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「3カ月ごとに9連休」が取れる会計事務所はなぜできたのか?

10月11日(木)21時00分配信 LIMO

写真:LIMO [リーモ]
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写真:LIMO [リーモ]
働き方改革というと何かと話題にのぼる「長時間労働の禁止」。政府内でも議論が盛んにおこなわれています。しかし、単純に時間を一律で制限し、残業が減った分の給与を減らしてしまうと、「働く楽しみ」や、働いた対価をもらうという「やりがい」を見失うきっかけになりかねないという不満の声も出ています。

これは一例ですが、働き方改革の推進は、場合によっては社員の意欲を下げてしまうこともあり、ひいては生産性・業績の悪化につながる可能性があります。では、どうすればいいのでしょうか? 

ここでは『日本一働きやすい会計事務所』の著者であり、自身も会計事務所の代表をつとめる芦田敏之さんに、働く人それぞれが満足して働くことができるような働き方改革を進めていくための3つのポイントについて聞きました。

やる気を引き上げるために重視するもの

社員の仕事に対するやる気を保ち、引き上げるために芦田さんが重視しているのが、「働く人の幸せ」がどんなもので、どういうところにあるのかという具体的な点です。

芦田さんが代表を務める「ネイチャー国際資産税(以下、ネイチャー)」では、

(1)福利厚生
(2)業務内容
(3)報酬制度

の3つを柱に、「働く人の幸せ」につながるように働き方改革を進めているそうです。

「会社のカラー」に合わせた福利厚生

まず1つ目の柱の「福利厚生」についてです。社員が業務に集中して楽しく働くのに欠かせないのが職場の環境。そのためには、福利厚生の整備が重要ですが、ここでポイントになるのは、それぞれの会社に合わせた福利厚生を取り入れることです。

たとえば芦田さんの事務所では、億単位の資産を持つクライアントと仕事をする機会が多いため、身だしなみに気を遣うよう徹底されています。しかし、新入社員などが高級なスーツを買うのは収入的にもなかなか難しいことでもあります。

そこで芦田さんが導入したのが、「オーダースーツ購入制度」。オーダースーツを購入した際、費用の半分を会社が負担するというものです。個人でオーダースーツを買いなさい、と言われたら全員が実行するのは難しいかもしれませんが、制度として導入することで買いやすくなります。この制度は、クライアントが富裕層である事務所だからこそ生まれた制度です。

また社内では、お客さま対応がないときは、楽な靴を履いて仕事をしてオーケーにしていますし、イヤホンをして、好きな音楽を聴きながら仕事をしてもいいことにしているそうです。音楽を聴くことについては、芦田さんはこんな見方を持っています。「イヤホンをして仕事をすると、効率が落ちるのはわかっていますが、とはいえ2割も3割も落ちるわけではなく、せいぜい5%程度です。このくらいなら、むしろその人が楽しく仕事をできるほうが大事です」。

福利厚生の整備には教科書もゴールもありません。あなたの会社でも、会社の特徴や業務の特性、イメージ、客層や仕事で重視する部分、取引先で優待が受けられるサービスなど、さまざまな要素から、「自社に合った福利厚生」を自分たちで築き上げることが重要です。「失敗を恐れず、良いと思った福利厚生は導入してみて、合わなければ廃止する。そんなトライ&エラーを繰り返し、働きやすい環境をつくるのが大切だ」と芦田さんは語ります。

「やりたい仕事」をできる限り認める柔軟性

次に、2つ目の「業務内容」について。人生の大半を捧げる仕事には、「楽しさ」や「やりがい」を感じていなければ情熱を持って働くことはできません。

自分のやりたい仕事をやるために、異動を希望する人もいます。ですが、一般企業だと「この部署に君がいたほうが利益につながる」「あなたがいないと、ここの仕事が回らないから……」と、企業側の都合で異動希望がなかなか通らないこともあります。しかし、ネイチャーでは、本人の希望をできる限り尊重しているとのこと。それは、「働く人の『楽しさ』を重視しているから」だと芦田さんは言います。

やりたいことや好きなことへのチャレンジは、その人の仕事の質や効率にもつながります。異動の希望理由が曖昧であれば許可する必要はありませんが、その人のキャリア形成にとってプラスになる異動であれば、認めるのもひとつの手です。

「自分がいなくても回る」チームをつくる

「異動を認めてエース級の人材が抜けたら、チームが回らなくなるのでは?」という疑問もあるでしょう。同事務所では、それを防ぐためにも「チーム力」をつける働き方をしています。

たとえば、仕事をするときは、クライアント1社に必ず2人の担当をつけるようにしています。これは、仕事上で2人で協力する体制をつくるとともに、「自分がいないと対応できない」「この人が抜けるとクライアントとの関係をまたつくり直さないといけない」といった状態にならないようにするのが目的です。属人的な組織にせず、チームで情報やノウハウを共有することで、エースが抜けても自然と新たなエースが生まれるサイクルをつくることにもなります。

いい意味で「自分がいなくても回る」チームをつくることで、異動しやすくなりますし、休日も取りやすくなります。ネイチャーでは、3カ月ごとに9連休を取ることができる制度がありますが、それもチーム力の高さの賜物です。

売上が伸びても給料が上がらなければ意欲は下がるだけ

芦田さんの著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
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最後に3つ目の「報酬制度」について。アベノミクス以降、企業の売上は伸びていますが、「給料が上がらないので景気が良くなっている印象がない」という声が多いのも事実です。アップした売上が内部留保や株主の配当に回り、社員に還元されていないからです。

天災や世界的大不況など、外部の要因で会社の業績が急激に悪化する可能性もあるので、内部留保の確保は必要です。しかし、企業としての売上は伸びても社員たちの給料が上がらなければ、むしろ社員の意欲は下がるばかり。

最初にも述べた通り、働き方改革では、給与の話が置き去りにされていることに不満を持つ人が多いのが現状です。「必要な分の内部留保を確保できたら、適宜社員に還元して、また働く意欲を持ってもらう。そういうスタイルこそが『働く人の幸せ』を考えた改革なのではないでしょうか」と芦田さんは語ります。

また、報酬を決めるための人事評価もさまざまな工夫をしています。たとえば業績評価については、同事務所では、単に売上ではなく、売上を「獲得」「受注」「加工」の3つのパートに分けた上で見ます。新規のクライアントを紹介されると「獲得」、提案資料をつくってプレゼンし、案件を引き受けることができたら「受注」、業務上でベース資料以外の資料を集めたり各種の申告書を作成したりすれば「加工」として評価されます。これは、特に大型案件など、売上が立つまで長期スパンが必要な場合に、受注するまで「売上ゼロ」という評価にならないようにするなど、社員の仕事を適宜かつより細かく評価できるようにするためです。

どうすれば「いまより働きやすい会社」になるか

働き方改革にとって重要なのは、社員の幸せを第一に考えること。「仕事をしやすい環境」「きちんとした理由があれば、自分のやりたい環境に異動できる」「生産性が高ければ、高い給料がもらえる」など、1日の長い時間を過ごす職場のしくみ一つひとつが、自分のやる気につながる要素ばかりなら、自ずと生産性も高まります。

来年施行の働き方改革関連法案。いま一度、どうすれば「いまより働きやすい会社」になるのか、考えてみるのはいかがでしょう。

■ 芦田敏之(あしだ・としゆき)
税理士法人ネイチャー国際資産税 代表税理士。1978年、神奈川県横浜市生まれ。大手税理士法人に勤務後、2012年に税理士法人ネイチャー国際資産税を設立。近年は、働きやすい職場環境づくりへの取り組みが各メディアに取り上げられるようになり、新聞、経済紙などへの誌面掲載の他、web媒体への取材協力やテレビ番組出演など、税務業界以外からも注目を集めている。

芦田氏の著書:
『日本一働きやすい会計事務所』
クロスメディア・パブリッシング

最終更新:10月11日(木)21時00分

LIMO

 

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