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入居率「ほぼ100%」が崩壊、宮城不動産投資の今《楽待新聞》

6月20日(水)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
2012年ごろから2016年ごろまで、宮城県(特に仙台市)の入居率は「ほぼ100%」で推移していたと言われている。それに伴って、賃料相場も高騰。これは、2011年に発生した東日本大震災の復興特需の影響が大きい。県内在住の数人の投資家は、この時期には「県外からの多くの不動産投資家が物件を買っていた」と話す。

「震災前の状況に戻ってしまった」という声も上がるが、発災から7年が経過した今、宮城県は実際のところどのような状況なのだろうか。現地で取材を進めると、投資家たちが「危ない」と口を揃えるエリアも見えてきた。

■震災後、入居率が大幅上昇したが……

東北地方を中心に約1万8000人の死者・行方不明者(2018年3月現在)を出した東日本大震災。2011年3月の発災直後こそ、「その先の賃貸事業もどうなるかわからなかった」とある投資家は振り返るものの、その後仙台市を中心として、入居率ほぼ100%の状態が続くことになったという。

楽待コラムニストでもある「不惑ラガーマン 仙台の良さん」(以下良さん)は「(仙台市の)震災前の入居率の水準は82%程度でした。それが震災後、2012年ごろには一時的に100%近くなったんです」と語る。復興作業のために多くの人員が宮城県に来ていたこと、また、沿岸部に住んでいた人たちが引っ越してきたことが大きな理由の一つだ。

入居率が100%に近いということは、それに伴い賃料相場もつり上がっていた。必然、投資家にとっては非常にうまみのある市場だ。

ところが、「今年の春には入居率は85%程度になったようです」(良さん)。宮城県を中心に13棟を所有する投資家・フミさんも「震災直後の賃貸住宅は、完全な売り手市場でした。入居者さんはどこでもいいから入れればいい……という状態だったんです。それがだいたい震災後4~5年続いたんですが、今年に入ってじわじわ入居率は下がっていますね」と指摘する。フミさんが管理会社に聞いたところでも、やはり入居率は88%程度だそうだ。

「全国的に見れば(入居率は)いいほうだとは思います。しかし、やっぱり下がってきたな、というのが実感ですね。それに、入居率が100%近くなったときに、需要がパンクしたということでバンバン新築も建ってしまいましたし」

フミさんは、当時の状況について「震災後の4~5年間は、努力しなくても埋まる時期だった」と語る。そうした状況で、県外からも多くの不動産投資家が参入してきただろうことは想像に難くない。

こうした時期が過ぎ、入居率が震災前の水準に戻りつつある現在、県内物件の利回りはどのような状況だろうか。

フミさんは「県全体の平均で言えば、12~13%といったところではないか」と見ている。融資が締まってきたと言われているが、そうした状況の中で若干物件価格自体が下がってきた影響も大きい。良さんは「少し前まで、12%以上の物件はほとんど見つけられませんでした。10%前後がいいところでしたね。ただ、最近はそこから1~2%ほど利回りは上がってきたように思います」と話す。

■「仙台一強」、すべての物件を市内に持つオーナー

フミさんは「全国の中で東京がそうであるように、宮城県、ひいては東北の雄が仙台です」と言う。宮城県の人口は2018年5月現在、約231万5500人。うち、仙台市の人口は約108万7000人だ。また、県人口は減少傾向にある一方で、市人口はその数自体は小幅になりつつあるものの、今も人口は増えており、数字からも「仙台一強」ぶりはうかがえる。

5棟100室のオーナーである藤田弘明さん(仮名)は、そのすべてを仙台市内に所有している。その理由を、「この先10年、20年先を見据えた時、仙台市外に持つのは怖いからです」と話す。今後の人口減少が見込まれる中、東京や大阪、福岡といった都市部に人口が集中すると考えているからだ。つまり、東北であれば仙台市内ということになる。

藤田さんは特に、市営地下鉄やJRなど駅から徒歩15分圏内を必須の条件として物件を購入しているという。

■仙台市内の「勝てる」エリア、「勝てない」エリアは

では、そんな仙台市内の「勝てるエリア」と「勝てないエリア」はどこになるのだろうか。

札幌や名古屋といったエリアでも同様だが、仙台市内においても「鉄板」なのは市営地下鉄の沿線だ。仙台市には南北線と、2015年に開通した東西線が走っている。JRもあるが、「地下鉄と比較すると人気はないですね。家賃や物件のスペックがほぼ同等であれば、間違いなく地下鉄沿線を選びますよ」と、宮城県内に2棟を所有する楽待コラムニストの「ひかり不動産」さんは説明する。

最近は特に、南北線の長町や太子堂、富沢などの駅周辺が人気を集めているという。ただし、長町周辺はもはや「供給過剰で、売れ残り始めた」(良さん)との見方もある。

だが、人気エリアである地下鉄沿線では、当然のことだが物件価格は高止まり傾向にある。藤田さんは「本当の中心部にある物件はなかなか買えないですね」と話す。区分マンションを除けば、売り物件自体もほとんどないような状態だ。

■「危ない」と4人全員が口を揃えた場所

一方で、今回取材した4人の投資家が口を揃えて「危ない」と指摘するのは泉区だ。特に天神沢や歩坂といったエリアが危険だというが、その理由はなんだろうか。

「東北学院大学の移転です。これによってかなりの賃貸需要が消滅するのではないかと言われています」(ひかり不動産さん)

6000人近い学生を抱える東北学院大学の泉キャンパスは2021年以降、新たに仙台市中心部に整備されるキャンパスに集約される予定。泉キャンパス自体はその後も活用されると大学側は説明しているが、これまでのような需要を見込むことはできないと多くの投資家は考えている。

「泉キャンパス付近の物件が、現在利回り15%以上で多く売りに出ていますね。よほど何か策がないと危険な物件だと思います。市営地下鉄の泉中央駅からも遠く不便な場所ですし、物件自体も学生向けのワンルームアパートがほとんど。賃貸に絞らず、インバウンド需要を狙うなどの方法もありますが、学生向けで駐車場もなく、一般的な需要は厳しいでしょうね」(フミさん)

藤田さんも「今、このあたりのエリアの区分マンションも含めて投げ売りされていますよ。買うのは学院大の移転を知らない人だと思います。知っていたら絶対買わないでしょう」と話す。

また、仙台市内といえども山深い場所も少なくない。坂の傾斜がきついエリアは注意が必要だ。藤田さんは「坂を上る手前まではよくても、その奥は人が住みたがらない……なんて場所もあります」と指摘する。

こうした事態を避けるため、投資家自身が傾斜の度合いや道の細さといった事柄を自分の目で確認するとともに、「管理会社に対して、少なくとも数社分ヒアリングをしないといけません。そうでないと、あとで本当に痛い目に合うと思いますよ」と良さんは呼びかける。仙台市の中心部である青葉区や太白区といっても、山の中や温泉地なども同区内にあるため、「仙台市○○区」などの住所だけで判断することは危険だ。

■仙台以外の勝算はどこに

覆すようではあるが、仙台一強とは言ってもほかのエリアに勝ち目がないわけではない。

フミさんは「リスクと隣り合わせなので、自己責任ですが」と前置きしつつ、「白石市や岩沼市といった場所まで行けば利回りが高い物件は多いです。そういった物件のあるエリアでも、勝算のある物件は見つかると思いますよ。どうしても仙台にスポットが当たっていますが、それ以外にも需要はあるので」と語る。

また、仙台市の隣市である塩釜市や名取市といった「仙台まで電車で40分」「車で30分」というような「仙台市圏内」のファミリー物件なども狙い目だそうだ。

そんなフミさんは懸念のエリアは「大崎市」だと指摘する。同市の空室率は30%を超えるとして、「大崎の空室率は異常値だと思います。ダメなエリアだとは言いませんが、僕自身は怖くて買えないですね」という。ひかり不動産さんも「供給過剰で、どんどん建設された結果のようですね。需要自体も弱いと思います」と話す。

■「人口が増え続けるまち」の真実

東日本大震災で大きな被害を受けた石巻市。人口の規模としては県内第2の自治体であり、また、震災後の市内内陸側の発展は著しいが、フミさんは「震災後は外部からの流入もあって賃貸需要は跳ね上がりましたが、現在は大きく需要は下がっています」と指摘する。

「僕も物件を所有していますが、数年前は、被災者のための『みなし仮設』として借り上げられているケースが非常に多かったんです。ですが、今は災害公営住宅もほぼ完成し、入居者のほとんどが抜けている状態です。道を歩けば、半空物件がかなり多いですし、僕が買った当時より2~3倍空室が増えた印象ですね」

生活再建の難しい被災者のために国の補助で建てられた災害公営住宅自体にも空室があると言われる中、「石巻市よりは仙台市に買う方が良いと思いますよ」とフミさんは言う。

仙台市のベッドタウンに位置付けられ、「人口が増え続けるまち」と言われてきた富谷市は2016年に市制移行を果たしたが、良さんは「富谷市に住む人は戸建て、特に実需としての戸建てを求めている人が多いです。賃貸の売り物件はそんなにありません」と述べる。

富谷市の北に位置する大衡村や大和町にはトヨタ東日本自動車の本社・工場があるため、そうした従業員の需要はあるというが、「基本的に富谷市でワンルームは相当厳しいと思いますよ」(良さん)という。また、2018年は若干ながら人口も減少傾向にある。

■雪はそれほど降らないが、その分懸念も

ところで、宮城県が位置するのは東北地方。そうなると、気になるのは雪だ。良さんは「もちろん山の方など雪の多い場所もありますが、仙台市内であれば基本的には雪は少なく、降ってもすぐ溶けるのでそこまで心配はいらないんじゃないでしょうか」と話す。実際、東北地方の中で宮城県、特に仙台市はそれほど雪が降らないと言われているそうだ。

しかし、その分懸念もあるというのはひかり不動産さん。「雪が少ない分、凍結防止といった寒冷地仕様になっていない配管もあるなど、設備が中途半場な物件もありますよ」と指摘する。今年の冬に宮城を寒波が襲った際には、バランス釜が壊れたり、配管が凍ってしまい水が流れなくなったり、機械式駐車場が作動しなかったりといったこともあったという。

「雪が少ないとは言え、東北地方ではありますから、雪や寒さで急な修繕が必要になるかもしれないと念頭に置き、出費をそもそも見込んでおくことは重要だと思います」(ひかり不動産さん)

■「駐車場がなくても決まりますよ」は本当か

宮城県で賃貸経営をする際の注意点として、フミさんは「いくら仙台市内とは言っても、駐車場のニーズはやはり高いです。特に、郊外に行けばいくほど駐車場は必須になります。駐車場の有り無しで需要は大幅に変化します」と話す。

フミさんは戸建てなら最低でも2台分の駐車スペースが望ましく、また、単身者向けのアパート・マンションでも1台分は必要だという。

「その物件に無くても、周囲の月極駐車場があるかどうかはチェックしたほうが良いと思います。不動産会社さんは『駐車場がなくても決まりますよ』と言うこともありますが、そういう物件はたいてい周囲に月極駐車場があるんです。その言葉をうのみにしすぎるのはよくないですね」(フミさん)

こうした中で、良さんは別の手法をとっている。「もちろんあったほうがいいですが、駐車場のない物件なら、例えば生活保護受給者をターゲットにする、といったこともできます。バス停まで徒歩圏内、かつそのバスが1時間に数本もある路線なら、駐車場がなくても十分戦えると思いますよ」と述べる。

駐車場のない物件は買い付けの面でも人気がないため、比較的安く購入も可能だ。「駐車場のいらない入居者を設定できれば、利回りも上がりますよ」(良さん)

■宮城県の不動産投資、これからが正念場

宮城県の北、岩手県も東日本大震災では大きな被害を受けているが、良さんは「県庁所在地である盛岡市では、仙台市ほど極端な人口流入はありませんでした。沿岸からも距離もありますし、仙台ほど大企業があるわけでもありません。その分安定していますし、競争も激しくはないですよ」と語る。



東日本大震災の発生から7年以上がたち、復興途上にありながらも、少しずつ落ち着きを取り戻してきた宮城県。ただし、同県の入居率の高さなどを当て込んでいた不動産投資家にとってはこれからが正念場となる。今後宮城・仙台の物件を検討する際には、今までとは市況が大幅に変化していることを念頭におく必要がありそうだ。

どのエリアでも同じことだが、特に状況が激しく変わっている中においては、管理会社へのヒアリングや、自分自身の目で現地の確認を重ねることが、成功のために重要となってくる。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:6月20日(水)20時00分

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