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ワケあり「不整形地」への投資に活路はあるか?《楽待新聞》

2月4日(月)11時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:平井広行)
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(写真:平井広行)
旗竿地や細長い土地、がけ地などの「不整形地」にはさまざまな制約があることから、相場よりも安く購入できることが多い。うまく活用できれば高利回りの優良物件に化ける可能性を秘めており、そこに注目している投資家も少なくないだろう。

とはいえ、ハイリターンにはハイリスクがつきもの。こうした不整形地は得てして想定外のトラブルに見舞われやすいうえ、安定した収益を得るには融資、建築費、間取りの問題などさまざまなハードルを越えなければならない。

そこで今回は、不整形地での投資事例を調査。ワケあり物件で成功を収めるためには何が必要なのかを分析し、その勝算とリスクを解明していく。

■「ウナギの寝床」にアパート新築で満室経営
一級建築士であり、新築アパートや中古戸建、RC造マンションなど8つの物件を所有する投資家でもある進藤強氏は、これまで旗竿地や細長い土地、がけ地といった不整形地に狙いを絞って物件を購入してきた。なかでも今回取り上げる木造アパートは、典型的な不整形地の物件だ。

西武新宿線・上石神井駅から徒歩約7分。敷地面積は約85㎡で、幅3m弱、奥行き約30mと、いわゆる「ウナギの寝床」と呼ばれる形状の敷地だ。進藤氏は2017年4月、ここに自ら設計した木造長屋建てのアパートを新築した。

総戸数は5住戸で、賃料は月7万円程度に設定。細長い敷地を5戸に分けているため、内部は縦に細かく分割された特殊な間取りだ。にもかかわらず竣工から1カ月間で4部屋が次々と埋まり、その後1月と待たずに最後の1部屋も入居が決まった。現在もそのまま満室経営を維持しているという。

「普段から練馬区や城東エリアなどを狙い、都心部は避けるようにしています。ターゲットは、エリアよりもデザイナーズ物件であることにこだわっている層。港区や世田谷区では手が出なくても、葛飾区や江東区、足立区なら希望の家賃でデザイナーズ物件に住むことができるという点で選んでいただいているようです」(進藤氏)

■「使い道がなさそうな土地」を探す

「とにかく安く買える土地」という条件で探す中で、たまたま不整形物件が見つかることが多いという進藤氏。Webサイトで安い順にソートし、1件ずつチェックするというシンプルな手法を取っている。狙い目はズバリ、「建物が建ちそうもなく、使い道がなさそうな土地」だ。

特に実需がなく、ハウスメーカーやビルダーの食指が動かなそうな複雑な土地は競争率が低く手に入れやすいという。過去には電柱に貼られた怪しげなチラシで土地を見つけ、実際に2度ほど購入したこともあるとか。

「今回の土地も、あるWebサイトでたまたま見つけた売れ残り物件です。初めて現地に足を運んだときは、バイパス道路沿いにも関わらず雑木林のように荒れていて、しかも極端に細長い不整形地。さらには前面道路より3mほど低い位置にあるがけ地でもあることもわかり、長い間買い手がついていないのも納得でした」

現地を見た進藤氏は、さっそく売り出し価格の半額以下の指し値を入れてみたが、そのときは即答で断られたという。ところがそれから約2年後、オーナーから「やっぱり買ってくれないか」と連絡を受けた。そこから数回交渉を重ね、最終的に相場を大幅に下回る価格で購入を決めた。

■購入後に立ちはだかる「法規」と「建築費」の壁

不整形地を安く購入して入居者も即決まり、さらには満室経営を維持――。結果だけを見るといかにも「お買い得」な掘り出し物件であったかに思えるが、この土地に長らく買い手がつかなかったことには次のような理由があった。

・担保評価が低い

まず、先述したように極端な不整形地であるため、当然ながら担保評価が低く希望額の融資が受けられない点だ。進藤氏の場合、同様の不整形地に物件を建てて収益を出してきた大家としての実績があった。銀行にはそうした具体的な収支を提示し、その点が評価されて自己資金は2割程度、残りはすべて融資でまかなうことができたという。

「今でこそ実績がありますが、最初は何件もの銀行から断られ、本当に苦労しました。それまで建築士として賃貸物件をいくつか手がけていたので、そのときの依頼主である大家さんに間に入っていただき、やっとのことで融資が引けるようになっていきました」

・防火地域の制限がかかる

次に、今回の土地が防火地域(都市計画法で決められた用途地域の1つ。市街地の中心で火災発生時の被害を抑えるために定められた地域のこと)にあり、木造3階建て以上あるいは延床面積100㎡を超える建物は建てられないという法的な制約である。85㎡の敷地に5住戸を設けるとなると、延床面積100㎡を切ることは簡単ではない。とはいえ鉄骨造やRC造で建てれば建築費は大幅にアップし、利回りが低下してしまう。

今回のケースでは、耐火建築物の制限を受けない「長屋」のアパートとすることで解決。5住戸を確保しつつ、延床面積が100㎡を超えないよう、吹き抜けを多く設けるなどの工夫を施した。これはオーナーである進藤氏が建築士であったことが大きい。

「こうしたきめ細かな設計・施工は、大手メーカーは請け負ってくれない可能性が高いと思います。限られた、しかも不整形なスペースに水回りなど必要な設備をすべて配置し、さらにさまざまな法的制約もクリアしつつ居住性も保たなければならないとなると割に合わないからです。私の場合、そうした設計には慣れていますし、理解のある工務店とのお付き合いもありますので、その点の心配はありませんでした」

・建築費が割高になる

建築費の問題も無視できない。一般的に、建物の形状が複雑になればなるほど施工の手間が増えコストも増大する。この物件も例に漏れず2~3割程度のアップとなったが、シャワートイレや浴室乾燥機などの設備を諦め、建築費を削ったという。

また、建物の幅と高さの割合(塔状比)が一定の割合を超える細長い建物の場合、より詳細な構造計算が義務付けられており、その分のコストも見込む必要がある。さらに今回のように国道に面した敷地では、工事車両や資材搬入のために一般の車両を通行止めにすることができない。これも工期や建築費、人件費に大きく影響する要因だ。例えば柱や梁を組み立てる「建て方」は、通常、木材を大型のクレーンで吊り上げて行われるが、今回のようにそのスペースがとれない場合、すべて手作業で搬入し、ワイヤーを使って吊り下げる作業となる。

■「相場の半額で購入」でも一筋縄ではいかず

ここでもう1つ、2年前に初めて不整形地の物件を購入したという、投資家のS氏による事例も紹介しておこう。

S氏が購入したのは、首都圏から約200km離れた地方都市にある築32年の雑居ビル。S造3階建てで、1Rが6世帯、1LDKが3世帯、事務所が2世帯、飲食店が1店舗入居する、幅約6m、奥行き約40mという細長の不整形地に建つ中古物件だ。

「競売で見つけた物件です。南北に細長い不整形地で、かつ全空の状態ではありましたが、諸費用込みで約850万円と周辺物件の相場の約半額であったこと、また徒歩圏内に大型ショッピングセンターがあるほか、新幹線の停車駅まで徒歩約10分程度という立地なので、最終的には更地にすれば十分に売却可能であることから購入を決めました。全額自己資金でまかなったため、融資を引くための苦労はありませんでした。満室稼動時の想定利回りは20%です」

現在は再稼働に向けてリフォームが進行中だが、一時は好立地を生かして建て替えることも検討したという。しかし「不整形地のハードル」に阻まれ、建て替えは断念した。

「敷地が準防火地域にあるため木造3階建が難しく、S造やRC造となると建築費がかさんでメリットが薄れてしまうという状況でした。また細長い敷地なので各部屋の広さが十分にとれず、間取りも不整形になってしまいます。解体費もネックでした。建設会社に相談したところ少なくとも1000万円ほどかかるということでしたので、現時点では建て替えは考えていません。不整形物件の難しさを感じました」

■不整形地物件はもうたくさん!?

S氏によると、今後同様の物件見つけたとしても積極的に購入したいとは思わないという。

「今回の物件は立地の割に安く購入できたため、仮に更地にして売却したとしても解体費が持ち出しになることはありません。ただ、やはり不整形地にはいろいろな課題がつきまとうので、次に同じような物件を見つけたとしても見送る可能性が高いと思います。収益率が通常の1.5倍~2倍くらいは見込めなければ、いろいろなリスクに対応できないというのが私の実感です」

■不整形地は「金のなる木」ではない

ここまで見てきたように、不整形地の収益物件化には非常に多くのハードルが存在する。もちろん、今回紹介したケースがすべてに当てはまるものではないが、少なくとも長年買い手がつかないような土地を格安で買い、生まれ変わらせるのは容易なことではないだろう。

一方で、進藤氏のように専門的な知識や経験があれば必ず成功するとも限らない。たとえ建築のプロであっても入念な事前準備は必須だと進藤氏は強調する。

「特にやっかいなのは、法規に適合しているかのチェックです。不整形地は整形地と違い、道路斜線や北側斜線、がけ条例などが非常に複雑に入り組んでいます。私のようなプロの建築士でも、これらすべてを把握している人はほとんどいないでしょう」

進藤氏の場合、自社に蓄積されたノウハウがあるため、これらに照らし合わせて事前にチェックを行うことで、法的な問題が起こらないよう備えているという。

「一般の投資家さんであれば、Webサイトなどを通じて、法規チェックを請け負っている建築士を探すしかないでしょう。加えて、建築費や資材の搬入費の見積もりなども事前に取る必要があります。これらをすべて織り込んだうえで利回りを計算しているわけですから、特に不動産投資の初心者にはあまりオススメはできません」

一口に不整形地といっても、その形状や変形の程度はさまざまであり、収益物件化のためのセオリーは存在しない。また不整形地は需要が少なく買い手を見つけづらいほか、想定外のさまざまなリスクが潜んでいるため、出口戦略を探るのも容易ではないだろう。進藤氏の例のように投資家が専門知識を持っており、かつ自らの手腕で物件の価値を高めて収益を上げられれば、持ち続けることも売り抜けることもできる。しかしこれはあくまでレアケースだということは覚えておきたい。

それでもやはり、「不整形地で高利回り」は魅力的なフレーズである。もしそうした物件に出合ったら、もしくはそんな謳い文句で購入を勧められたら、本記事で紹介した成功への険しい道のりを思い出し、慎重に決断していただきたい。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:2月4日(月)11時00分

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