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6件の自殺から学んだ「事故物件化」の防止策

11月14日(水)11時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© beeboys-Fotolia)
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(写真© beeboys-Fotolia)
入居者の自殺はオーナーにとって非常に悩ましい問題だ。人の命に関わるため扱いが難しいうえ、原状回復やその後の家賃設定、次の入居者探しなど、リカバリーには大きなコストと労力を要する。しかも予測することが難しい。

実際に入居者の自殺が起きた場合、どのような対応を迫られることになるのか。不動産業者として1000室以上の物件をオーナーから預かる傍ら、自らも物件を所有するオーナーでもある山田幸雄さん(仮名・48歳)に、これまで体験した事故物件のエピソードを取材した。

■保証人なしの入居者が自殺。原状回復費の請求は?

先日、山田さんが管理するアパートで入居者が首を吊って自殺する事故があった。不動産業を始めて24年、山田さんにとって6件目の自殺事故である。

亡くなったのは30代の契約社員の男性。無断欠勤が続き、不審に思った会社の人間がアパートを訪ねたところ、変わり果てた姿の男性を発見した。この男性、会社では特に変わったところはなく、自殺などしそうな気配はまったく感じられなかったという。

人の命が失われるのは悲しむべきことだ。しかし一方で、管理を請け負う不動産業者として、また1人の大家として、この部屋が「事故物件」となってしまったことへの不安も同時に頭をよぎる。

「発見が早く、冷え込みが厳しい日が続いていたため、部屋のダメージはまったくありませんでした。不謹慎を承知で言いますが、それがせめてもの救いでしたね」(山田さん)

しかしその後、隣室の女性は「気味が悪い」と退去する旨を伝えてきた。部屋にダメージがなくとも、アパート全体の評判が一気に下降し、他の入居者にも影響が及ぶ可能性があるのだ。

山田さんもオーナーも、もちろんこうした事態への備えは考えていた。入居時の契約書には、自殺や孤立死等が起きた場合、部屋の原状復帰費用に加え、事故物件化した後の家賃低下に備えて18カ月分の家賃を保証人が支払う旨を明記していたのである。

ところが、自殺した男性はまったく身寄りがなく、保証人もいなかった。勤め先の会社の寮として契約していたのだ。山田さんは現在、諸費用を会社に請求する準備を進めているが、請求額はおよそ120万円にものぼる。保証人が支払いを渋る可能性も考えられる。

「過去には12カ月分の家賃+12カ月分の家賃の半額を支払った判例があり、私もこれにのっとって18カ月分の家賃支払いを契約書に盛り込んでいたのですが……。交渉には時間がかかるでしょうね。場合によっては裁判ということになるかもしれません」(山田さん)

気の毒なことに、自殺した男性は市の段取りでひっそりと火葬され、遺骨は引き取り手のないまま無縁供養塔に合祀されたそうだ。

【POINT】
・保証人は保証会社を利用しても必ずつける
・自殺や孤独死に備え、補償額を契約書に明記しておく

■事故物件紹介サイトへの掲載を防ぐには?

今から5年前のこと。山田さんの管理する木造アパートで、男性入居者による自殺事故が起こった。物件へのダメージは全くなかったが、事故物件になった以上、家賃を下げてでもなんとか入居者をと考えていた山田さん。しかしそんな矢先、誰がリークしたのか、例の事故物件紹介サイトにアップされてしまったのだ。

人の噂も七十五日ということわざがあるように、こうした事件は時間が風化させてくれることもある。しかし、事故物件紹介サイトにアップされてしまえば多くの人の目に触れることになる。

宅建業法に定められた重要事項の告知義務により、宅建業者は事故物件であることを借り主(買い主)に告知しなければならない。しかし、その告知義務に明確な規定はない。業界内では自主的に5年間、あるいは10年間開示するなど、良心に基づいて告知されているのが実情。また事故後、誰かが一定期間住めば次の告知はいらないという考え方もあり、入居者からはこうしたサイトに一定のニーズがあることも頷ける。

しかし、管理会社やオーナーにとっては致命的だ。

「紹介する物件が事故物件であれば、その事実はお客さまにはきちんとお伝えします。その上で住んでくださる方もいるのですが、ああいう形でインターネットに載ってしまうとイメージが悪いですよね。あのサイトのおかげで、ますます借り手を探すのが難しくなります」(山田さん)

では事故が起きてしまった場合、事故物件紹介サイトへの掲載を避ける手立てはあるのだろうか? ここで別の投資家のエピソードを紹介したい。

藤村大志さん(仮名・63歳)はこれまでに2度、所有する物件で自殺事故に見舞われている。1度目の事故ではその後しばらくして事故物件紹介サイトに物件が掲載されてしまったが、2度目ではある工夫によってサイトへの掲載を回避できたという。ポイントは「次の入居者探しを急がない」ことだ。

「例のサイトを何度も見ているうちに、掲載されている物件のほとんどがポータルサイトで入居者を募集していることに気付いたんです。私も1度目の事故後は、早く次の入居者を見つけたいという焦りから、ポータルサイトへ登録していました。そこで2度目の事故では登録をせずに入居者を募ることにしたんです。もちろん、面談の段階では正直に事故物件であることは伝えました」(藤村さん)

幸運にも、一人目のお客さんが事故物件であることを承知の上で入居してくれたという。市内の総合病院に勤める男性の看護師だった。原状復帰に関しても保証人が責任を果たしてくれ、家賃は従来の2割弱の6万3000円に安くはしたものの、空室期間は3カ月ほどに抑えることができたという。

ポータルサイトに登録しなくても、事故の目撃者のタレコミで紹介サイトに載ってしまうケースも考えられるが、藤村さんの場合、事故当時やじ馬がいなかったことも幸いした。何事かとのぞく近隣の人もいたが、見つけては、どうかこのことは黙っていてほしいと頭を下げ、アパートの住人にも口止めを依頼したという。

今回のケースでは、関係者には正直に情報公開をしつつも、ネットでの広がりを抑える方策に尽力したことが功を奏した。もちろんこれで万全というわけではないが、自殺による「事故物件」のレッテルを張られないためには有効かもしれない。

【POINT】
・事故後の入居者はポータルサイトで募集しない
・事故が起きたら、住人や近所の方に可能な限り口止めをお願いする

■カスタマイズ物件で自殺! 初期費用の回収は?

前出の山田さんに話を戻す。前半で紹介したのは管理業者として山田さんが体験した事故物件のエピソードだったが、山田さんがオーナーとして所有する物件でも過去に自殺事故があった。あらましはこうだ。

ある日、美容院をやりたいという男性が相談に訪れた。店舗兼住宅を探しているという。周辺のお得意様をターゲットに店主の技とおしゃべりをウリにする地域密着型のスタイルだ。大きな収益は期待できなくても、お得意様さえ確保できればそれなりに手堅い商売ともいえる。

店舗づくりには大きな初期費用が必要だが、男性の予算は1000万円ほど。それでは厳しいと、山田さんは自身が所有している土地に美容院兼住宅を建て、男性に貸すことにした。

「仕事に対する思いや将来の展望などから、この人ならやれるのではないかという熱意を感じました。水回りや電気の配線、イスや鏡、シャンプー台などが設置しやすい設計にして、初期費用はなるべく抑えられるようにしました。ただ、この男性のためにつくったわけですから、家賃は相場より2割ほど高めということで納得してもらいました。それでも、空き店舗物件を改装するよりトータルでははるかに割安に設定したんです」

■開業5年目でまさかの……

事業は順調だった。しかし、開業して5年目の冬、男性は住居部分で首を吊って自殺した。

「正直、恩を仇で返されたような後味の悪い結末でした。なにしろ、この男性のためにつくった物件ですから」

事故後、保証人でもあるこの男性の親戚が訪ねてきて、後の手続きや後始末をした。その時、山田さんは保証人から「彼は家賃の高さに悩んでいた。あなたが高額の家賃を請求しなければ、こんなことにはならなかったはずだ」と言われ、さらに落ち込んだという。情に厚い山田さんだが、さすがにここまで言われてはと、契約書通り18カ月分の家賃を請求。

ただし家賃を下げてもやはり事故物件は事故物件。まして自殺した男性向けにカスタマイズした美容院仕様の建物だったためなかなか借り手は付かない。結局、倉庫に改装して貸し出すことにした。しかし噂が広まっていたせいか、いまだ空室のままだ。

【POINT】
・情にほだされては失敗する。あくまでビジネスであることを忘れずに
・転用がききにくいカスタマイズ物件はリスクが大きいと心得る



今回取り上げたいずれの事故でも、入居者に自殺の兆候などは見られなかったと山田さんは言う。自ら命を絶つ入居者を大家さんが見分けることは非常に困難だろう。

「自殺事故が起こるたびに、相談できる誰かいれば思いとどまることもできたんじゃないかと考えてしまうんですよね……」(山田さん)

自殺の名所といわれるようなところには、自殺をする前に電話をという看板が立っている。思いとどまって、命を絶つことを止めたという話も聞く。鬱陶しいかもしれないけれど、単身者用のアパートやマンションのドアの内側に、「24時間対応であなたの悩みを聞きます!」くらいのステッカーでも貼っておこうかな、と語る山田さん。次の事故がないことを祈念しているところだ。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:11月14日(水)11時00分

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株式会社ファーストロジック

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