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四季報でガッテン、IoTはもう始まっている

4月25日(水)16時51分配信 会社四季報オンライン

ここ1、2年で四季報での露出度が上がってきているのが「IoT」と「AI」の言葉だ
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ここ1、2年で四季報での露出度が上がってきているのが「IoT」と「AI」の言葉だ
 前回の「来期の有望業種を徹底分析」に続き、今回のコラムも3月に発売された最新の『会社四季報』2018年2集(春号)から話題を拾ってみたい。今回は同号に登場するキーワードやテーマなどについてだ。

 会社四季報には毎号2ページ目に「【見出し】ランキングで見る業績トレンド」という企画があり、たとえば18年2集春号では、1位「最高益」(184社)にはじまり、2位「続伸」(169社)、3位「上向く」(152社)など、数の多かった【見出し】が15位までランキングされている。ただこのランキングは「業績トレンド」とあるように、あくまで業績の方向性や動向を知るためのヒントにはなるが、相場のキーワードやテーマがわかるというわけではない。

 やはりキーワードやテーマを知るには、四季報すべてとは言わないが、せめて何ページかパラパラめくってコメントを読み、その文章の中から数が多いとか、気になるといった言葉を書き留めて、その言葉を四季報オンラインの検索機能であらためてスクリーニングし、ヒット件数やヒットした企業などを確認するという基本作業が必要である。

 以下のランキングは、私が春号のコメント欄で気になったキーワードを、「国別」と「それ以外」に分けて、数が多い順に並べたものである。

 「海外」というキーワードはここ最近非常に多いと感じていたが、コメント欄だけでも500件以上ヒットするし、国別では「中国」が500件以上、「米国」も300件以上、そのあと件数は減るがタイ、ベトナム、インドネシア、インド、台湾、韓国の順番で100件前後がヒットする。この結果だけでも、たとえば「海外展開」や「米国」、「中国」のキーワードは重要かつ大きなテーマになることがわかるし、それ以外ではタイ、ベトナム、インドネシアなどもテーマになる重要な国であることがわかる。

 海外以外のキーワードでは、1位に「提携」、3位には「M&A」が入り、これらは成長のための手段として活用されていること、同様に「人材」「値上げ」「増産」というキーワードからは足元の事業環境が好調であること、また「車載」というキーワードからは車のスマホ化、自動運転などで「電子機器の車載」が進展していることがうかがえる。
 注目すべきは、ここ1、2年で一気にランキングを上げてきた9位の「AI(人工知能)」や、ランキング表にはないが16位の「IoT」である。今では誰もが知る言葉だが、キーワードランキングではようやく上位に顔を出し始めたところであり、テーマとしてはこれからまだまだ続くだろう。特に「IoT」は、「すべてのモノがインターネットにつながる」という概念はわかるものの、AIのように人工知能が将棋や囲碁の名人を打ち負かすというような象徴的でわかりやすい事例が少ないため、一般的にはまだ身近なものと実感できている人は少ないのではないか。

■ 四季報に見るIoTの実例集

 そんななか2018年2集春号のコメントでは、「IoT」が身近なおもしろい事例として紹介され始めており、このことはあらためてIoTをテーマとして考え直すきっかけになると思われる。具体例を挙げると、一つ目がホスティングと電子認証提供が両輪のGMOクラウド(3788)の「【ゴミ量】IoT対応ゴミ箱をハウステンボスで実証実験。リモートでゴミ量把握する効率性武器にモールなど大型施設狙う」だ。同社ホームページによると、「ゴミの滞留を遠隔から「見える化」することで、ハウステンボス内で働くスタッフのゴミ収集業務の効率化を図る」ということだ。

 街中でよく目にする光景で私が気になっていることは、自動販売機の横に設置されている空き缶・ペットボトル回収箱で、それが一杯になって周りにゴミがあふれていることだ。もし「IoTゴミ箱」が一般的になれば、このような光景はなくなり、ゴミ一つないきれいな街並みになると思う。そのような日が、IoTによって一日も早く来ることを期待したい。

 二つ目がコンテンツ配信・アプリ開発等が柱のアクロディア(3823)の「【IoTボール】プロ野球キャンプで導入のボールは一般向け販売も好調、生産体制整え代理店通じ拡販」だ。このコメントを見た瞬間、子供のころ草野球でよくボールをなくしたことを思い出しつつ、これで草むらに飛び込んだボールをIoTによってすぐに見つけることができる、と昭和的な発想を持ってしまった。

 実際はそのような単純なものではなく、同社ホームページによると、このIoTボールは「i・Ball Technical Pitch」というネーミングで、硬式野球ボールの中心部に9軸センサーを内蔵したIoT製品だそうだ。ボール本体を投げると投球データがスマートフォンに転送され、「球速、回転数、回転軸、球種、変化量、腕の振りの強さ」を計測し、専用サーバーで投球データの解析が可能になるという優れものだ。

 「Technical Pitch」はすでにプロ野球の2017年秋季キャンプで複数の球団に試験的に採用されたが、このたび一般向けに2万7500円(税別)で販売されるというコメントだった。現在はセンサー壊れてしまうので、「Technical Pitch」は試合では使えないが、今後の改良次第ではプロ野球のテレビ放送でも、ピッチャーの球速だけではなく、打者が打ったボールも含めさまざまなボールのデータが表示されるようになるかもしれない。もしそうなればプロ野球はエンターテイメントとしてもっと盛り上がる可能性がある。
 三つ目が大塚ホールディングス(4578)の「【ヘルスケア】世界初承認のデジタル薬は丁寧に育成方針」だ。「デジタル薬って何?」と感じる方も多いと思うが、デジタル薬とは同社の抗精神病薬エビリファイの錠剤に極小センサーを内蔵したものだ。つまりデジタル薬は、IoTというテーマから考えれば「IoT薬」と言い換えてもよいだろう。

 その仕組みは、錠剤に特殊なセンサーが入っていて、胃の中で錠剤が溶けセンサーが胃液に触れると、センサーが電気信号を発信、患者の腹部に貼り付けた受信用の検出器が信号をとらえるというもの。さらにデータは検出器から患者のスマホへ、スマホのアプリから医師に伝わる。

 このエビリファイを必要とする統合失調症患者は、退院後も指定されたとおりに継続的に薬を飲まなければ再発のリスクが高まるのだが、現実には退院して6カ月もすると患者の約4割がきちんと薬を飲まなくなるそうだ。このことが結果として疾患の完治を遅らせ、薬の処方量を増やし、医療費の増大にもつながるという悪循環に陥る可能性があるが、このデジタル薬によって、医師の管理のもと、しっかり薬を服用できれば、疾患の完治や医療費抑制につながるだろう。

 気になるのは、胃の中に入ったセンサーの「その後」だが、実はセンサーを構成する銅やマグネシウムは溶けないので人体に悪影響を与えることはなく、無事大きな「便」とともに体外に排出されるとのことである。

 最後に2018年2集春号で、AIに必要な「深層学習(Deep Learning)」と「IoT」のキーワードがコメント欄に出てくる銘柄をいくつかまとめてみたので参考にしてほしい。

 渡部 清二(わたなべ・せいじ):大手証券会社に23年間在籍。中堅企業、個人投資家向けの資産コンサルティング、世界の運用会社向けの日本株セールスに携わる。2014年四季リサーチ設立、2016年「複眼経済観測所」設立、所長。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
渡部 清二

最終更新:4月26日(木)17時41分

会社四季報オンライン

 

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