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仮想通貨事業者は危ういのか。不透明さがぬぐえない「みなし事業者」って何?

4月21日(土)12時10分配信 投信1

みなし事業者が生まれたきっかけは「改正資金決済法」

写真:投信1 [トウシンワン]
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写真:投信1 [トウシンワン]
2018年1月、仮想通貨取引仲介事業者(以下、仮想通貨事業者)大手のコインチェックにおいて、外部からのハッキングにより、仮想通貨の一種である「NEM(ネム)」約580億円が流出するという事件が起きました。

現在も報道が続いていますが、その中で「コインチェックは、みなし事業者」という表現をよく見かけます。この「みなし事業者」とは何なのでしょうか。

理解のためのポイントになるのが、2017年に施行された「改正資金決済法」です。同法の施行により、金融庁が監督するとともに、仮想通貨事業者に登録制が導入されました。

銀行や証券会社は免許制で、厳しい運営や管理が求められます。ところが仮想通貨事業者はそのような規制や法律がなく、どんな業者にも事業が認められていたのです。

このため、中にはマネーロンダリング(資金洗浄)対策やセキュリティ対策に不安がある業者、さらには投資家から預かった資金を自社の経費に流用している業者など、仮想通貨事業者としてふさわしくない業者もありました。

「改正資金決済法」の施行にあたっては、仮想通貨事業者の要件が厳しく設定されました。しかし、法の施行前から運営している事業者が登録申請中は、みなし事業者として営業を認めることにしました。

1年たっても半数のみなし事業者が審査を通過できず

スイス、フランス、ドイツなどでは仮想通貨事業者は免許制になっています。それに対して日本が登録制としたのは、規制を緩くすることで新規参入をしやすくし、市場を活性化する狙いです。

背景には、政治家や仮想通貨事業者などからの強い要望があったとされます。同法の施行により、日本ではビットコインなど仮想通貨で決済ができる店舗が急増しました。

さらに、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックでのインバウンド決済需要に応えることができるようなインフラが整備されれば、名実ともに日本が世界の仮想通貨市場をリードすることができます。

ところがコインチェックの流出事件により、そのもくろみは早々に崩れました。さらに露呈した課題は、同社をはじめ、仮想通貨事業者側の取り組みがあまりに遅いことです。現在、国内の仮想通貨事業者は32社で、そのうち登録事業者が16社、みなし事業者が16社となっています。

つまり、登録制導入から1年以上が経過しても、業界全体の半数が依然として審査を通過できていないのです。コインチェックもみなし事業者のままでした。

仮想通貨事業者が儲かる”カラクリ”

コインチェック問題で関係者を驚かせたのは、同社が460億円もの補償を、事件発覚後1か月半あまりで実施したことです。「仮想通貨事業者はそんなに儲かるのか」と驚いた人も多いのではないでしょうか。

その理由は、仮想通貨ならではの不透明性にあります。たとえば、価格形成のプロセスです。仮想通貨事業者を「取引所」と呼ぶことがありますが、証券取引所などとは大きく異なります。

東京証券取引所などでは、売り手と買い手がそれぞれ価格を提示し、そのバランスにより値段が決まります。証券会社はその仲介手数料を得ます。ところが、仮想通貨の場合、仲介だけでなく自己勘定での売買を行っている業者がほとんどです。

大きな特長は、この場合の価格は業者が自分の思惑で決めることができることです。通貨によっては、利益となるスプレッド(売値と買値の差)を5~10%の高額に設定している例もあります。

さらに、業者が自己勘定で売買を行う場合、マリーと呼ばれる相殺取引を行うことができます。たとえば、投資家Aさんがある仮想通貨1単位を買い注文し、投資家Bさんが同じ仮想通貨1単位を売り注文した場合、仮想通貨事業者はこれらを相殺することができます。

つまり、実際に仮想通貨を動かさなくても(手元に仮想通貨がなくても)、手数料だけを簡単に得ることができるのです。

これらのカラクリにより、コインチェックは月間で数千億円もの売買を自己勘定で行っており、数百億円もの利益を得ていたと言われます。むろん、その源泉のほとんどは個人投資家の資金です。

今後は業者の淘汰や再編がさらに進む可能性も

自己勘定やマリー取引は違法ではありませんが、問題はそれらが開示されておらず、ブラックボックスになっていることです。多くの投資家が安心して取引できるようになるには透明性が必須になります。

コインチェック事件をきっかけに、金融庁がみなし事業者に立ち入り検査を行い、一部のみなし事業者に行政処分を行いました。みなし事業者の中には仮想通貨交換業からの撤退を決めたところもあります。コインチェックはマネックスグループの完全子会社になることで存続の道を維持しました。

仮想通貨市場の健全化を進めるためには、業者の淘汰や再編もまだ続きそうです。ただし規制を強化し参入障壁が高くなりすぎると、せっかく日本がリードしている仮想通貨市場でのポジションを失うことにもなりかねません。

現在、世界では国によって仮想通貨に対する対応もまちまちです。市場の発展途上期ならではの難しい局面にさしかかっていると言えるでしょう。
投信1編集部

最終更新:4月21日(土)12時10分

投信1

 

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