバイスする。また、サラリーマン投資家の場合には、本業の給与での税率を確認する必要がある。これに不動産収入を加えた場合、法人と個人のどちらで物件を所有するほうが得なのかを見極めなくてはならない。

■法人設立の意味がないケースとは?

これまで示してきたように、法人化によって税率を抑え、賃貸経営を有利にすることが可能となる。だが、投資規模(所得金額)によっては個人の方が税率が低い場合もある。

あるいは、個人の物件を売却する場合、売却益に対する税金は他の所得とは別に計算がなされる。5年以内だと短期譲渡所得として税率は39%、5年を超えると長期譲渡所得となって税率は20%だ。法人は別計算とならない。つまり、5年以上物件を所有したのちに売却した場合には、税率は法人より個人の方が低くなる可能性が高い。

「例えば属性の高いサラリーマンなど、個人の給与がたくさんある人が、損益通算による節税のために減価償却を多く取れる物件を購入、5年を超えて売却するというようなケースだと法人化しても意味がないですよね」(小田さん)

その一方で、法人で物件を所有している場合に物件を売却する際、物件だけではなく法人ごと売却すれば税率は20%で済むと小田さんは言う。こうした節税の選択肢の幅が広いことも、法人化のメリットの1つだ。だが、当然のことながら法人設立にも費用が掛かる上、税理士報酬などの維持費も必要になってくる。

自分が投資規模をどこまで拡大していくつもりなのか、どんな物件を買い進めるのか、といったことを事前にしっかり定めた上で法人を設立することが重要だ。

(注)すべての所得税について、2037年まで復興特別所得税が加わる。

■デメリットは「維持費」

都内在住の不動産投資家Aさんは、個人でRCや区分マンション、戸建てを合わせて9棟21室所有している。昨年、法人を設立した。法人名義では建設中のものを含めて2棟のアパートを持っているという。

法人を立ち上げた理由について、Aさんは「もう売却してしまいましたが、これまで個人でRCマンションを3棟ほど持っていました。しかし、減価償却がだんだん減って、税金がどんどん高くなって、個人でやるのはもう限界だと思ったんです。それでその物件を売却したお金で法人を設立しました」と説明する。

サラリーマン投資家であるAさん。折しも本業での給与が上がった時期で、所得税にも影響があったという。

「保険料や年金も上がってくるし、何のために不動産投資をしているのかな、逆に損じゃないかな、と思ったんです」

Aさんが所有していた物件はエリア的に治安が悪く、結果的に入居者の属性も低くなってしまっており、客付けにも苦労していたという。売却と同時に、物件のエリアを都心にシフトしたいとの思いもあったそうだ。

その後、法人名義でアパートを1棟購入した。税金対策として法人化を決意したAさんだが、その一方で「維持費がかかる」とデメリットに感じていることを話す。

Aさんは当初、法人を立ち上げてもそこまで投資規模を拡大するつもりはなかったという。しかし「法人だと、税理士への報酬を毎月支払う必要があります。数万円レベルですが、利回り10%を切る小さなアパート1棟のキャッシュフローの中ではインパクトが大きく、物件を増やさないといけないな、と感じました」

そこで、新築アパートをもう1棟購入することにした。「今後も、大きい物件を買うときには法人名義で所有しようと思います。ただ、物件価格も高いですからどんどん買い進められるわけではないですが」と話す。

■株式会社か合同会社か?

Aさんは法人を株式会社として立ち上げた。法人の設立には、合同会社での設立という方法もある。設立費用としては、雑費なども含めると株式会社で30万円程度、合同会社で約15万円程度かかる。このように合同会社の方が設立のための費用が安く済むが、Aさんは「個人的には合同会社よりしっかりしている印象だったので、資本金300万円で株式会社という形にしました」と話す。

ただ、株式会社と合同会社の違いはあまり感じていないという。「株式会社のほうが融資にも有利かな、と思ったんですが、金融機関に聞くと、全然そんなことはないそうです。どちらを選ぶかは好みの問題かもしれませんね」

■「もっと早く法人化しておけば……」

九州地方に住むBさんは今年、法人を設立した。

「今は戸建て1つと、木造アパート2棟、RCマンション2棟の全部で5棟所有しています。ただ、これらはまだ法人に移せていません。移すのにも費用がかかるので、おいそれと移せないんです」

移転の際には、当然のことだが不動産取得税や登録免許税がかかる。これに加えて、法人への売却価格次第ではさらに税金もかかってくる。司法書士に登記を依頼する場合には、司法書士への報酬も加わる。Bさんは今後、融資の借り換えをする際に一気に名義変更することを検討しているという。

Bさんは「法人化によって税金を安くできるということを、きちんと理解していませんでした。わかっていれば、もっと早くに法人を設立していたのに……と後悔しています」と述べる。

現在所有物件がないため、法人については税理士との顧問契約料などで赤字の状態。「少なくとも今年1年は金銭的なメリットはありません。最初から法人で賃貸経営をしておけばよかったです。ある程度の規模以上にするなら法人を設立したほうがお得なのだと、よくよく計算しておけば……」

法人設立は難しく、ハードルが高いものだと思い込んでいたが、「合同会社を立ち上げたのですが、ほとんど専門家にお任せなので本当に簡単でした」と語り、ますます「もっと早くにやっておけば」との念が強いようだ。

■「150万円の節税」

「法人化は本当にメリットばかりです」と言い切るのは、アパマン物件を3棟を持つCさんだ。そのうちの1棟について、法人に移転した。

「個人事業者として賃貸経営を続けた場合と現在を単純化して比較すると、153万円ほどの合法的節税となっている計算です。法人+個人で申告するスタイルで、毎年約150万円のキャッシュが増えるということは、6室くらいの小さい中古アパート1棟から得られるキャッシュに相当しますから、かなりありがたいですよ」

Cさんは法人設立を検討するオーナーに対して、「それぞれの年齢、家族構成、収入の規模などによってもそれぞれ最適な方法があると思いますから、まずは勉強することではないでしょうか」とアドバイスする。

■消費税還付の落とし穴

法人化する目的として「消費税還付」を挙げるオーナーもいるが、関西地方で不動産投資を行うDさんも、法人を設立した目的の1つは「消費税還付をしてみたかったからです」と答えた。Dさんは法人で2棟の中古アパートを所有している。

だが、「中古だと、新築に比べて物件価格が低いので、還付額が少ない割に課税売上をたくさんあげなくてはいけない。その苦労の方が大きいです。大変なだけでメリットがないです」と語る。

「結果論ですが、古い物件は個人で所有しておいて、そのあとに法人化を検討するくらいでもよかったかもしれません」(Dさん)

消費税還付については、平成28年度の税制改正でスキームが大幅に変更になった。2016年4月1日以降は、3年間、課税売上割合を高い水準で維持しなければならないなど、レジデンスがメインのオーナーには消費税還付のハードルが非常に高くなっている。

■自身の状況を見極めて法人化検討を

法人化には複数のメリットが存在するが、オーナーそれぞれの投資規模や、家族構成などによって、法人化すべきタイミングや方法はさまざまだ。ある税理士は「法人化している人が、必ずしも成功しているわけではない」と話す。法人化によって支出が多くなり、逆に損となる場合もあるのだ。

「○○円に達したから法人化をしよう」といった安易な考えではなく、専門家に相談したり、自身の所得状況や法律をきちんと確認することで、最も得となる賃貸経営を行うようにしたい。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:3月19日(火)15時00分

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