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新法で「違法民泊」は本当になくなるか?

5月20日(日)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
新法の施行まで1カ月を切り、民泊市場は大きく様変わりしようとしている。これまで民泊を運営してきた投資家も撤退を余儀なくされたり、あるいは「180日制限」の下では儲からないと、旅館業に切り替えたりとさまざまな選択を迫られている。

一方、あくまで新法にのっとって合法で民泊を運営しようという投資家には、どのような準備が必要になってくるのだろうか。第3回となる今回は、民泊新法における手続きや、違法民泊の今後について考えてみたい。

■民泊につきまとう「違法」のイメージ

現在「民泊」という言葉は、しばしばネガティブなイメージで語られている。理由は言うまでもなく、既存の民泊物件の多くが違法なものであるからだ。現状、旅館業法上の許可を得ていない民泊物件はすべて「違法」である。

加えて最近では、オーナーと顔を合わせることなく利用できる点を悪用した事件も起こっている。こうした背景から民泊に対する一般市民の認識は厳しく、ネガティブなイメージが生まれている。結果として、民泊運営のハードルも高くなっているといえよう。

違法民泊を取り締まる民間サービス「民泊ポリス」を運営する中込元伸さんのもとには、民泊に関する様々な苦情が日々寄せられている。中でも特に多いのは、騒音とゴミ捨てに関するものだ。

「マンションの民泊物件を中心に、ベランダやエントランスでの電話、酔っ払った宿泊者の騒ぎ声がうるさいという通報が多くを占めます。ゴミに関しては、ゴミ出しのルール周知が徹底できていないために物件の周辺にゴミが散らかっているというケースがクレームにつながっているようです。特にひどい例では、ポストに生ゴミを詰められたというものや、ベランダからゴミを投げ捨てる人がいるといったものもあります」

住民にとってさらに恐怖なのは、セキュリティ面が脅かされるという点だ。

「マンションの一室などの場合、既存の住民にとっては自宅の隣が民泊物件ということも起こりうるわけです。利用者の多くは外国人ですから表札などは読めず、誤って別の部屋のドアをガチャガチャと開けようとしたりすることがあります。これは住人にとってはかなり恐怖ですよね」

新法における180日の営業日数制限は、こうした生活環境の悪化を防ぐための狙いも含まれている。6月15日以降、新法がトラブル減少につながったかどうかに注目が集まりそうだ。

■新法で「違法民泊」はなくなるか

こうした違法物件は、新法施行後どうなっていくのか。不動産関連ビジネスの許認可を専門とする行政書士の石井くるみさんは、違法民泊は新法施行によって「急激に減少する」と予想する。

「観光庁の通知を受け、6月15日までに民泊仲介サイトは違法物件の掲載を取りやめることになります。そうなれば、そもそも集客ができません。集客できないのなら事業として成り立たないわけですから、違法民泊の多くは6月15日を境に廃業を余儀なくされるでしょう」

仲介サイトを利用せずFacebookなどのSNSで集客を行うケースも想定されるが、無許可での営業には「6カ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(またはこれらの併科)」という罰則が適用される。「これらを考慮すれば、違法民泊の運営は見合わない」(石井さん)というわけだ。

■新法後、民泊仲介サイトはどうなる

事実、民泊仲介大手のAirbnbはいち早く違法物件の排除を表明しており、6月15日以降、日本国内の物件をAirbnbのプラットフォームに継続して掲載するには、自治体から発行される届出番号などの記入が必須となる。記入がない場合、6月15日までに「電子的な方法により非掲載」(Airbnb Japan 担当者)となる。

一方で、新たに民泊事業に参画する大手企業も登場した。IT大手の「楽天」は、昨年、「LIFULL」と「楽天LIFULL STAY」を設立。「民泊新法の活用は、地方での体験民泊などの魅力的な観光資源や雇用の創出につながり、観光活性化に寄与する」として、同社を通じて民泊事業に参入している。

楽天の担当者によると「インバウンド(訪日外国人)の数はまだまだ伸びる」と見込んでいる。また、「物件オーナーの民泊マーケット参入に対する障壁を少しでも下げることで、民泊の間口を広げていきたい」という。新法施行後には民泊予約サイト「Vacation STAY」を開設予定。同サイトでは届出が受理された証明書の写真と、届出が受理された際に発行される番号の突き合わせ作業で、確認をとる。

他方、中国系の仲介サイトを通じて多くの中国人ゲストが日本を訪れている現状を踏まえ、中国系大手の「自在家」にも取材を申し込んだが、期日までに返答はなく、今後の違法民泊への対応は不明のままだ。その他、同じく仲介サイトの「STAY JAPAN」は、もともと違法物件を掲載しておらず「新法施行による影響はまったくない」としている。

■オーナーを悩ませる「無断転貸」の今後

これまでの違法民泊物件の中には、部屋を借り、その物件を民泊用に転貸するという方法もあった。特に悪質なのは、オーナーに無断で運営しているケースだ。

楽待コラムニストであり、投資歴10年という競売大家さんは2年前、自身が首都圏に所有していたワンルーム物件の借主が、物件を民泊として無断で運営していたという経験を持つ。

「当時築40年ほどで、投資用だけではなく、実需としてお住まいの方も半数いらっしゃるマンションでした。そこの1室を約1500万円で購入し、賃貸として入居者を募集したんです」

ほどなくして入居の申し込みがあったが、競売大家さんはその申し込みにかすかな違和感を覚えたという。「そのマンションは東京の港区にあったのですが、申し込みをしてきた人は都内在住だったんです。最初は『会社の近くなので……』というような説明でしたが、途中で奥さんが住むというような内容になって、ん? とは思ったのですが……」

家賃は10万円に設定。立地はよかったが、築年が古いため洗濯機置き場が室外で、客付けは厳しそうだと考えていた競売大家さん。申し込みはありがたく、そのまま入居してもらったという。

ところが、1カ月もたたず管理会社経由でクレームが入った。理由は騒音だ。管理会社に確認してもらい、そこで借主の民泊運営が発覚した。

「宿泊料は1泊8000円ほどだったようです。民泊が出始めた時期でしたが、私に支払う家賃の倍以上は稼いでいたみたいですね。正直に言えば、せっかくの入居者ですしそのまま入り続けていただきたかったくらいですが、やはりクレームにもなっているので、残念ですが退去していただくことにしました」

当時そのマンションの規約に「民泊禁止」という項目は盛り込まれていなかったが、自宅として所有している住人も多かったため退去させるほかなかった。
短期間とはいえ入居してからの退去となったため、室内のクリーニングにも費用がかかり、再度客付けのための広告費も支払う羽目になった。「がっくりきましたね」と肩を落とす。

新法では、民泊物件が借家の場合、賃貸人が民泊営業(転貸)を承諾していることを書面で示す必要がある。そのため6月15日以降は、こういった無許可の転貸民泊物件も排除されることになりそうだ。

■ベテランホストが語る「選ばれる民泊」の作り方

ここからは、新法後に民泊を運営するためのノウハウや手続きについて紹介したい。

東京・墨田区にある自己所有のビルで民泊を営む細川雄三さん(仮名)は、これまでの経験からゲストに選ばれる物件のポイントをいくつか教えてくれた。細川さんの物件は東京スカイツリーに近い立地ということもあり、稼働率は平均9割。8室を所有するが、1室の平均売上は月20万円以上にのぼる。

「立地はもちろんですが、駅からの距離は近いか? も重要です。駅から10分以上かかるところは、よほど努力しないと難しいでしょう。当然、物件の近くに大型のスーパーやコンビニなどがあるか、食事をするところがあるか、ということもゲストは気にかけます」

他にも、ゲストの心を掴む意外なポイントも挙げてくれた。

「物件の最寄り駅にエレベーターがあるか、という点は、リピーターになってもらうことや、いい口コミをもらうためには必要です。外国人ゲストは大きなスーツケースを2個以上持ってくることもあるので、エレベーターのない駅だと嫌われます」

また、外国人ゲストに対して和室が人気という声もあるが、細川さんは「今まで畳の上に布団を敷いたことのないゲストは、そんな生活にはなじめません。一度ふすまでも破いてしまえば、気後れしてしまって二度と泊まってはくれませんよ」と指摘する。訪日外国人は1泊だけでなく、1週間単位で宿泊するケースも多いため、布団や畳の扱い方に慣れていないと逆効果になることもあるようだ。

「コンセプトなど、オーナーが部屋自体にこだわるケースも見られますが、ゲストにとっては、部屋が快適であるかどうかが重要なのです。それ以外は余計ですよ」

中には、入居が付かない空物件を民泊として運営しようかな……と考える投資家もいるかもしれない。しかし、細川さんはこういった考えを真っ向から否定する。そもそも、賃貸として借り手がつかないから民泊に、という発想自体がダメだというのだ。

「賃貸にすれば100%稼げる、でも民泊ならもっと稼げる可能性があるから民泊をするんです。空室をどうにか民泊で……という考えが通用するほど甘くはありません」

■手軽なはずの「電子申請」、しかし実態は……

次に、新法で民泊を開業するまでの手続きについて見てみよう。大まかなフローとしては、必要書類を揃えて物件のある自治体に届出を行い、受理された後、民泊運営に必要な「届出番号」と「標識」が発行されるという流れだ。

フローそのものはシンプルだが、現場では少なからず混乱が起きている。届出の受付開始から1カ月、新宿区には、毎日10~20件の相談が寄せられている。その内容の多くは、届出に必要な添付書類についての問い合わせだ。区の担当者は次のように語る。

「どの書類をそろえればよいかについては国のポータルサイトに記載があります。また、区で制作したパンフレット等にも明記してあります。ただ、それがどのような書類なのか、またどこで手に入れればよいのかが分かりにくいためか、問い合わせが多くなっています」

例えば個人が届け出る際に必要な添付書類の1つに、「成年被後見人及び被保佐人に該当しない旨の後見等登記事項証明書」というものがある。役所へ行けば入手できる書類だが、あまりに聞き慣れないものであるため戸惑う人は多そうだ。

また、国が提供する「民泊制度運営システム」も、今のところ使い勝手がよいとは言えない。民泊制度運営システムとは、国が用意する電子申請のためのシステムのこと。自治体の窓口でも届出は受け付けているが、このシステムを利用すれば誰でも簡単に届出が行えるという触れ込みだった。

しかし、実際に同システムのページを開くと膨大な数の入力欄が並び、記載方法もぱっと見では分かりづらい。区の担当者も苦笑いを浮かべながらこう話す。

「当初、国は『電子で簡単に申請ができる』と説明していました。しかしフタを明けてみると『簡単に』とは言えない。このシステムがうまく機能してくれなければ、届出は区の窓口に集中し、とても対応できなくなります」

こうした煩雑な手続きを、宿泊事業の素人である個人が独力で行えるのだろうか。前出の行政書士、石井くるみさんは次のように話す。

「役所へ行けば担当者が説明してくれるので、時間と手間さえかけられるなら自力で完了までこぎ着けることはできるでしょう。ただ、消防法令の遵守など、専門的な領域では独力での対応が難しいケースもあります。たとえば『消防法令適合通知書の提出が必要』と言われたとき、具体的にどのような手順で通知書を入手すればいいのか分からない、といった点が問題になります」

手軽に利用できるはずの電子申請には今のところ課題が多い。「上乗せ条例」の厳しさも手伝ってか、届け出件数は伸び悩む。新宿区の民泊物件は数千件に上るとみられているものの、5月14日時点で同区への届出件数は17件(うち2件は紙の書類による届出)にとどまるなど、実態は国の想定と異なっているようだ。

■民泊を「楽しむ」投資家たち

これまで今後の民泊や旅館業のさまざまな在り方を探ってきた。取材した投資家の意見の中には、「最終的には、自宅で趣味として民泊を楽しむのが一番いい」という声もある。最後に、「趣味と実益を兼ねた」民泊・簡易宿所運営を実践する2人をご紹介しよう。

楽待コラムニストでもある「さぬきうどん大家」こと小笠原正一さんは、高松市にある自宅の客間を簡易宿所として運営している。月商は15~35万円ほど。もちろん自宅の購入費も、簡易宿所の許可を得るための初期費用もかかっているが、いずれにしても「通常の不動産賃貸借に比べて利回りの高さを実感しています」と話す。

簡易宿所の許可を得るために最も苦心したのは、消防法上の基準に適合することだ。たとえば火災報知器は、押し入れなどを含め16台ほど設置する必要があり、合計50万円かかった。ほかにも、もともと設置していたカーテンが防炎仕様ではなかったが、お気に入りのそのカーテンをどうにか使用したいと全国の防炎加工業者を探した結果、苦労したものの防炎加工することができたという。

「自宅でのホームステイと同じなのに、男女別々のトイレ設置や増設という無理難題も言われて窮地に立たされましたが、粘り強く必死に根拠を説明して説得した結果、現状のトイレの状態で許可をいただけました。綱渡りのような認可取得でしたね」(小笠原さん)

その一方で、「旅人と交流できる面白さは格別です。自宅に居ながら、世界中にお友達ができました」と強調。収益的な面白みもあるといい、「通常の賃貸では月4万円くらいの家賃で貸すこともありますが、簡易宿所では1晩でそのくらいになることもあります。今後も続けていきますよ」。現在は、駅前に50名宿泊できる民泊用のホテル開業準備を行っており、年商7000万円を目指す考えだ。

もう一人、東京都内の自宅で、家主滞在型の民泊を運営するうたぞーさんは「自分の可能性が広がり、出会いの楽しみがある。それが民泊だと思います」とその魅力を語る。週末になると、自身の部屋を開放し、ゲストに貸し出しているのだという。「せっかくなので快適に過ごしていただきたいと思っています。ゲスト用に経費で今治タオルも購入しましたよ。償却が終わったら、家族用におろします(笑)」

収益としては1年間で20~30万円程度の売り上げだが、自宅としてだけでなく、わずかでも稼ぎ出すことができるのなら「アリ」だろう。

家の中に他人が入ってくるというわずらわしさや面倒くささはあるものの、それを上回る楽しみがあるといううたぞーさん。家族は当初反対していたものの、最近は清掃などにも協力してくれ、さらに子供たちも外国人ゲストとの交流を楽しんでいると話す。民泊で得た収益は通常の賃貸収入とは分け、目標額が貯まったら家族でハワイ旅行に行くつもりだという。



3回に渡り、民泊のさまざまな側面を取り上げてきた。今後の民泊の在り方について、また新法後の戦略について投資家や専門家の見解は同一ではないが、いずれにしても6月15日以降、市場が劇的に変化することは間違いない。

新法施行を境に、民泊に関するネガティブなイメージが払拭され、違法な物件が健全な宿泊施設を運営するオーナーの足を引っ張るといったことがなくなることを切に願う。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:5月20日(日)20時00分

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不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

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