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米中貿易戦争など数々のイベントリスク 相場の基調を決めたものは何だったのか?

12月1日(土)14時00分配信 THE PAGE

 激動の国際情勢の中で、金融市場を揺るがしかねないイベントリスクとどう付き合っていくか。ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表の田渕直也氏に寄稿してもらいました。
[写真]トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(ロイター/アフロ)
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[写真]トランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(ロイター/アフロ)
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 今年も残すところ1か月を切った。これまで世界の金融市場には、相次ぐ米中の報復関税合戦、イタリアでのポピュリスト政権の誕生、トルコに代表される新興国危機、合意なきブレグジット(イギリスのEU離脱)への懸念など、次々と「イベントリスク」が降りかかってきたが、結果的には主だった株式市場は大きな動きを見せず、もみ合いを続けてきたといえる。結局のところ、相場の基調を決めてきたものは何だったのだろうか。

イベントリスクは今年の相場の基調に影響せず

[表]イベントリスクと日米株価推移
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[表]イベントリスクと日米株価推移
 世界の二大経済大国である米国と中国が互いに関税をかけあい、報復を繰り返す事態はどう見ても異常であり、グローバリゼーションに大きく水を差すことになりかねない危険をはらんでいる。それどころか、安全保障上の問題も絡んで、米中の関係は「新冷戦」の開始が取りざたされるほどの状態になっている。

 ところが、米中攻防の当初こそ、株式市場はショックに見舞われたものの、それも一時的なものにとどまり、関税措置が繰り返されるごとにショックは小さくなっていって、9月の関税第3弾発表後(グラフ上では4つ目の(1))には相場が大きく上昇さえしたのである。

 こうしたことは何を意味しているのだろうか。

 まず、相場の世界ではいつでも様々なリスク要因が存在している。だから投資は危険だ、という印象が生まれるわけだが、そうしたリスク要因はたいていの場合、浮上してはすぐに消えていくのである。ある意味で、こうしたことは、いつも繰り返されていることなのだ。

 実体面に目を向けてみると、とにかく米国経済が絶好調であるということの影響が大きい。日本では今年前半はやや景気の勢いが失速したものの、全般的には良好な状態をキープしている。このようにファンダメンタルズ(経済の基礎的な状態のこと)がいいときには特にそうなのだが、イベントリスクが相場の基調を一変させるようなことは実際にはほとんど起きないのである。

 イベントリスクは、ニュース性があり、エコノミストやアナリストも話題にせざるを得ないので、とかく注目を集めやすい。そのため市場にはリスクが一杯あふれている印象が強まるのである。だが、中長期的な投資を心掛ける投資家にとっては、イベントリスクを過度に懸念するのは不要だといえるのではないか。

 では、今年の相場で大きく株価が値を下げた場面では何が起きていたのだろうか。グラフで網掛けをした二つの時期(1月末から2月にかけて、及び10月)はいずれも米国の長期金利が大きく上昇した時期に重なる。米国景気が好調過ぎることを背景に金利が上昇し、それが株価を下押ししたのである。結局、今年の株式相場の基調は、好調なファンダメンタルズと、それによって引き起こされた米国金利上昇とのせめぎあいでほとんどを説明できるように思われるのである。

イベントリスクを無視できなくなるときとは?

 前節では、イベントリスクを過度に意識しなくていいと述べたが、もちろんそれは、無視して構わないということではない。イベントリスクを無視できなくなる状況の一つは、大きなお金を賭けているときである。

 先ほど漠然と“中長期的な投資”という言葉を使ったが、重要な点として、短期的な相場の上下動に振り回されないためにあまり大きな金額を賭けすぎないことがその前提条件の一つとなる。自分の金融資産のうち大きな部分を投資に回すことは、短期的な相場の上下動に機敏に反応しないと大きな損失を招き得るという意味で、必然的に短期投資にならざるをえないのだ。その場合、イベントリスクにも十分な注意を払っていく必要が生じる。

 イベントリスクを無視できなくなるもう一つの状況は、ファンダメンタルズが悪化するときである。

 例えば、米国経済の過熱懸念が強まり、長期金利が現在の水準からさらに一段上がるとしよう。そうなれば株式市場は調整を余儀なくされ、その何か月後かには実体経済や企業業績にも影が差すことになるだろう。株価が下落傾向をたどっているときに何か予想外のイベントリスクが生じると、相場の大きな下押し要因となり、しかもそのショックは短期的には回復しにくい。

 付け加えると、そうしたイベントリスクは、大方の予想に反したものであればあるほど、インパクトが大きくなる。そして、大抵の場合、悪いときには悪いことが重なりやすい。ファンダメンタルズが悪化すると、想定外のイベントリスクもまた起きやすくなるものなのである。

 端的に言ってしまえば、イベントリスクは株価上昇局面では相場の肥やしにしかならないが、下落相場では株価下落を加速させる要因になるというわけである。

イベントリスクは結局米国の金利動向次第

 米国では2009年初以降の9年以上、日本でも2012年末以降の6年弱にわたって株式相場は基本的に上昇を続けてきた。その長期的トレンドがいつ終わるのか、断定的に述べることは難しいが、先ほども述べたように、米国長期金利の上昇がそのきっかけになる可能性は大いにあると考えられる。

 まだそうなるとは決まったわけではないが、いつかは必ずその時がやってくる。そして、そうなればイベントリスクの影響も否応なく大きくなっていく。長く投資を続けていくうえで、イベントリスクを過度に恐れる必要はないものの、ファンダメンタルズの局面によってその影響度が異なることを知って、上手く付き合っていく必要がある。
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■田渕直也(たぶちなおや) 株式会社ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役。デリバティブのトレーダー、ファンドマネジャー等を経て、コンサルティング会社を設立。『図解でわかるランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて』『確率論的思考』(日本実業出版社)『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』『ファイナンス理論全史』(ダイヤモンド社)『不確実性超入門』(ディスカバー21)など著書多数

最終更新:12月1日(土)18時22分

THE PAGE

 

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