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「子どもの才能」を引き出す環境作りの極意

9月23日(日)15時00分配信 東洋経済オンライン

子どもの才能を伸ばすには、こまめに褒めて自己肯定感を育成することが大切だという(写真:YUJI / PIXTA)
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子どもの才能を伸ばすには、こまめに褒めて自己肯定感を育成することが大切だという(写真:YUJI / PIXTA)
小児科医36年の経験に基づく「ありのままを見守る」子育て論『小児科医のぼくが伝えたい最高の子育て』。筆者の慶応義塾大学医学部小児科の高橋孝雄主任教授に聞いた。

 ──子育てには悩みがつきものです。

 持って生まれた才能は、いつか必ず花開く。どの子どもも、親から受け継いだすばらしい素質を持っている。親がすべきは、その才能が花開くのを温かく見守ることだけ。子どもの個性は顔立ちと同じ。親から受け継いでいる。
 ──親から受け継ぐのですね。

 お酒に強い弱いは、親の体質がそのまま伝わる。親の特性は運動が苦手、体育嫌いといったところにも出る。「トンビがタカを産む」ことは遺伝的にありえない。タカを産んだらトンビではない。トンビとタカを比べてどっちが偉いかも考えられない。

■男の子「ママ似」、女の子「パパ似」は根拠なし

 ──「言い伝え」には男女の特性に基づくものもあります。

 男の子はママ似、女の子はパパ似とよくいわれるが、医学的な根拠はない。背の高さは親に似る。日本人の男子の場合、父親の身長プラス母親の身長に13センチメートルを足して2で割った数字が背の高さの目安。女子は同じく両親の身長の和から、13センチメートルをこの場合は引いて2で割った数字が背の高さの目安になる。それぞれプラスマイナス8~9センチメートルのゆとりがある。
 ──幼児の診療に白衣は着ない? 

 子どもが怖がるからだ。幼児を泣かせない方法がある。いきなり目を合わせないことだ。まず鼻の辺りを見る。そしてだんだん目を見るようにする。月齢6カ月未満は人見知りをしないので、何をしても大丈夫だ。

 ──小児科では年齢によってかかる病気があるそうですね。

 同じ症状でも月齢、年齢によって鑑別すべき、つまり考えるべき病気がある。最たるものは生後1カ月以内に熱を出したときで、髄膜炎や敗血症といった重い病気を考える。本来は母親の免疫が残っていて熱を出さない。生後3カ月の子が熱性けいれんを起こしたらおかしいと思ったほうがいい。半年過ぎて、保育園などに預けたら大方がいきなり熱を出す。その月齢ぐらいから安心できる発熱が増えてくる。普通、小児科医として3~5年やってくれば身に付く。
 ──親の個性、能力も受け継ぐ? 

 両親から受け継いだ遺伝子によって約束され守られている。大事なのは意思決定力、共感力、自己肯定感を身に付けること。意思決定の始まりは2歳ぐらいからで、しぐさのどんなことでも尊重することだ。他人と比べず、こまめに褒めるのがいい。親の育児不安やストレスは、子の自己肯定感を下げる原因になる。「早くしなさい」と言いすぎると、子どもから考える力を奪う。未来を信じて成長を見守ることが大事だ。
■子どもたちの代弁者が小児科医の大事な役割

 ──小児科医は代弁者なのですね。

 この本自体、子どもやお母さんが本来言いたいことを代弁したものだ。小児科医のいちばん大事な役割は子どもたちの代弁者だと、(日本小児科)学会のホームページにも書いてある。これは米国でもそう。「アドヴォケートであれ」と。

 子どもは、何が言いたいのか、なぜつらいのか、本人はわからない。でも、伝えたいという思いはある。怖いとか、苦しいとか。その思いをくみ取る。わかりやすい言葉に翻訳して「そうだよね」と共感する。それが代弁者としての小児科医だ。
 ──母親との接し方が難しいとか。

 子どもを治そうと思ったら、まずお母さんを治せと、小児科の講義の最初に教えられるが、僕はお母さんをうるさい存在と思わない。熱を出して不安なときに、その本当のところは何か、子どもとお母さんがいちばん訴えたいことは何か、その思いを抽出する。

 ──ワザがないと小児科学の臨床はできない? 

 医者には大変で難しい仕事がたくさんあるが、代弁者だという分野は少ない。小児科では子どももお母さんも何と表現したらいいかわからないことが結構ある。
 時々はファミリードクター的なところもある。子どもは家族の中心。代弁者としてみんなの聞き役に回って、思いをくみ取り、問題点を修正し、調停していく仕事に自然になっていく。

 ──子どもの成長には遺伝子に加え環境の力もかかわります。

 むしろ遺伝子で書かれた人生のシナリオは堅牢で、基本的に変わらないといっていい。

 ──余白や揺らぎもあるとか。

 遺伝子の力と環境の力の相互作用は確かにすごい。遺伝子にはスイッチのオンとオフがあって、環境に合わせる。朝飲むのと夜飲むのとでは薬の効きが違うこともある。薬を代謝する酵素の遺伝子が弱かったり強かったりするのだ。
 遺伝子は一生の間に老化するばかりでなく、年取ってからオンになるものもある。子どもの頃にすべてオンになる傾向があるが、必要ないものはだんだんオフにされていく。脳での動きが端的な例だ。遺伝子は柔軟性がないわけではないが、そのパターンは決まっている。遺伝子は「守る力」だから、億年の単位でしっかりしていなければ人間はここまで進化しなかったはず。よかったことを守り通すから進化する。

■環境の力と遺伝子の力とのハーモニーが大切
 ──一卵性双生児でも違う特質の人たちがいますね。

 環境の力だ。太ったりやせたり、好きなことが違ったりもする。環境でいちばん強い力は努力する力だ。教育環境は猛烈に強い力を持っている。だが、環境力が遺伝子の力を無視できるかというとそうではない。たとえば得意科目は決まっていて男子は理系、女子は文系を好む。向き不向きがあって、遺伝子に決められた個性を順風に乗せていくのが教育という環境だ。環境の力と遺伝子の力がうまくハーモニーを奏でると社会は強くなる。
 ──ハーモニーを奏でる? 

 遺伝子を「正しく恐れなければいけない」。2万2000個ある遺伝子はピカピカで傷ひとつ付けてはいけないと思う人がいる。この遺伝子に異変があると言われたら、ただ恐れるのではなく、理解に努めようとすることだ。

 本来、遺伝子は皆バリエーションがあって、おまけにオンになったりオフになったり、融通の利くものだ。その時々に合わせて遺伝子が音楽を奏でるように風に乗って動くイメージでとらえたらいい。育児は遺伝子を信じて任せる。その中で、環境における正しい風を吹かせることだ。
塚田 紀史 :東洋経済 記者

最終更新:9月23日(日)15時00分

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