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バンコク駐在中に物件購入して不動産投資。しかしそんなに甘くない現実

9月4日(火)15時40分配信 HARBOR BUSINESS Online

郊外のコンドミニアム。230万バーツの部屋だが、月7000バーツが相場。利回り3.7%程度
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郊外のコンドミニアム。230万バーツの部屋だが、月7000バーツが相場。利回り3.7%程度
 一般の会社員でも不動産投資をする時代。中には海外で物件を購入して、高利回りで運用しようという人もいる。特に東南アジアなら物価が安いということで、多くの個人投資家が注目してきた。

 最近は開発が著しく、しかも伸びしろが期待されているカンボジアは日々多くの外国人投資家が参入しているという。

 企業進出の人気国タイでも、不動産投資がこの10年くらいで加熱しており、今や郊外も開発の波で街並みが変わりつつあるが、実は地価高騰などもあって投資するにしてもかなり「微妙」になってきているという。

◆駐在中に不動産投資を始めようとする日本人も

 タイはあらゆる業種がタイに進出している。製造業などはバンコク郊外に多いが、企業駐在員や帯同家族はバンコクに暮らす。年々タイ在住日本人は増加するが、帰任・着任で一定数の入れ替えもある。

 そのため、不動産を仲介する業者もあり、賃貸を探すだけでなく、不動産投資をしたい人も物件を探しやすい。

 タイでは外国人は土地を購入できないので、投資家自身の名義で購入できる不動産はコンドミニアム(日本でいう分譲マンション)になる。借り手がつきやすい都心は新築、中古問わず、たくさんの物件が売買される。日本人経営、あるいは日本人向けの不動産仲介業者も多く、最近はタイに駐在中に不動産投資を始めようというサラリーマン投資家も増えているようだ。

◆意外と安くないタイの人気物件という誤算

 ところが、家賃と地価高騰が続くバンコクで不動産投資は無計画に手を出すと火傷をしてしまうと、不動産売買に詳しい人物A氏が言う。

「バンコク中心地は何年も地価高騰が続いています。そのため、運用に利用するには高すぎる状態になりました。投資で利益を出せるのは実はごく一部のエリアしかありません。それを仲介する人はあえて教えずに買わせようとしているのです」

 不動産仲介業を営む複数の人に聞いたが、日本人がタイで部屋を賃貸に出して資産運用する場合、店子は日本人にしたほうがいいとされる。タイ人や外国人だと契約や文化の違いでトラブルも起こり、気軽に運用できない。日本人だと同じ背景を持ち、かつ大切に物件を扱う人が多く、手間をかけずに運用しやすい。しかし、そうなると日本人に人気の居住エリアは限られてくる。

 アソークという多くの日系企業が事務所を構えるエリアがある。ここに最近新しいコンドミニアムが開発された。ここは超高級を謳っていることもあり、平米単価が30万バーツ(約100万円)になるという。それでもまだバンコクの最高値水準とは言えないが、屋台でなら1食が300円程度で済む国でこの単価は驚異的な価格である。これが単身者向けレベルの45㎡の部屋だと単純計算では1350万バーツ(約4600万円)となる。

 ここまで高いとサラリーマンが投資できる額ではない。しかし問題はそこではなく、悪質な不動産仲介業者だと「運用利益が出る」と気軽に言ってくることに注意を払わなければならない。前出のA氏が言う。

「この物件だと家賃10万バーツ(約34万円)で運用できると悪質な業者は売り込むようですが、実は落とし穴があります。近辺に有名なホテルがサービスアパートを運営しているのですが、そこが60㎡で8万バーツ(約27万円)です。つまり、10万バーツだと最初からエリア相場が合っていないわけです」

 サービスアパートとは部屋の掃除から洗濯などすべてが込みになったマンションやアパートだ。近くにそんな部屋があってはそもそも借り手がつかない。しかし、仲介者はそういう肝心な点を敢えて黙っているというわけだ。

 賃貸不動産仲介業者に勤めるB氏からも同様の話が出てくる。

「最近増えているのが、高額でコンドミニアムを購入したけれど、借り手がみつからなくてうちに預けたいという人です。しかし、ある程度の利回りを目的に購入した不動産ですので、希望額がある。でも、それが相場に見合っていないのです」

 ある程度の見込みを持って資産を投げ打ち購入しているため、一定のラインから家賃を下げることが気持ち的にできない。先のアソークの物件を本当に10万バーツで貸せるなら、実質的な利回りは6~7%ほど期待できるが、現実はそうは行かない。それを購入後に気がついても、株式やFXで損切りには勇気がいるのと同じで、家賃を下げるには気持ちが追いつかないのだ。B氏の経験では、10万バーツくらいで貸せると見込んで購入した物件の実際の相場が4.5万バーツ程度、つまり半額以下だったケースもある。

 今回の取材で唯一名前を出していいと言ってくれた賃貸不動産仲介業の「ディアライフ」社営業担当はバンコクにおける不動産の投資は難しいと言う。

「場所によっては利益も出るはずです。しかし、本当に儲かる物件はタイの富裕層などがすでに押さえていますから投資を成功させるのは難しいでしょう。そういった事情もあって、弊社では基本的には賃貸しか扱いません」

◆安易に高利回りを謳って買わせる悪徳仲介業者

 タイの不動産仲介業者はあくまでも仲介に立つだけの存在だ。どんな謳い文句で物件を購入させたとしても、売ってしまえば責任はそこまでになる。これもまた悪徳不動産が強気で売り込んでくる理由でもある。

 前出のA氏の話では、高額不動産の仲介をすればそれなりに大きな利益を上げられるので「1年間の家賃保証」をつける業者もいるのだとか。契約年数だけ保証してあげても充分に利益が出る。不幸なのは所有者で、なにも知らずに購入し、一定期間は当初の話通りに家賃収入があったのに、保証期間が終わればその金額で借りてくれる人など存在しないことを知るのだ。

◆タイで不動産投資をするために知っておくべきこと

 とはいっても、タイの不動産投資に魅力があるのは事実だ。日本人は年々増加しているので、場所さえ間違えなければ借り手がみつかりやすい。日系の不動産仲介業者は大半が良好な企業であり、そこに所有する物件の仲介を頼んでおけば投資家本人は動かずに日本人の店子を得ることができる。また、不動産投資の魅力の裏事情として、タイでは賃貸物件が5部屋以下の場合は申告不要なため、家賃収入をすべてポケットに入れることができるのもメリットのひとつだという。

 現在タイの銀行定期は年率1.3~1.5%になる。利息には別途税金がかかるので、やり方によっては不動産投資の方が大きな現金収入になっていい。しかし、都心は物件そのものが高額だし、逆に少し中心から外れたところにすると物件は安く買えても家賃2万バーツ(約7万円)で貸し出すことは相場的に難しい。

 自分で住むならいいが、運用はタイとバンコクの地理や日本人社会の動きを知っていなければ成功は困難だ。しかもタイは灼熱の国の上、バンコクは地盤沈下が激しい。10年も経つと物件としての価値も相当下がる。年数が長くなると高額の家賃も売却益も期待できない。ある不動産業者は「スクムビット通りソイ24くらいしか今確実に儲かるところはない」と断言する。

 しかし、タイでの不動産投資が絶対的にダメだとは誰も言わない。やり方によっては大きな利益もあるのだ。タイの不動産投資は人の話を鵜呑みにするのではなく、自分の足で調べて勉強しなければならない。先のアソークの物件近くにあるサービスアパートの家賃だって、素人でも簡単に調べることはできる。自分で調べてから自己責任で投資をするという点は、タイも日本も変わらないのだ。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>

たかだたねおみ●タイ在住のライター。6月17日に近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)が発売
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最終更新:9月4日(火)15時40分

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