ここから本文です

フェスも続々開催、「パンブーム」の新潮流

9月24日(月)6時00分配信 東洋経済オンライン

横浜で年2回開催される「パンのフェス」は日本で一番パンが売れるイベントだ(記者撮影)
拡大写真
横浜で年2回開催される「パンのフェス」は日本で一番パンが売れるイベントだ(記者撮影)
 「日本で一番パンが売れる3日間」が幕を閉じた。9月15日から17日まで、横浜赤レンガ倉庫のイベント広場で開催された「パンのフェス」だ。

開催初日の15日、朝から場内はパン好きの参加者でごった返した。横浜という場所柄、周辺でのショッピングついでに立ち寄った女性グループや家族、デートで訪れたカップルが多く訪れた。

 この日は雨が降るなど、天気は終始さえなかったが、3万人が来場。3日間の累計来場者数は13万1000人。60のブースで販売されたパンの数は約1100種類、20万個を超えた。
■10万人を動員するパンフェスの凄み

 「パンのフェス」を主催するのはチケット販売大手のぴあと、パンに関する知識検定「パンシェルジュ検定」を運営する出版取次の日本出版販売。ぴあの幅野裕貴・パンのフェス実行委員は、「1日当たりのパン販売個数では間違いなく日本最大のイベント」と豪語する。

 横浜パンのフェスは、開催場所の良さに加え、「人気のパン屋であれば、全国どこのパン屋でも口説いて出店してもらっている」(幅野氏)ことも特長。普段は食べ比べられないパンが一堂に会するとあって、パン好きの心をくすぐるのだ。
 赤レンガ倉庫のイベント広場では、同じイベントの開催は原則として年1回と決められている。にもかかわらず、パンのフェスは毎回10万人を軽く超える集客力の高さから、特別に年2回の開催を許可されているという。

 近年は各地で肉フェスやラーメンフェスが続々と開催されて話題になるなど、「食のフェス」がブームだ。その中でも、パンは種類が豊富で、値段も1つ数百円と比較的安いため多くのパンが楽しめ、フェス向きの食べ物だと言える。
 パン食文化の着実な広がりも、追い風となっている。総務省の家計調査によれば、2010年に世帯当たりの年間のパンの購入金額は2万3773円とコメの購入金額を抜いた。2017年までにコメの購入金額が2割近く落ち込んだのに対し、パンは同4%増えている。

 パンイベントの集客力を、地域振興に活用しようとする動きも活発化している。横浜「パンのフェス」開催以前から、地域密着型のイベントが次々に開催されてきた。2011年の「世田谷パン祭り」(世田谷区)や2013年の「青山パン祭り」(渋谷区)の開催に始まり、神戸市や福岡市など全国で開催されるようになった。地元の商店会などが地域のパン屋を集めて主催している場合が多い。
■売れ筋はシンプルなパンに

 百貨店の催事場でも、パンのイベントが開催されることが増えた。2017年には三越伊勢丹が、伊勢丹新宿店で「ISEPAN!」(イセパン)を開催。松阪屋や阪神百貨店など、ほかの百貨店も開催するようになった。

 相次ぐイベントでパン人気が再認識される傍ら、パン屋や、売れるパンのトレンドにも変化が現れている。

 パン屋向け情報雑誌「ベーカリーパートナー」を発行するグローアップ社・メディア部課長の小林博樹氏は「最近の特徴は、砂糖やバターなどが比較的少ない食パンのようなシンプルなパンの専門店化。以前から多少はあったが、この2~3年で急に店舗が増えてきた」と話す。
 こうした動きが広まる背景のひとつには、パン屋の人手不足がある。街のパン屋のほとんどは家族経営とされる。売り上げを確保しようと営業時間を長くするため、生地の仕込みの仕事を朝の2~3時から始めることも多く、重労働で人が集まりづらい。

 そのため、パンの種類が少なく簡素であるほど一度に大量に作ることができ、新しくパン作りを始めた人でも製造工程を覚えやすいのだ。

 作りが簡単でリピートにもつながりやすい食パンに特化するパン屋も多い一方で、40代以上には学教給食としておなじみだったコッペパンも人気が再燃、専門店が急増しているという。
 中でも、「吉田パン」(葛飾区亀有)が、自他ともに認める「コッペパンブームの火付け役」だ。

 吉田パンでは、客が注文した具材をガラスカウンター越しにその場でコッペパンにはさんで販売するのが特長。具材は30種類以上をそろえる。

 「どうしても1つ販売するのに時間はかかってしまうが、手作り感やライブ感が受けている」(吉田パンの吉田知史オーナー)。

 開店前から長蛇の列ができることも多く、コッペパンだけで1日2000個以上が売れる。
■塩パンが業界で大ブレイク

 こうした、昔ながらの定番パンが専門店化で見直されているのに加え、ブームが定着して見事定番パンの仲間入りを果たしたものが、塩パンだ。

 パン業界ではブームの波が激しく、各地でさまざまな種類が開発されてはブームになるが下火になるのも早い。その中にあって、「フランスパンを売っているパン屋の数よりも、塩パンを置いている店の方が多くなったのではないか」(ベーカリーパートナー誌の小林氏)。製パンメーカー最大手の山崎製パンも、塩パンの派生品を多数投入して力を入れる。
 さっぱりした塩味が消費者に人気なのはもちろんのこと、食パンと共通の生地で作れるなど、パン屋にとっても作りやすい商品だったことがブームの定着につながったようだ。

 時代背景によって移りゆくパンのトレンド。これからも独特なパンがブームとして生まれては消え、おなじみのパンとしてパン屋の店頭で定着していくのかもしれない。
石阪 友貴 :東洋経済 記者

最終更新:9月24日(月)14時48分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン