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自然災害による被害や地下鉄民営化など 2018年の鉄道を振り返る

12月30日(日)12時30分配信 THE PAGE

[写真]4月には大阪市営地下鉄が民営化して「Osaka Metro」に。一番列車の出発のようす
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[写真]4月には大阪市営地下鉄が民営化して「Osaka Metro」に。一番列車の出発のようす
 さまざまなニュースが駆け巡った2018年も、残りわずか。今年は地震や台風と言った自然災害に翻弄された1年でもありました。鉄道業界も例外ではなく、数々の試練に立ち向かいながら走り続けました。そんな鉄道業界の2018年を、関西の話題を中心に振り返ってみたいと思います。

自然災害による甚大な被害

[写真]大阪府北部地震で被害を受けた阪急南茨木駅。左側のエレベーターは再建されたが正面の駅ビルは閉鎖が続いている
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[写真]大阪府北部地震で被害を受けた阪急南茨木駅。左側のエレベーターは再建されたが正面の駅ビルは閉鎖が続いている
 冒頭で記したとおり、2018年は数々の自然災害がたて続けに日本列島を襲いました。特に、7月の西日本豪雨では岡山・広島地区をはじめ各地で甚大な被害が発生し、山陽本線をはじめ多くの路線で長期間にわたって不通となりました。山陽本線や伯備線などの運休で貨物輸送もできなくなり、関東や関西方面から山陰・中国・九州地方へ、広範囲にわたって物流が混乱しました。関係者の努力などにより、大半の路線は復旧しましたが、現在も一部路線で運休が続いています。

 また、この前に起きた大阪府北部地震では、阪急電鉄や大阪モノレールなどで大きな被害が発生。中でも阪急南茨木駅は、隣接する駅ビルが深刻な被害を受けたため、共用していたエスカレーターなどが現在も使用停止となっています。ほかにも、北海道胆振東部地震では北海道の鉄道路線も大きな被害を受け、また9月の台風21号では、関西空港連絡橋にタンカーが衝突したことで鉄道が2週間にわたって不通となりました。

 一方、9月に日本を襲った3つの台風でクローズアップされたのが、鉄道会社の「計画運休」です。台風による影響が見込まれる線区で、事前に告知して列車の運転を全面的に取りやめるという取り組みで、JR西日本では2014年から実施。これまでは“空振り”も多く、利用者から不満の声も出ていましたが、今回は計画が見事に奏功し、利用者が駅や列車内に閉じ込められるといった事態は防げました。また、企業も計画運休を踏まえた営業体制を取るなど、徐々に浸透しつつあります。

 JR東日本でも9月末に初めて計画運休を実施するなど、今後は全国に広がるでしょう。当たり前のことですが、「台風が近づいたら不要不急の外出を控える」ということを、今一度確認したいものです。

JR三江線の廃止

[写真]廃線となったJR三江線。全長100キロを越えるものの、1日わずか数本が走るローカル線だった
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[写真]廃線となったJR三江線。全長100キロを越えるものの、1日わずか数本が走るローカル線だった
 今年は全国的に、鉄道の廃線はほとんどありませんでした。そんななか、3月31日にはJR三江線が営業を終了。営業キロが100kmを越える大規模な路線がなくなるとあって、全国から鉄道ファンが押し寄せ、別れを惜しみました。1日の列車本数が上下とも10本に満たないローカル線でしたが、JR西日本はこれら鉄道ファンの利便性を考慮して、廃止2週間前に直通列車を増やすという異例の対応を行っています。

黒部トンネルで運行しているトロリーバス廃線

[写真]関西電力黒部トンネルトロリーバス。“鉄道”としては廃止され、2019年春からはバッテリー駆動の電気バスが走る
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[写真]関西電力黒部トンネルトロリーバス。“鉄道”としては廃止され、2019年春からはバッテリー駆動の電気バスが走る
 また、11月末にはちょっと変わった“廃線”がありました。関西電力が黒部トンネルで運行しているトロリーバスがそれ。トロリーバスとは、架線からの電力を受け取って走る電気バスで、法律上は「無軌条電車」と呼ぶように鉄道の一種なのです。

 トンネル内を走ることからこの方式が採用されてきましたが、2019年にバッテリーで走る電気バスへ更新されることになり、鉄道路線としては“廃線”されました。ちなみに、この路線は電力会社が運営する日本唯一の鉄道路線でもありました。今後は、同じく立山黒部アルペンルートを形成する「立山トンネルトロリーバス」が、日本唯一のトロリーバスとして運行を続けます。

「昼間特割きっぷ」や「スルッとKANSAI」の利用終了

[写真]販売が終了された昼間特割きっぷ。割引率の高さが人気だった
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[写真]販売が終了された昼間特割きっぷ。割引率の高さが人気だった
 さて、京阪神に住む人たちにとって地味に“痛い”のが、JR西日本が販売していた「昼間特割きっぷ」の廃止です。国鉄時代に、競合する私鉄との運賃差を埋めるために発売されたもので、例えば大阪~京都間は通常運賃が560円のところ、「昼間特割きっぷ」だと1回あたり350円と格安になることから、多くの人たちが利用していました。

 一方で、金券ショップではこの回数券を1枚単位でバラ売りされているなど、本来の趣旨にそぐわない利用も多く見られました。

 JR西日本では、「昼間特割きっぷ」の廃止に合わせて「ICOCAポイントサービス」をスタート。利用回数に応じてポイントが貯まり、ICOCAのチャージに利用できるというものです。同時に、PiTaPaによるポストペイサービスも開始し、PiTaPa利用者には利用金額からポイント分を割り引く形で同様のサービスが受けられるようになりました。とはいえ、割引の適用条件は「昼間特割きっぷ」より厳しくなっており、利用者からは不満の声も聞かれます。

 さらに、関西私鉄で広く浸透していた「スルッとKANSAI」カードは1月に自動改札機などでの共通利用が終了しました。今後も一部の鉄道会社では使用でき、また使用を終了した鉄道会社では残額があるカードの払い戻しを受け付けています。

 ただし、払い戻しには期限がある(現時点では「2018年1月の使用終了時点から5年程度」とアナウンスされています)ため、早めに対応するのが良いでしょう。この機会に、引き出しの奥にしまい込んだ未使用カードがないか、確認してみては?

次世代新幹線「N700S」や観光列車が次々と登場

[写真]次世代新幹線・N700S。前頭部や帯のデザインが変更された(画像提供:JR東海)
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[写真]次世代新幹線・N700S。前頭部や帯のデザインが変更された(画像提供:JR東海)
 暗い話題だけではありません。車両面では様々な明るい話題が見られました。JR東海では、東海道・山陽新幹線で現在主力として活躍する「N700A」の後継車両「N700S」を開発。その第1編成が6月にお目見えしました。

 「S」は“最高”を意味する「Supreme」の頭文字で、文字通り最高のサービスや安全性能を目指しています。普通車も全座席に電源コンセントが装備されたほか、床下にはバッテリーを搭載することで、停電時などに自力でトンネル内や橋梁上から移動することも可能になりました。

 また、現在の営業車両にもちょっとした変化が。東海道・山陽・九州新幹線では、この秋から無料Wi-Fiサービスが始まりました。現在、サービスを提供する機器の取り付け作業が順次行われており、完了した編成からサービスが提供されています。

 観光列車では、3月に叡山電車でデビューした「ひえい」が大きな話題となりました。楕円をモチーフにしたそのデザインは、これまでの鉄道車両にはない斬新なもの。車内は近未来的な雰囲気でまとめられており、1人当たりの幅が全国でもトップクラスという広さで、ゆったりと乗車することができます。特別料金が不要というのもポイントで、休日には乗車待ちの列ができるほどの人気を誇っています。

 JR西日本も、山陰地方で観光列車「あめつち」の運行を開始しました。沿線の工芸品が飾られた車内は、日本海や宍道湖を眺められる座席配置。地元の食材を使った食事やスイーツを味わいながら、ゆったりとした旅が楽しめます。国宝・松江城や出雲大社など、沿線には見どころも多く、点在する温泉と合わせてふらりと出かけてみるのも良いかもしれません。

大阪市交通局が民営化

[写真]大阪市営地下鉄からOsaka Metroへ、看板の付け替え作業が深夜に行われた
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[写真]大阪市営地下鉄からOsaka Metroへ、看板の付け替え作業が深夜に行われた
 もうひとつ、忘れてはいけないのが大阪市営地下鉄の民営化です。15年以上も前から議論が繰り広げられてきましたが、この4月に大阪市高速電気軌道株式会社、通称「Osaka Metro」が誕生。新たなスタートを切りました。

 この民営化は、これから少子高齢化などで鉄道の利用者が減ってゆくなか、将来も地下鉄事業を安定して運営してゆくための方法として行われました。民営化が完了するまでに、大阪市交通局の内部では組織の変更をはじめ、コストや営業効果といった“民間意識”の強化などが進み、累積赤字を一掃するなど大きな効果を上げています。

 今のところ、大阪市営地下鉄の「マルコマーク」がOsaka Metroの「OMマーク」に変わった程度しか変化は見られませんが、今後は駅ナカ事業の強化や不動産・ホテル事業への進出など、さまざまな取り組みで収益を上げ、それが便利で安全な地下鉄の運行につながってゆくことでしょう。

 大阪の地下鉄は歴史も古く、独特の雰囲気を持つ駅が多く残っています。慣れ親しんだ利用者はもちろん、国内や海外からの観光客に「これが大阪の地下鉄だ」と胸を張れるよう、昔ながらのデザインを生かした駅が増えることを望みます。
[写真]4月1日にはOsaka Metroの発足を祝ってセレモニーが行われた。写真は御堂筋線の一番列車出発式の様子
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[写真]4月1日にはOsaka Metroの発足を祝ってセレモニーが行われた。写真は御堂筋線の一番列車出発式の様子
 地震や大雨。台風で大きな被害を受けた2018年の鉄道。現在も一部の区間や施設が復旧しておらず、災害はまだ終わっていません。また、幸いにして今年は廃線が少なかったものの、JR北海道を筆頭に全国の鉄道経営が苦しいことに変わりはなく、2019年以降は複数路線の廃止が決定しています。

 災害から避けて通れない今の時代、万が一に備えて公共交通を残す意義をもう一度考えるとともに、自分たちが公共交通を積極的に使い、便利なものになるよう声を上げることが必要でしょう。そしてそれ以上に、2019年も楽しい列車がたくさん生まれ、鉄道が人々の笑顔を運ぶ存在であってほしいと願います。
(文/伊原薫/鉄道ライター)

■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。2018年6月には大阪市営地下鉄民営化の経緯を一冊の本にまとめた『大阪メトロ誕生』を出版。

最終更新:12月30日(日)12時36分

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