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■アメリカの中央銀行は政策姿勢を中立的に修正した
1月14日のコラム「アメリカの株式市場は再び上昇しそうだ」では、同国株市場の急落の主因が、FRB(米連邦準備制度理事会)の市場との対話の失敗にあると結論づけた。
実際に、1月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRBはこれまで失業率が低いため将来のインフレに備え「利上げ継続」という姿勢から、「利上げ・利下げ」いずれの方向にも動きうる、と政策の方向性を中立にはっきり修正した。
政策姿勢を「中立」に戻したことに加えて、2017年10月に約4.5兆米ドルあったFRBのバランスシート(BS)縮小政策の見直しにもやや踏み込んだ。2018年末時点でBSは4.0兆米ドルまで減少しているが、今後の縮小方針に関して、議論・検討を進めることを追加で表明している。
すでに政策金利がいったん中立水準に近づく中で、BS縮小による流動性の抑制を通じて金融引き締め効果が強まる。
現時点で、BSの縮小ペースはおおむね判明しているが、縮小がいつまで続くのかは明示されていない(BS縮小が止まれば、その後はBSが拡大に転じるとみられる)。
2018年末にFRBの政策への疑念によってリスク資産であるアメリカ株式が大きく下落したことには、「利上げ」+「BS縮小」、を通じたFRBによる金融引き締めが、いつまで続くか不明になり、これが景気後退を招くとの疑念が強まったことが挙げられる。
1月FOMCによって、筆者はFRBが政策金利の姿勢を中立としたことに加え、BS縮小を早ければ年内に停止する可能性が高まったと筆者はみている。BS縮小終了時期は今後の議論次第だが、FRBが決めることができる。
一方、FRBの利上げ打ち止めによって、リスク資産がリバウンドしたのは、市場心理の振幅がもたらす、一過性の動きに過ぎないとの見方がある。アメリカ以外の欧州、中国など経済指標をみると、製造業を中心に2018年末から景気減速が強まっているなど、まだケアすべき点は多いのは事実である。
しかし、FRBの政策転換の可能性を最も早く嗅ぎ取っていた、新興国の通貨や株式市場は、昨年10月前後をボトムに一足早く上昇に転じている。通貨安定によって、インフレリスクが低下し、インドネシア、インド、南アフリカ、トルコなどの中銀は利上げの見送りの方向に政策を転換しつつある。もちろん、中国で経済停滞が続いていることが、新興国経済の大きなネックではある。だが、中国経済の減速が続いても、大きく失速する可能性は低く、各国中銀の政策転換とともに2019年に多くの新興国経済は持ち直すと見られる。
上記の経路でFRBの政策転換は、アメリカだけではなく、新興国経済の復調をもたらし、世界経済の安定成長をもたらすとみている。これは2016年にも起きたことだが、ほぼ同様のシナリオが2019年も期待できる、ということである。1月のアメリカ株のリバウンドが早かったので、目先はやや調整する場面はあり得るだろうが、2019年央から世界経済の安定成長への期待から、アメリカ株中心にリスク資産への追い風が強まる可能性があると予想している。
村上 尚己 : マーケット・ストラテジスト
最終更新:2月12日(火)5時20分
情報提供元(外部サイト)
週刊東洋経済 |
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