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図面と実物が違う! 仲介業者に賠償請求は可能か

5月17日(木)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© BRAD-Fotolia)
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こんにちは。銀座第一法律事務所弁護士、鷲尾です。

今回は、オーナーチェンジ物件のため図面のみを見て購入した物件を購入後に確認したところ、図面と実際のレイアウトが異なっていたという場合のご相談です。

■相談者の質問

オーナーチェンジ物件を購入しました。購入時には満室で、部屋の内部を確認することができず、不動産仲介業者からいただいた図面のみでの確認でした。最近、そのうちの1室に退去がでたので部屋の内部を確認したところ、不動産仲介業者からいただいた図面と実際のレイアウトが異なっていました。仲介業者への賠償請求は可能でしょうか?

■オーナーチェンジ物件のメリット・デメリット

一般的に、賃貸物件を賃借人が入居したままの状態で売買することを「オーナーチェンジ」と言います。賃借人はそのままで、物件の所有者(オーナー)だけが交替するということですね。

オーナーチェンジ物件を購入する場合には、賃借人を募集して入居させるという手間がいらず、物件を所有してすぐに賃料収入を得ることができます。また、オーナーチェンジ物件の場合、賃料は分かっているので利回り計算など計画が立てやすいこともメリットです。

ただし、デメリットもあります。オーナーチェンジ物件の場合には、室内に賃借人が居住しているため、通常は室内を実際に見て確認することができません。つまり、室内の様子や状態を確認することなく高価な不動産を購入することになるのです。この点が、オーナーチェンジ物件の購入を検討する場合、一番不安に思うところでしょう。

ちなみに内覧ができない物件では、売主側から購入希望者に対して、その旨の説明がされます。契約時には、売買契約書や重要事項説明書に「本物件は賃貸中のため内部を点検することができず、室内の現状及び付帯設備の状況は不明である」などの注意書きが記されます。

■仲介業者には説明義務がある

ご相談のケースについて説明する前に、オーナーチェンジ物件にまつわる仲介業者の説明義務についてお話します。

仲介業者は、物件の売買を検討する購入希望者に対して、その決定に重大な影響を及ぼす事項について説明する義務を負っています。

説明義務を負う内容や範囲は、マイホームを購入する場合とは異なります。賃貸物件の売買においては、オーナーチェンジの場合、入居しているのはどのような賃借人で、賃貸者契約の条件はどうなっているか、賃料支払状況はどうか、などの賃貸借関係における基本的な要素は、売買を検討するにあたって重要な事項になります。したがって、これらの事情も説明義務の範囲に含まれることになるでしょう。

ただし当然、売買の仲介業者として行うことのできる調査には限界があります。たとえば、賃借人が入居中のマンションの一室の売買で、入居していた賃借人の属性についての仲介業者の調査義務が争われた事案で、裁判所は次のように述べて買主の仲介業者に対する損害賠償請求を認めませんでした。

調査の方法・程度は、賃借人の思想・信条・私生活等のプライバシー保護の観点や事実上の制約などにより制限され、「原則としてその物件の所有者または当該賃貸借契約を管理している管理会社に対し賃借人が提出した入居申込書に記載された身元・職業を確認することのほか、当該物件の外観から通常の用法がなされているかを確認し、その結果を依頼者に報告すれば足りる」(東京地裁 平成9年10月20日判決)。

また、オーナーチェンジ物件で、内覧することなく物件を購入した買主が、エアコンなどの設備の不具合を指摘し、これが隠れた瑕疵にあたるとして、売主に瑕疵担保責任による損害賠償請求をしたという事案があります。

この事案では、買主は内覧ができないとしても、入居している賃借人に付帯設備等の状況を尋ねることができたのに、これをせずに売買契約に至ったことから、買主には不具合を発見できなかったことについて過失があるとして、損害賠償請求は認められませんでした(東京地裁 平成27年1月23日判決)。

しかし実際には、売買契約を締結する前に、買主となろうとする者が賃借人と直接連絡を取り合うことは一般的にはできないでしょう。売主の損害賠償義務を否定した結論はともかくとして、この判決が述べる理由については、私は疑問を感じます。

■仲介業者に責任を問う条件とは

ご相談のケースは、室内を確認することができずに物件を購入し、入居者が退室してはじめて内部を確認したところ、購入時にもらっていた図面と実際のレイアウトが異なっていたということです。

このケースで仲介業者に損害賠償責任を問うためには、レイアウトが図面と違うことについて、仲介業者に調査すべき義務があり、また、調査が可能だったと言える必要があります。

一般的にオーナーチェンジ物件の場合、買主は、賃貸借契約の内容や物件と設備の物理的な瑕疵の有無などについては重大な関心を持つはずです。これらの事情は、物件の運用収支に影響することは明らかで、適正な売買価格を決めるにあたり重要な要素となるからです。

そこで仲介業者は、これらの事情について、可能な範囲で調査して購入希望者に説明すべき義務を負うことになり、これを怠れば損害賠償義務を負う可能性があります。

■賠償請求は難しい

では、図面とレイアウトが違うという事情についてはどうでしょうか。相違の程度にもよるでしょうが、レイアウトの相違がただちに運用収支に影響を及ぼすとまではいえないことも多いと思われます。

購入時、現に賃借人が入居し、賃料も支払っているわけで、買主はその賃料額等について把握し、そのうえで物件の購入を決めたはずです。そうすると、図面とは違うレイアウトであっても、その物件を賃貸に供することには大きな支障はないと考えられます。

また、オーナーチェンジ物件の場合、売主自らも勝手に室内に入ることはできず、内部の現状について知り得ないことも少なくありません。このような場合、仲介業者としては、売主や管理会社に確認するなどして可能な限り室内の状態等について調査すべきですが、それ以上の調査を強いることはできないでしょう。

したがって、仲介業者から実際のレイアウトがこの図面通りであるとの説明を受け、それを信じて物件を購入したというような場合などを除き、仲介業者に説明義務違反や調査義務違反を問うことは困難でしょう。

もし、仲介業者に義務違反が認められたとしても、それにより買主に生じた損害を立証する必要があります。オーナーチェンジ物件においては、運用収支にどう影響したかが問われることとなり、その点にもハードルがあります。仲介業者に対する損害賠償請求が認められる可能性は10%程度と思われます。
鷲尾 誠

最終更新:5月17日(木)20時00分

不動産投資の楽待

 

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株式会社ファーストロジック

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