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アメリカ株は「もう上がらない」と言い切れるか

2月12日(火)5時20分配信 東洋経済オンライン

アメリカの株価は再び上昇基調。FRBのさらなる政策変更はあるのだろうか(写真:AP/アフロ)
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アメリカの株価は再び上昇基調。FRBのさらなる政策変更はあるのだろうか(写真:AP/アフロ)
 世界の株式市場は昨年12月に大幅下落となった後、2019年1月には大きくリバウンドした。特に、株価下落の震源地となったアメリカ株市場は、12月に10%前後下落したが、1月にはその下落分の約8割を取り戻し、その後2月に入っても上昇基調は崩れず、ほぼ2カ月ぶりの水準まで戻っている(2月8日時点)。

■アメリカの中央銀行は政策姿勢を中立的に修正した

1月14日のコラム「アメリカの株式市場は再び上昇しそうだ」では、同国株市場の急落の主因が、FRB(米連邦準備制度理事会)の市場との対話の失敗にあると結論づけた。
 そのうえで、株価急落に背中を押される格好で、ジェローム・パウエル議長などが政策姿勢を変更しつつあることに関して、(経緯がどうであれ)FRBの政策変更は望ましく、2019年のアメリカ株の反発をもたらす可能性を指摘した。12月の株価急落分を、わずか1カ月で大部分取り戻したピッチの早さは予想外だったが、FRBの政策変更が株高をもたらすとの見方は、間違いではなかったようである。

 実際に、1月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRBはこれまで失業率が低いため将来のインフレに備え「利上げ継続」という姿勢から、「利上げ・利下げ」いずれの方向にも動きうる、と政策の方向性を中立にはっきり修正した。
 将来のインフレ上昇リスク、海外経済減速がインフレを低下させるリスク、双方がほぼ同等の認識になったとみられる。現在の状況が変わらなければ「様子見」(声明文ではpatientという言葉を使った)をしながら、FRBが政策金利の据え置きを続けることが、より明確になった。

 政策姿勢を「中立」に戻したことに加えて、2017年10月に約4.5兆米ドルあったFRBのバランスシート(BS)縮小政策の見直しにもやや踏み込んだ。2018年末時点でBSは4.0兆米ドルまで減少しているが、今後の縮小方針に関して、議論・検討を進めることを追加で表明している。
 FRBなど中銀のBSの変動が金融市場や経済活動に及ぼす影響については、さまざまな分析や見方があるが、筆者は金融市場への流動性の供給源として中銀のBS変動は、無視できない影響があると考えている。

 すでに政策金利がいったん中立水準に近づく中で、BS縮小による流動性の抑制を通じて金融引き締め効果が強まる。

 現時点で、BSの縮小ペースはおおむね判明しているが、縮小がいつまで続くのかは明示されていない(BS縮小が止まれば、その後はBSが拡大に転じるとみられる)。
■バランスシート縮小も早期に止める方向へ? 

 2018年末にFRBの政策への疑念によってリスク資産であるアメリカ株式が大きく下落したことには、「利上げ」+「BS縮小」、を通じたFRBによる金融引き締めが、いつまで続くか不明になり、これが景気後退を招くとの疑念が強まったことが挙げられる。

 1月FOMCによって、筆者はFRBが政策金利の姿勢を中立としたことに加え、BS縮小を早ければ年内に停止する可能性が高まったと筆者はみている。BS縮小終了時期は今後の議論次第だが、FRBが決めることができる。
 FOMCメンバーの中で、ジェームズ・ブラード セントルイス連銀総裁やニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁など、利上げに慎重だったメンバーの方向に、ジェローム・パウエル議長などの主流派の見解が近づく格好で1月に政策転換が行われた。政策金利水準がいったん中立水準に達したのだから、BS縮小も早期に止める方向に議論が進む可能性は十分あるとみている。

 一方、FRBの利上げ打ち止めによって、リスク資産がリバウンドしたのは、市場心理の振幅がもたらす、一過性の動きに過ぎないとの見方がある。アメリカ以外の欧州、中国など経済指標をみると、製造業を中心に2018年末から景気減速が強まっているなど、まだケアすべき点は多いのは事実である。
 筆者は、FRBの中立転換が、新興国経済の安定をもたらす経路で世界経済全体の減速に歯止めがかかる経路が重要だと考えている。2018年のFRBの利上げと米ドル高によって、対外債務を抱える新興国ほど資金流出が顕著に見られ新興国の通貨が大きく下落し、ブラジルなど一部を除き多くの中央銀行が金融引き締めを余儀なくされたことが、新興国経済全体の成長にもブレーキをかけた。

 しかし、FRBの政策転換の可能性を最も早く嗅ぎ取っていた、新興国の通貨や株式市場は、昨年10月前後をボトムに一足早く上昇に転じている。通貨安定によって、インフレリスクが低下し、インドネシア、インド、南アフリカ、トルコなどの中銀は利上げの見送りの方向に政策を転換しつつある。もちろん、中国で経済停滞が続いていることが、新興国経済の大きなネックではある。だが、中国経済の減速が続いても、大きく失速する可能性は低く、各国中銀の政策転換とともに2019年に多くの新興国経済は持ち直すと見られる。
■日本株の反発が今ひとつだった理由

 上記の経路でFRBの政策転換は、アメリカだけではなく、新興国経済の復調をもたらし、世界経済の安定成長をもたらすとみている。これは2016年にも起きたことだが、ほぼ同様のシナリオが2019年も期待できる、ということである。1月のアメリカ株のリバウンドが早かったので、目先はやや調整する場面はあり得るだろうが、2019年央から世界経済の安定成長への期待から、アメリカ株中心にリスク資産への追い風が強まる可能性があると予想している。
 2019年は多くの地域で金融政策が緩和方向に転じ、また財政政策も拡張的に作用するとみられる。一方、1月の日本株のリバウンドが、アメリカ株よりも小さかったのは10-12月決算発表で企業業績が下振れていることが影響している。さらに、(各種対策が行われるものの)秋には消費増税で再び緊縮財政が実現するため景気抑制的となっていること、そして日本銀行の金融政策が手詰まりとなっていることなどが日本株への期待が高まらない最大の理由だろう。「アメリカ株>日本株」の状況は2019年も変わらないと考えている。
村上 尚己 : マーケット・ストラテジスト

最終更新:2月12日(火)5時20分

東洋経済オンライン

 

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