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米国経済好調でも、日本が恩恵受けないワケ

6月22日(金)14時01分配信 会社四季報オンライン

(撮影:今井康一)
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(撮影:今井康一)
 世界経済は昨年末まで同時進行的に急拡大した。しかし、今年に入って日米欧の経済は連動しなくなっているようだ。つまり「デカップリング」状態となっている。

 1~3月の実質GDP成長率(前期比)は、米国が0.5%(昨年10~12月は0.7%)、ユーロ圏が0.4%(同0.7%)と減速し、日本がマイナス0.2%(同0.3%)となった。この前期比の数字をみる限りでは、世界経済全体が同様に減速しているように見えなくない。

 しかし、米国のGDPは季節調整の不備により、1~3月の前期比(あるいは前期比年率)成長率が低目に出やすい。前年比でみた成長率を比較すると、米国が2.8%(昨年10~12月は2.6%)と成長テンポが加速し、これに対してユーロ圏が2.5%(同2.8%)、日本が0.9%(同1.8%)と減速している。

 デカップリングは、OECDが発表する景気先行指数の動きをみると、よりはっきりわかる(図1参照)。2016年後半から2017年末にかけて日米欧の先進国経済は同時進行的に拡大した。しかし、17年末を転機に日本とユーロ圏の景気が下向きに変わった。米国景気は堅調に拡大し続けているのに対し、日本とユーロ圏は先行指標の動きをみる限り景気の勢いが失われかけている様子だ。

 7月初めにかけて、日本では5月の鉱工業生産(発表は6/29)、6月の日銀短観(7/2)、米国では6月のISM製造業景気指数(7/2)と雇用統計(7/6)、ユーロ圏では6月のユーロ圏景況指数(6/28)など最新の景気指標が発表される。これらの指標でデカップリングが続いているかどうかを見極めたい。
 
 昨年末までの同時進行的な世界経済拡大の背景には、世界的な設備投資ブームがあったと考えられる。そして、今年に入ってからはトランプ政権の減税が米国の景気を一段と押し上げた。一方、トランプ大統領の保護主義的な政策は米国以外の国の企業のマインドに悪影響を及ぼした。

 通常、ある国が財政面からの景気刺激策を実施すれば当該国の内需が増加し、輸入が誘発される。現在の米国のように経済がフル稼働の状態で減税を行えば、その効果は米国のみにとどまらず、米国の輸入増加(他の国の対米輸出増加)によって米国以外の国に漏れてしまうはずだった。

 ところが、トランプ政権は減税によって国内需要を増加させたうえ、保護主義的な政策によって、貿易赤字(輸出増加と輸入削減)を少なくしようと考えた。国内需要増加と輸出振興によって総需要が大幅に増加し、かつ、輸入削減策により総供給が減少するため、米国景気は過熱して物価や金利が上昇しやすくなる。これに対し、米国での財政拡張策が米国以外の国の経済を刺激する効果は限定的だ。これが、最近の米国と日欧の経済デカップリングの原因と考えられる。

 こうした状況では、単純に景気の強さという面だけ見てもドルは強くなり、ユーロや円は弱くなる。また過熱気味の景気をバランスさせるためには、金利上昇によって設備投資などの国内需要を抑制すること、ドル高で輸出を抑制し輸入を促進する必要がある。

 これらは米国の金利高・ドル高を招くはずだ。この先も、トランプ政権の保護主義的な政策に拍車がかかるおそれがある。それは一時的にドル安を招く可能性もあるが、少なくとも米国経済が堅調に推移している間は米金利高・ドル高の基調が続くだろう。
 ところで、こうした米金利高・ドル高が招く困った問題の1つは、新興市場国の通貨安だ。世界的金融緩和と世界経済同時拡大下でこれまではややハイリスクの新興市場国にも巨額の資金が流れていたが、米金利高・ドル高はそうした資金の流れを逆流させている。

 通貨安に見舞われる国はアルゼンチンやトルコだけでなく、メキシコ、ブラジルや南アフリカ、さらにはポーランドなど東欧諸国などにも拡大している(図2参照)。当該諸国では通貨安に歯止めをかけるため金融引き締めが必要であり、それは当該国の景気を悪化させる。先進国経済のデカップリングは米金利・ドル高を通じて新興市場国の経済を悪化させるおそれがある点に注意が必要だ。

 6月24日にはトルコで大統領選挙・議会選挙が実施され、7月1日にはメキシコで大統領選・議会選挙が実施される。トルコではエルドアン大統領の続投がほぼ確実視されているが、万一、第1回目の投票で過半数がとれなければ決選投票となり、反エルドアン陣営の統一候補勝利という番狂わせもあり得る。

 一方、メキシコでは汚職や治安の問題で、与党の制度的革命党の人気が失速しており、新興左派政党である国家再生運動のロペスオブラドール氏がリードしている。ただ、もし政権交代となれば、大衆迎合的な政策による財政赤字の拡大や米国とのNAFTA交渉の行方などの懸念が生じることになるだろう。

 新見未来(にいみ・みらい)/大手シンクタンクに在籍する気鋭のエコノミスト。マクロ経済のわかりやすい解説には定評がある

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
新見 未来

最終更新:6月26日(火)13時46分

会社四季報オンライン

 

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