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CEOの選任をどう考えるか~ソーシャルキャピタルを超えて(日本ベル投資研究所)

10月22日(月)9時47分配信 アイフィス株予報

・9月に、日本証券アナリスト協会と日本ファイナンス学会の共同セミナーが催された。その中で、一橋大学の鈴木健嗣(かつし)准教授の講演が興味深かった。テーマは「ソーシャルキャピタルとCEOの選任、コーポレートガバナンス」であった。そこで鈴木先生の学術研究の内容を紹介し、その後筆者の実感を述べてみたい。

・鈴木先生は、CEOの特徴が企業価値に及ぼす影響について研究している。その中で、ソーシャルキャピタルからみた経営者の選任が、1)経営戦略の変更、2)企業パフォーマンスにどのような影響を与えているかを実証分析した。

・CEOの特徴については、性格(自信過剰、楽観度、リスク回避度)や、年齢、性差、教育水準、経験、知識、さらに経営の執行能力やコミュニケーション能力などの観点から研究した論文が海外に多数ある。その中で、鈴木先生は、ソーシャルキャピタルに注目した。

・ソーシャルキャピタルとは、ソーシャルネットワーク(社会的な結びつき)に内在する相互関係の情報、信頼、規範と定義される。これまでの研究では、学歴、出身地、前職、趣味、その他の活動などとひも付いた関係(ソーシャルタイ)が分析されてきた。

・ソーシャルタイ(社会的な何らかの結びつき)があると、1)より多くの情報を獲得し、2)相手に対する受容性が高まるという研究がある。つまり、情報生産や信頼向上の効果がある。また、そこでは似ている人を好む傾向もあるという。

・取締役会においては、ソーシャルタイが強いと、①アドバイス機能が増加する一方で、②モニタリング機能が低下するという論文も出されている。そこで鈴木先生は、日本企業において、ソーシャルタイがCEOの選任にどのような影響を及ぼしているか、について分析した。

・ソーシャルタイの変数として、①スクールタイ(同じ有力大学出身)、②リージョナルタイ(同じ県の出身)、③ワークタイ(同じ職場や部署での前職あり)を用いた。そこでは、ソーシャルタイのある候補者が新CEOに選ばれがちである、という結果が出ている。

・次に、ソーシャルタイのある候補者が新CEOに選ばれた場合、1)その後の戦略変更はどうなるのか、2)企業のパフォーマンスはどうなるか、について分析した。いくつかの方法を用いたが、いずれも前CEOとソーシャルタイの関係のある新CEOの方が、戦略変更が行われにくいという結果となった。また、CEO交代後の企業パフォーマンスは、ソーシャルタイの付いている新CEOの方が、付いていないCEOよりもパフォーマンスが悪いという結果となった。これは、能力以外の評価で選ばれた可能性を示唆する、と鈴木先生は指摘する。

・同じ大学、同じ故郷、同じ部署で過ごしたことで、コミュニケーションがよくなり、相手の行動に対する不確実さが減り、人物や人格を認めやすくなる傾向は十分ありうる。前CEOは、自分がとった路線を壊されたくないので、戦略を変更しない人を後任に選びたくなる。選ばれたCEOもその路線を踏襲することで信頼を得ようとする。

・結果として、CEOとしての本来の能力以外のソーシャルタイを考慮して後継者を選ぶことになる。よって、その後のパフォーマンスは十分でないことになる。依怙贔屓(えこひいき)によるモラルハザードが起きているのかもしれないと、鈴木先生は示唆する。

・では、どうすればよいのか。今回のコーポレートガバナンスコードの改訂は、そこを問うている。1)わが社の今後の経営にふさわしいCEOの能力とは何か、2)それをどのように育成するのか、3)CEOの選任や解任の手続きをいかに客観性があり、適時性があり、透明性があるように定めるかが問われている。

・多くの場合、社長は後継者を自分1人でじっと見定め、自ら密かに指名したい。これが、これまでの通例であった。後継者も選ばれたときに、建前として青天の霹靂をという表現を用いることが好まれた。

・しかし、時代は変わりつつある。中長期の経営を担う優れた能力を有するベストのCEOを選ぶことが求められる。候補者は、暗黙ではなく、一定の俎上にのせて能力をみていく。社外取締役の責任も重くなる。形式だけでなく実質が問われる。

・投資家としては、どうしてほしいか。筆者の実感としては、5つの点を強調したい。1つは、社内の取締役や執行役員から選ぶ場合は、経営能力がはっきりと分かるポジションを経験させた上で、その実績を3~5年はじっくりみせてほしい。現CEOの次の候補者は、IRの場にも出てくることが望ましい。

・2つ目は、社外からいきなりトップを呼んでくる場合は、今後の経営環境の認識と外部CEO候補者の資質や実績について具体的に説明すべきである。こういう能力が必要であるが、社内と同時に、社外からの招聘もありうると早目に語ってほしいのである。

・3つ目は、指名諮問委員会などで、次のCEO候補について、どのような議論をしているかを説明してほしい。具体的な話はできないとしても、後継者の選び方、現CEOの任期、候補者に期待する資質について考え方を明らかにすべきである。

・4つ目は、オーナー型企業の場合、創業者が健在の時は鶴の一声になりやすい。創業者は何でも自分で決めてきたので、次期後継者についてどんなに優秀でも不満をもつことが多い。まして、自分の路線を変更するかもしれない人材は許容できない。

・創業者はいつまでも創業者であるが、どこで一線を退くのかをはっきりさせてほしい。2代目以降のCEOがファミリーである場合は、本人の能力とともに、そのCEOを支える有能な番頭格を選任することが不可欠である。ここを明確にしてほしい。

・5つ目は、親子上場やグループ企業の上場である場合、トップが天下りでくることも多い。その場合は、いきなりトップ就任はやめてほしい。一定の経営能力をベースに選ばれるべきなので、当該会社の役員に就いて、まずは実績をみせてほしい。そうすれば、投資家もその手腕の一端を理解することができよう。

・大事なことは、CEOの選任や解任にサプライズを起こさないことである。これは前任者の路線を継承せよという意味ではない。新しいビジネスモデル(価値創造の仕組み)作りのために、古い仕組みは壊してよい。

・新しい仕組みと、それを作っていく戦略に説得力が伴っているかがカギである。CEOも社外取締役も居心地のよい個人的なソーシャルタイの重視ではなく、たとえ解任されても納得できる覚悟と力量をもって、取締役会の実効性を高めてほしいと願う。
日本ベル投資研究所

最終更新:10月22日(月)9時47分

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