■米ドル安、円安のトレンド継続、日本株高も一段と強まる
米ドル安・円安のトレンドは続いている。また米株高に追随する形の日本株高も一段と強まり、総じてリスクオンの環境にあることが示唆されている。リスクオンの環境にあることは重要だ。というのも、本コラムが繰り返し指摘してきたスタンス、すなわち日本株買い・円売りの戦略は、リスクオンの環境に依存しているからだ。が、こうした見方についてはこれまで懐疑的な意見が多かったし、現在でも半信半疑の方が多いのではないかと思われる。
それにはいろいろな理由があるが、一番よく語られているのは米中対立や米中貿易戦争のリスクであろう。確かに、米中貿易戦争は緩和するどころか、一段と激化している。
しかし、皮肉にもトランプ米大統領が2000億ドルの追加課税を表明した途端(18日)、本家の上海株さえ反発し、日経平均は大きく上昇してきた。
■市場の解釈はいろいろ出ているが、要は株価次第
問題はその事後説明、また解釈が役に立つかどうかであるが、その前提条件である解釈自体が正しいかどうかについて、実はよくわからない場合も多い。
たとえば、9月18日(火)の上海株の反転について、よく聞かれた解釈は「米中貿易摩擦懸念が重石となったものの、景気刺激策への期待から中国中鉄や中国交通建設などインフラ関連が大幅高…」というようなものだった。
また、日本株の上昇については「米の対中追加関税発動が経済に配慮した点を好感した」と説明され、同日の米国株の反発は「米中が相互に追加関税発動を発表する中、材料出尽くしとの解釈から幅広いセクターが買戻された」と理由づけられた。
こういった説明や解釈自体、正しいかどうかはもはや問題ではない。強調したいのは、これらはすべては後解釈であるということ。要は株価次第だ。
仮に株価が下落していくと、当然のように、米中貿易戦争リスク云々が大きく語られ、また正当化されるだろう。マーケットに関するコメントの大半はそういう性質のものと悟るべきだ。
■「リスクオフの環境ではない」ことが大前提だった
本コラムで繰り返し指摘してきたように、基本的には米利上げサイクルが当面続き、また2018年内に2回もの利上げの予測が正当化される中では、米国株の値崩れはないはずだ。
そして、米国株が崩れない限り、リスクオフの環境ではないから、いずれリスクオンのムードが高まり、外部諸要素の影響があっても、それは限定的なはずだった。
前述のような解釈の中、「材料出尽くし」がもっとも本質に迫る理由であれば、その前提条件は間違いなく「リスクオフの環境ではない」ことに尽きる。
■テクニカル的に見れば日経平均上昇の予測は簡単だった
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上海株の反転にはそれなりの根拠があったが、本コラムではこれまで提示していなかったので、今さら持ち出すと、やはり後解釈と疑われる恐れが大きいから、日本株のみを例として挙げよう。
日経平均のチャートは以下のとおりである。
日本株の上昇は、明らかに上方ブレイクしてから加速した。上方ブレイクという言い方自体、その前に保ち合いがあったことを指している。
フォーメーション的には、日経平均は明らかに「複合型三尊底」を形成していたので、いったん上放れを果たすと、大きく上昇し、また値幅が拡大したのも納得できるわけだ。
実際、日経平均は9月19日(水)まで4連陽で、4取引日で1000ポイントの上昇幅を達成し、テクニカルアナリシスの教科書の範例になれるほど「きれいな」チャートを形成していた。
ゆえに、日本株の上昇は見込みが高く、また相場の理に合っているから、前回の本コラムで指摘した「煮詰まりつつある日経平均もそろそろ本格的な上放れを果たすだろう」という推測が当たったとしても、別に大したことではないはずだ。
しかし、相場というものは、大きく上昇、また大きく下落する時、必ずと言っていいほど勝者のみでなく、それに比例する敗者がいることを忘れてはいけない。日経平均の急伸は、必然的にショートカバーが伴ったと推測され、また、ショートカバーがこれからも発生するだろう。
なにしろ、米中貿易戦争や、これから行われる日米通商交渉などのリスク要素を理由にして、トレンドに疑心暗鬼な者、また逆張り派が多い時に限って、実はトレンドはよく推進するものだからである。
■S&P500もNYダウも高値更新
執筆中の現時点で米国の株価指数、S&P500はまた史上最高値を更新し、NYダウも続伸、2018年年初来高値の再更新を果たしている。■年初来高値前後で米ドル/円のショート待ちが多い?
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なにしろ、米ドル/円は112円台前半に留まり、まだ2018年年初来高値の打診に至っていない。なぜかわからないが、米ドル/円の上昇トレンドに懐疑的な見方は、日本株より根強いようだ。彼らの多くは2018年年初来高値前後で米ドル/円のショートを仕掛けたいようであり、また、そのタイミングをうかがっていると聞く。
米ドル/円に強気な筆者にとって、こういった見方や動きは大歓迎だ。なぜなら、トレンド自体に疑心暗鬼な者、また、逆張り派が多い時に限って、トレンド・フォローに徹すべきであり、トレンド・フォローのスタンスさえ間違っていなければ、自分のポジションと逆の見通しが多く語られる局面はむしろ安心できると思うからだ。
今一度確認してわかることは、米ドル/円のロングこそトレンド・フォローなので、他の理由はもはやいらないかと思う。リスクオンの環境の中、王道のトレンド・フォローに徹したほうが無難だ。
■ドルインデックスは反落継続、クロス円は反騰
そして、前回のコラムにてもう1つ重要な指摘、すなわちドルインデックスの反落の継続も目下確認されている。執筆中の現時点で、ドルインデックスは93.50を打診し、6月14日(木)安値93.18に接近しているから、米ドル全体の調整が佳境に入りつつある状況だ。ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルをはじめ、主要外貨の反騰も当然の成り行きであるが、米ドル全体の調整は外貨高を通じて、クロス円における円安効果があることを見逃せない。
ユーロ/円の132円節目ブレイクや、英ポンド/円の149円節目トライ、豪ドル/円の82円節目接近は、すべて円安トレンドの進行を物語る。
となると、確かに米ドル/円の値動きが鈍いように見えるが、2018年年初来高値に接近しているだけの理由で逆張りを正当化することはできないだろう。
筆者からみれば、米ドル/円が足元で足踏み状態に見えるのは他でもない、ショート筋の仕掛けを誘う段階にあるからである。
換言すれば、十分な逆張りが集まれば、日経平均のように、その後、ショート筋を踏み上げ、上昇の原動力となるだろう。円安トレンドはまだ途中である。
米国株の高値更新に追随し、日経平均も米ドル/円も2018年年初来高値更新を果たすだろう。
リーマンショック10年祭の足元、マスコミの多くが「次回の危機に備えよう」と煽り、また、「次回の大暴落は必至」と断言している間は、トレンド・フォロー派はまだ安泰だと思う。市況はいかに。
(※9月21日から海外出張のため、通常と異なり、本コラムは9月20日23時半までの情報に基づき作成しました。ご了承ください)
陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」
最終更新:9月22日(土)14時01分
情報提供元(外部サイト)
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