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東芝は日立のようにV字回復を果たすことができるか

11月5日(月)6時00分配信 ダイヤモンド・オンライン

車谷暢昭代表執行役会長CEOの下で策定した中期経営計画を11月にも公表する Photo:Reuters/AFLO
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車谷暢昭代表執行役会長CEOの下で策定した中期経営計画を11月にも公表する Photo:Reuters/AFLO
 不正会計問題を経て経営再建中の東芝が、11月にも中期経営計画を発表する。果たして東芝は復活することができるのか。やはり電機メーカーで、経営危機から見事V時回復を果たした日立と比較することで、その将来を考えてみたい。(ジャーナリスト 滋賀利雅)

● 車谷会長の下で練った 中期経営計画を間もなく公表

 2008年の金融危機以降、3代の社長が関与したとされる「不正会計問題」に、いまだあえぐ東芝。17年に6000億円の増資を敢行、18年2月に招聘した車谷暢昭代表執行役会長CEOの下で練りに練った中期経営計画を11月にも公表するとしている。

 2015年7月に発表された第三者委員会報告によれば、不正総額は約1552億円。どん底まで失墜した信用と業績をどのように回復させるのか、その中身が注目されているが、再建策については同じ電機メーカーでコングロマリットを形成している日立が1つのサンプルとなる。

 そこで、日立の再建と比較することにより、東芝の再建を占ってみることにする。

 日立は2009年3月期、当期純利益が7873億円の赤字まで落ち込んだものの、その後、(1)コーポレートガバナンスの強化、(2)積極的な子会社の再編による事業改革、そして(3)意欲的な中期経営計画を進めた結果、3年後には3471億円の黒字にまで大きく回復した。この年は、タイで大洪水があっただけに、驚異的ともいえる。
● 社内登用は3人だけ 3人以外は全て入れ替えた日立

 まずは、両社のガバナンス面から比較していくことにしよう。

 2009年3月時点で、日立の取締役は12人中7人が社内取締役が占め、社外取締役のうち3人が現役の事業会社の社長・会長(当時)、外国人取締役はゼロだった。

 子会社から呼び戻される形で社長に就任した川村隆氏(現東京電力ホールディングス取締役会長)は、いくつもの改革を進めると同時にガバナンス体制の再構築にも着手、取締役の構成を大胆に変更した。

 それは、業績が回復した2012年3月時点と比べれば明らかだ。

 川村氏は3年の間に、取締役の総数を12人から10人に減らしたのに加え、社内からの登用をわずか3人とした。しかも、3年前からの留任組は、川村氏と太田芳枝・元石川県副知事、大橋光夫・昭和電工社長の3人のみで、ほかは全て入れ替えたのだ。

 これに対し東芝は、不正会計が発覚した2015年3月時点で、取締役10人中4人が社内取締役である一方、過半数を達する6人が社外取締役となっており、一定の体裁は保っていた。しかし、日立同様、海外の売り上げが大きな部分を占めていたにもかかわらず、外国人取締役はゼロだった。
● 問題顕在化後も全員留任だった東芝 車谷会長就任でも目新しさに欠ける

 しかしその後、米ウェスティングハウス問題が顕在化したにもかかわらず、2017年3月時点での取締役は、原子力部門を統括し会長を務めていた志賀重範氏が退任して1人減っただけ。その他は全員留任し、外国人取締役もゼロと、何も変わらなかったのである。

 そして、今年2月に三井住友フィナンシャルグループ副社長を経て、シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパンの会長を務めていた車谷暢昭氏が社長に就任してからの取締役構成も、社内昇格組2人を始めとする4人が新たに加わっただけで、目新しさに欠けている。

 日立の改革を率いた川村氏は、会長を退任した2014年、日本ベル投資研究所のインタビューに対し、「会社の経営に関しては社内の人間が一番把握していると信じていたが、経営改革を実行してみると、それはかつて機関投資家に言われたことばかりであった」と明かしている。その上で、「機関投資家のマクロ観は意外に正しいので、それを尊重すべきだ」としている。
● 川村氏がガバナンス面で重視した 機関投資家のマクロ観

 川村氏が尊重した「機関投資家のマクロ観」は、着実に人事に反映されている。

 社外から、元ソニーフィナンシャルホールディングス会長の井原勝美氏を始め、米軽金属大手アルキャン社のCEOを経て、アングロ・アメリカン社のCEOを務めていたシンシア・キャロル氏、ゼネラル・エレクトリック社や3Mなどを経て、ダウ・ケミカル社のバイスチェアマン兼CCOを務めていたジョー・ハーラン氏、そしてモルガンスタンレー証券東京支店マネージングディレクター兼副会長や、UBS証券会社マネージングディレクター兼副会長などを歴任した山本高稔氏など、海外企業で豊富な経験を積んだ人材や、金融のプロをそろえている点に1つの業績改善のカギがあるともいえる。 

 東芝株を保有するある海外ファンドの幹部は、「グローバルで戦う企業なら、グローバルな知見を有し、海外ビジネスに精通する外国人を取締役会メンバーに招聘すべきだ」と語る。現在の東芝には、グローバルに活躍する人材はゼロだ。さらに、現在の東芝の取締役には社長の車谷氏が金融出身者である以外、金融のプロも見当たらない。

 日立の川村氏は、海外から社外取締役を招聘した理由について、「日本は島国だから、つい日本における評価でもって安心してしまうのが問題だ」と語っている。

 日本取締役協会が8月に公表した最新の「上場企業のコーポレートガバナンス調査」によれば、外国人株主比率が30%以上の企業は2013年に10%を超え、2018年には15.6%まで上昇している。さらに、3人以上の社外取締役を選任している企業は、東証1部上場企業の半分に近づいてきたと評価している。

 だが、いわゆる“仏作って魂入れず”のような、形式論に陥ってはいないだろうか。

 コーポレートガバナンス改革が進むにつれ、今後の課題として、「形式から実質への深化が重要」が挙げられている。「進む」ではなく「深み」を追求すべきだとの流れに変わってきている。
 そうした時代に社外取締役を増やすだけでは意味がない。経験と知見を持った外国人や各分野のプロを引っ張ってこなければ意味がないのだ。

● 選択と集中を徹底させた日立 弥縫策に終始する東芝

 東芝と日立の違いは、ガバナンス改革だけではない。その1つが、膨大な数を抱えている子会社や関連会社の整理だ。

 日立は、社会インフラ関連企業を本体に取り込む、あるいはかなり近い位置に置く一方で、それ以外の企業は逆に遠ざけたり、売却したりする“選択と集中”戦略で業績を大きく回復させた。

 例えば、日立プラントテクノロジー、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンシジニアリング、日立システムアンドサービスといった企業は完全子会社化。一方で、日立国際や日立工機などは売却している。

 こうした子会社や関連会社の再編は、業績を回復させた今でも続いている。足元では、昨年、無線・半導体製造装置メーカーの日立国際電機を売却したほか、テレビの国内販売からも撤退、車載オーディオのクラリオンについても全株をフランスの自動車部品メーカーに売却する方針を明らかにしている。

 これに対し東芝は、稼ぎ頭だった東芝メモリの売却で大きな議論を呼んだが、その他にも産業用コンピュータの東芝プラットフォームソリューションや、医療機器リースなどの東芝医用ファイナンス、東芝メディカルなどを売却した。

 確かに、こうした企業の売却によって、まとまった規模の売却益は得ている。また、2018年3月期の有価証券報告書によれば、東芝の子会社数は389社で、1年前の446社から考えると一定の整理感はある。
 また、足元では原発子会社の清算や、液化天然ガス(LNG)事業の売却なども取り沙汰されている。だが、これらはあくまで窮地をしのぐための“弥縫策”の意味合いが強く、日立が進めたような戦略的な選択と集中戦略とは似て非なるものだといえる。

● 明確なビジョンと数値目標を掲げ 冷徹と批判されても実行した日立

 川村氏が主導したV字回復が一段落した2013年5月、日立は中期経営計画を打ち出した。それには、具体的なビジョンと数値目標が明示されていた。

 まずビジョンについては、「イノベーション」「グローバル」と「トランスフォーメーション」の3つのキーワードを掲げた。川村氏は、これまでのしがらみや、こだわり、あるいは不要なプライドを捨て、世界スタンダードに近づき、いかに健全な財務体質を築き直すかに重点を置いたわけだ。

 その結果の数値目標として、売上高10兆円、営業利益率7%超、株主に帰属する純利益(株主帰属利益)3500億円という明確な目標を掲げた。
 
この計画に基づいて川村氏が中西宏明社長と二人三脚で進めた改革は、メーカーとしてのこだわりを捨て、「社会インフラに徹する」との強い信念から、たとえ黒字事業でも売却するなど事業統廃合と整理を徹底させた。合理的な選択を最優先する姿勢には、社内外から冷徹と批判されることもあったが、結果が全てを物語っているといえる。

 一時は、売上高で2兆円を突破していた名門企業の東芝。2014年以降は、5000億程度でおおむね横ばいで推移していたものの、2018年3月期には4000億円を割り込んだ。子会社や関連会社などの売却益によって、株主帰属利益こそ800億円に回復したものの、営業利益率は1.6%と前期から悪化している。

 今年2月に開かれた決算会見で平田政善代表執行役専務CFOは、構造改革に加えて、テレビ・パソコン事業の改善などで来年度には1000億円程度の営業黒字になるとの見通しを示したが、「1000億程度では株主が納得するような投資リターンにはならない」との厳しい認識を示している。

 このように見ていくと、東芝が本格的な復活を果たすまでにはまだ長い道のりが待っていると言わざるを得ない。まずは外国人や金融知識の豊富な人材活用などを中心としたガバナンスを深化させるとともに、実効性が期待できる中期経営計画が求められている。
滋賀利雅

最終更新:11月5日(月)13時50分

ダイヤモンド・オンライン

 

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