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風雲急!店頭FX原則禁止論まで飛び出した第4回検討会。レバ規制強化派が優位に!?

4月16日(月)21時06分配信 ザイFX!

■レバレッジ規制の議論は大きく進展

第4回「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」参加者
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第4回「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」参加者
 4月13日(金)、レバレッジ規制など店頭FXに対する規制を議論する「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」の第4回目となる会合が開催された。

 収斂していたボリンジャーバンドが一気に拡大、トレンドが明確になった――今回の議論をチャートにたとえれば、そんな感じだろうか。

 トレンド形成を後押ししたのは、関係者として招致された神田秀樹氏(東京大学名誉教授、学習院大学大学院法務研究科教授)によるプレゼンテーションだ。

■レバレッジ規制は「やむをえない規制としてありうる」

(出所:金融庁に提出された学習院大学大学院法務研究科・神田秀樹教授の資料より抜粋)
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(出所:金融庁に提出された学習院大学大学院法務研究科・神田秀樹教授の資料より抜粋)
 神田教授の発表は、過去の議論も踏まえた上で問題点を整理し、それに対する処方箋を提示する形で行なわれた。中でも注目されたのが、「個人顧客にとっての取引の不透明性」に対する処方箋だ。

 そもそも決済リスクへの対応を議論する会合ではあるのだが、第3回会合で店頭FX取引の「不透明性」が指摘され、有識者の間でも問題意識が高まっていた。それに対応する形で示された神田教授の「処方箋」は下記のようなものだ。

 「証拠金(倍率規制)の強化はファーストベストではないがやむをえない規制としてありうる」

 レバレッジ規制の強化について消極的ながらも賛成とした意見が、有識者メンバーの議論に大きな影響を与えたようだ。

■有識者メンバーはレバレッジ規制に「賛成4:反対1」

 関係者やオブザーバーのプレゼンテーションが大半の時間を占めていた過去の会合と違い、今回の会合では、有識者メンバーが意見を述べる時間が十分にとられた。述べられた意見から、レバレッジ規制に関する部分を抜粋してみよう。

 「未収金リスクは中長期で見るとしばしば現実化するため、対応力を強める必要がある。

 未カバーポジションリスクなどにはFX業者の自己資本強化などが必要だが、リスク負担のしくみを分散する観点から未収金リスクには倍率規制での対応が望ましい」(坂メンバー)

 「倍率規制は店頭FXだけ強化というのもありうるのではないか。もしかして店頭と取引所は差をつけてもいいのかもしれない」(永沢メンバー)

 「ストレステストの強化、金融先物取引業協会や金融庁への報告、監査制度の強化など全体としての整備の中で倍率規制を強化していくのが本来のあり方」(勝尾メンバー)

 「倍率規制によって全体の市場規模が抑制されれば解決する問題がある。10倍という数字が出ているが、ぜひ実現していただきたい」、「基本的には(店頭と取引所は)イコールフッティングがいいのではないか」(上柳メンバー)

■レバレッジ規制強化に反対する意見も

 ここまでの4人は、店頭FXと取引所FXの格差については意見の対立があるものの、レバレッジ規制の強化については前向きな見方を示している。

 一方で、消極的な意見を述べたメンバーもいた。

 「証拠金倍率規制は決済リスクへの対応という意味ではあまりに大雑把。

 決済リスクに注目するなら、神田教授がご指摘の財務規制の強化やストレステストの強化、あるいはCCP(中央清算機関)を一定の範囲で要求することが考えられてもいいのではないか」(弥永メンバー氏)

 5人の有識者メンバーはそれぞれにレバレッジ規制に対する態度を明確にした。今後の議論でまた態度が変わる可能性は少なくないが、現時点では「賛成4:反対1」となる。

■くりっく365優遇の流れはなぜ生まれたか

金融庁に提出された金融先物取引業協会の資料
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金融庁に提出された金融先物取引業協会の資料
 上記発言の中に「レバレッジ規制は店頭FXのみでいいのでは?」との声もある。

 こうした意見を形成するきっかけになったと思われるのは、東京金融取引所と金融先物取引業協会の行なった意見発表だ。

 まず金融先物取引業協会のほうを見てみよう。ポイントとなったと思われるのは、下記のデータだ。

■「がんばります」では済まない

 「ストレステストの実施体制について社内規定を整備しているか?」との質問に対して、5社が未整備だと回答している。これに対して、有識者メンバーの一部は強い不信感を示した。

 「(リスク管理について)店頭FXは各社のばらつきがあることに不安を覚えました。とくに未カバーポジションリスクについて、問5(上記データ)で5社が『いいえ』と回答したこと。

 ストレステストの規定がなぜないのか疑問。(金融先物取引業協会が)指導してできるのかどうか。『がんばります』では済まないのではないか」(永沢メンバー)

■不利なデータを公開する危機感の薄さ

 「金融行政方針について」のなかで金融庁は「ストレステストの継続的な実施をはじめ、FX業界全体における為替リスク管理の底上げが必要である」と明確に示している。

 ストレステストが今回のレバレッジ規制論議における重要なキーワードであることは、誰がどう読んでも理解できるだろう。

 それにもかかわらず社内規定が未整備の会社があれば、「リスク管理の意識が甘すぎる、レバレッジ規制やむなし」と受け取られても仕方がないだろう。

 さらにいえば、「このような不利なデータをわざわざ示す必要があったのか?」と指摘することもできる。

 戦術的なミス、あるいはレバレッジ規制強化に対する危機感の欠如を感じる人もいるだろう。

■甘さが際立った店頭FXのストレステスト

(出所:金融庁に提出された東京金融取引所の資料より抜粋)
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(出所:金融庁に提出された東京金融取引所の資料より抜粋)
(出所:金融庁に提出された東京金融取引所の資料より抜粋)
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(出所:金融庁に提出された東京金融取引所の資料より抜粋)
 一方で、東京金融取引所(TFX)が行なったのは、独自に行なっているストレステストの概要を店頭FX業者と比較したプレゼンテーションだ。

 東京金融取引所では独自の積立制度などにより、未収金が発生しない体制を整えている。また、店頭FXの共通ストレステストが年1回なのに対して、東京金融取引所は毎営業日だ。

 負荷(ストレス)がかかった場合の想定損失額についても、568億円と具体的な数字が示された。

 「店頭取引と取引所取引の規模はまったく違います。568億円に取引高の比率をかければいいという単純な話ではないと思いますが、ゾッとする数字だと認識しました」(上柳メンバー)

 東京金融取引所の「くりっく365」の売買高は、店頭FXのおおよそ1%程度だ。568億円を100倍すれば、5.6兆円。たしかに「ゾッとする数字」になる。

 この発表を通じて、有識者メンバーに「東京金融取引所は決済リスクへの対応がしっかりしている」と強い印象を与え、また一部に「店頭FXとの格差やむなし」との意見も形成させたようだ。

■店頭FXそのものの禁止論も台頭!

 ここまでは店頭FXに対するレバレッジ規制に焦点をあてて紹介してきたが、今回の議論では「店頭FX禁止論」さえも台頭している。その口火を切ったのも、前述の神田教授だ。

 「一般的にいえば店頭FXは『バケットショップ』。そのためいろいろな懸念が生じている」

 バケットショップとは、神田教授の資料によれば「顧客を相手方として自己が取引すること」とある。

 この定義だと、店頭FXのほか、CFDや販売所形式を採用する一部の仮想通貨取引所などもバケットショップとなる。

 バケットショップの問題点として、神田教授が指摘したのは「非対称性」だ。

 顧客は業者がどう価格を生成するのか、そのプログラムの詳細を知ることはできないし、一方で業者は顧客のポジションやオーダーをすべて把握している。

 こうした非対称性が過去に問題となったのが、「非対称スリッページ」だ。

 クリックした瞬間のレートと約定したレートのズレ(=スリッページ)が発生することがある。

 しかし、以前、一部の業者では「業者有利なスリッページ(ネガティブスリッページ)は発生させるが、顧客有利なスリッページ(ポジティブスリッページ)は発生させない」ようにシステムを設定していた。

 現在はポジティブ、ネガティブ両方のスリッページを発生させる「対称スリッページ」が義務化されているが、神田教授の指摘する「非対称性」がもたらした問題の一例といえるだろう。

 こうしたことから、神田教授は店頭FXには「個人顧客にとっての取引の不透明性」があることを問題視しているのだ。

■レバレッジ規制強化で取引の不透明性は解消するのか?

 こうした状況を踏まえて、神田教授は「バケットショップを原則禁止する」、つまり、「店頭FXを原則禁止する」ということを処方箋として提示している。

 神田教授は「店頭FXを原則禁止すべき」と主張しているわけではなく、「店頭FXの不透明性を解決するには原則禁止という解決策がある」と提示しているに過ぎないのだが、一部の有識者メンバーに注目されたようで、あとからもたびたび言及された。

 「(バケットショップは)機関投資家が行なう取引ならともかく、個人を相手にしていいのだろうかと素朴な疑問として思う」(永沢メンバー)

 「バケットショップが金融商品取引では原則禁止ではないかということは、出発点として確認したほうがいい」(上柳メンバー)

 さすがに「店頭FXの原則禁止」に至ることはないだろうとは思うが、規制強化へとつながる可能性もあり、店頭FX側にとってはうれしくない議論だ。

 なお、「バケットショップの原則禁止」以外にも神田教授は取引の不透明性を解決するための処方箋をいくつか提示していたが、その最後に「証拠金(倍率規制)の強化はファーストベストではないがやむをえない規制としてありうる」として、レバレッジ規制を挙げていた。

 レバレッジ規制を強化することが、どのようにして取引の不透明性を解消することにつながるのか、その道筋についてはとくに説明がなかったが、とにかく神田教授はそのように主張したのだった。

■座長はどうまとめたのか

 レバレッジ規制の強化へと議論が進んだ感のある第4回会合だが、議論をリードする座長の池尾和人さん(立正大学経済学部教授)はどうまとめたのか。

 「まだまだ議論すべきことがある。いただいたご意見等を踏まえて、事務局が整理し、考えうる論点を提示する形で引き続き議論を進めていきたい」

 座長は早急な結論を避けた形となっているが、議論はいよいよ煮詰まってきている感がある。もし、現時点で報告書をまとめれば、レバレッジ規制強化は避けられないだろう。

 事務局がどう整理し、有識者メンバーの考えにどんな影響を与えるのか。次回以降の会合に注目だ。

(取材・文/ミドルマン・高城泰 編集担当/庄司正高)
FX情報局

最終更新:4月16日(月)21時06分

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