ここから本文です

八方塞がりのプーチン、軍拡競争の「代償」

4月15日(日)15時00分配信 東洋経済オンライン

再選は果たしたものの、八方塞がりのロシアのプーチン大統領(写真:Alexander Zemlianichenko/ロイター)
拡大写真
再選は果たしたものの、八方塞がりのロシアのプーチン大統領(写真:Alexander Zemlianichenko/ロイター)
 ロシアのプーチン大統領は再選されたが八方塞がりだ。経済成長率は極めて低く、プーチン政権が発足した2000年代初頭の好景気とは比べようもない。西側諸国との関係改善なくしてロシア経済が好転するとは考えにくいが、西側との対立は深まる一方だ。

 経済成長に投資は欠かせないが、成長のカギとなる技術や国際金融市場へのロシアのアクセスは限られている。プーチン氏と親密なロシアの企業や大富豪には経済制裁が科せられており、成長投資の足かせになっている。
■年次教書演説で将来への不安を露呈

 西側からの経済制裁に耐えかねたロシア政府は、投資・通商の拡大を狙い、中国との関係強化を模索した。だが、米中首脳会談で習近平国家主席がトランプ米大統領を皇帝級の特別待遇でもてなしたことで、プーチン氏の望みはついえた。対米関係改善も同様だ。

 3月の年次教書演説でプーチン氏は、図らずも将来に対する不安を露呈してしまった。ロシアが他国に後れを取る可能性があるとして、危機感をあおる場面がいつになく目立ったからだ。
 「技術進化は一気に加速している」とプーチン氏は分析し、こう言った。「技術進化の波に乗ることができた者ははるか先を行く。波に乗れなかった者はおぼれる」。おぼれかかっているのがロシアであるのは明らかだ。

 また、プーチン氏は年次教書演説の相当部分を、CGを駆使した最新鋭兵器のプレゼンに費やした。超重量級の大陸間弾道ミサイル、迎撃システムが追いつけないほど速い超音速兵器、核弾頭を積んだ長距離魚雷、原子力エンジンを搭載した無限の射程を持つ巡航ミサイルなどである。米国がどのような防衛網を構築しようとも、ロシアにはそれを突破する力があると証明したかったようだ。
 だが、そのような言動に出ることで、プーチン氏は自らの恐れをうかつにもさらけ出してしまった。ロシアの戦略核兵器が時代遅れのものになることへの恐怖だ。

 核戦力と国連安全保障理事会常任理事国としての拒否権を別にすれば、ロシアの戦略的影響力を支える基盤は弱い。経済規模は実質的にイタリア程度でしかなく、仮にプーチン氏が本気で米国と軍拡競争を続けるつもりなら、軍需産業を除く主要セクターは相当な経済的犠牲を強いられる。一般ロシア人の生活水準もさらに低下する。
■軍拡競争はロシアを崩壊へと導く

 一方でプーチン氏は近頃、紛争が泥沼化している東ウクライナに国連平和維持部隊を派遣する案を容認する考えを示している。年次教書演説で最新兵器を披露したのは、さらなる軍縮や開かれた対話の必要性があることを西側諸国に悟らせるためだったのだろう。

 だが、たとえプーチン氏が対話を望んでいたとしても、ロシアの元スパイとその娘が神経剤によって襲われるという、3月に英国で起きた暗殺未遂事件を見過ごすわけにはいかない。放射性物質を用いた2006年の元スパイ暗殺と同様、英国政府は今回の事件もロシア政府の仕業だと結論づけている。
 ロシア政府は事件への関与を隠そうと、うそと情報操作という露骨なやり方で対抗してきている。言うまでもなく、人を殺し、うそをつくような政府を対話の相手として歓迎するわけにはいかない。

 だからといって、米国とロシアが真摯な対話を行わなくていいというわけではない。両国は核戦力の近代化を進めているからだ。長年にわたって機能してきた軍縮枠組みが無力化する危険性がある。

 新たな軍拡競争はロシアを含む全世界を脅威にさらすものだが、それだけではない。かつてのソビエト連邦がそうだったように、軍拡競争はほぼ確実にロシアを崩壊へと導く。プーチン氏は4選を果たしたが、その未来は極めて不透明だと言わざるをえない。
カール・ビルト :スウェーデン元首相

最終更新:4月16日(月)11時07分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

ヘッドライン