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「株価7万倍」松下と大バケ期待の周年企業

3月14日(水)17時01分配信 会社四季報オンライン

パナソニックは創業100年を迎えた(創業者・松下幸之助)
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パナソニックは創業100年を迎えた(創業者・松下幸之助)
 今年2018年は明治維新から「150周年」の節目であり各地でさまざまなイベントが行われている。実はこの「周年」という言葉は四季報読破においても非常に重要なキーワードなのだ。というのも、「周年」という節目の年には大規模なキャンペーンが開催され、社員の士気が高まるだけでなく、○○周年に合わせた中期経営計画が策定されたり新たなビジネスが展開されるなど、企業活動にも大きな変化が生じることが多いからだ。

 この「周年」をキーワードにして四季報オンラインで検索すると、2018年1集新春号では135件がヒットする。これはAIやIoT、ロボットなど最も旬なテーマのキーワードを上回るそれなりの数である。

 年数別で詳しく見ると、最多は70周年で28件、100周年は22件で2番目だが、100周年はここ最近の四季報では非常に目立っていて、私は特に「100周年」に注目している。なぜなら100周年企業には、関東大震災やその後の震災手形の処理問題に端を発した1927(昭和2)年からの昭和恐慌、日中戦争、太平洋戦争などあらゆる動乱をくぐり抜け、1世紀という長きにわたり存続した「継続性」という強みがあるからだ。

 参考として2018年1集新春号で「100周年」のコメントがある銘柄から一部を以下に選んでみた。

 ところで2018年に100周年を迎える企業は日本に何社あるのだろうか。ここでは東京商工リサーチのホームページを参考にした。同社が持つ企業データベース約310万社から周年企業を抽出・分析した結果によると2018年に創業100周年を迎える企業は1760社ある。これら1760社は1918(大正7)年に創業し現在まで続いているということになる。

 ちなみにこれより古く明治維新から1918年までの間に創業した会社について、年代と社数を調べてみると、1位は日露戦争から3年後の1907(明治40)年で2343社、2位は元号が大正に変わる1912(大正元)年で2243社、3位は第1次大戦後の1916(大正5)年の2162社で、これに1918(大正7)年の1760社と続く。

 今年100周年の企業を産業別で見ると製造業が30%と最も多く、以下卸売業の21%、不動産の14%、サービス業の10%となっている。1916年から1918年にかけて製造業の創業が多かった理由は、第1次世界大戦後の空前の好景気で、第1次世界大戦は主戦場が欧州だったことから戦争圏外にあった日本の輸出が急増したことが背景にあったとしている。この好景気は1915年下半期から1920年初めまで続くが、これを押し上げたのが「産業の重化学工業化」だったことから、製造業で多くの企業が創業したとも指摘している。
■ 業績絶不調でも株価絶好調のからくり

 さて先週3月7日、パナソニック(6752)は1918(大正7)年の松下電気器具製作所創業から100周年を迎え、創業者・松下幸之助の高い志やものづくりのDNAを未来に伝承したいという思いから「パナソニックミュージアム」を開設したと発表した。

 パナソニックはかつて、強固な「ナショナル」ブランドを擁する松下電器産業として常に株式市場では「日本の代表銘柄」として注目されてきた。私が証券会社に入社した1990(平成2)年当時、松下は資産株の代表格として研修でも取り上げられ、戦後すぐに買って保有していたら億万長者になったという夢のある銘柄だったのだ。

 実際にもし同社株を、1950(昭和25)年6月の戦後最安値27円で1000株買い(※買い付け代金は2万7000円)、2000年3月につけた上場来高値3320円で売ったとすると、その後の株式分割などで株数が増えたことを考慮すればその価値は約7万倍の19億円弱になっていた計算になる。しっかり長期保有していれば億万長者になれたのは事実である。

 戦後長い目で見れば株価が上昇した松下もそれぞれの年ごとに年間株価パフォーマンスに違いがあり、詳しく見てみると面白いことがわかる。

 まず下落率ランキングトップは、意外なことに大阪万博が開催されカラーテレビの普及が加速したタイミングの1970(昭和45)年のマイナス53%であった。当時の四季報(1970年1集新春号)を確認すると業績はまさに絶好調で、コメント欄には「カラーテレビ好調。(中略)売り上げ3000億円、純益200億円の大台突破の時期」とあり、陰りが見えるどころか、業績は増収率、増益率、そして稼ぐ力である売上高経常利益率もすべて15%以上という状況だった。

 ではなぜ下落率トップになったのか?  その理由は1年後の1971年1集新春号に出てくる「【不買運動】消費者運動の主要対象が松下に向けられており、5月期の利益に大きくひびく公算がある」とのコメントである。ここでいう不買運動とは、1970年から1971年にかけて起こった、松下を名指しした「カラーテレビ不買運動」のことだ。

 当時は白黒テレビからカラーテレビへの移行期で、カラーテレビに旺盛な需要があったことから、メーカーは国内販売では強気姿勢を崩さず値下げをしなかったが、反面、海外向けには低価格で輸出するという、二重価格の問題があったことが原因となった。

 このことをきっかけに消費者の不信を招き、全国地域婦人団体連絡協議会 (地婦連) がカラーテレビの1年間買い控えを呼びかけ、それが全国に飛び火し、日本における過去最大規模の消費者運動になったのである。どんなに業績がよくても消費者を裏切る行為が発覚すれば、企業の根幹を揺るがしかねない事態に発展する。あの松下もこのようなことを経験していたのだ。
 一方で上昇率ランキングの上位は、テレビ・冷蔵庫・洗濯機のいわゆる「三種の神器」が飛ぶように売れた神武景気前後の1950年代がほとんどであるが、こちらも意外なことに業績が絶不調だった2013(平成25)年に135%もの上昇率を記録。堂々の第3位に入っている。

 いったいどんなからくりなのか。前年の2012年12月に発売された『会社四季報』2013年1集(新春号)を見ると、チャートはずっと右肩下がりで、四季報コメント欄には「【無配】テレビ・携帯・民生リチウム電池など想定以下。パネル不振。のれん減損や繰延税金資産取り崩しで最終大赤字」と散々に書かれている。しかし同コメント内には「白モノ底入れ」や「【止血】」といった最悪期から転換しそうな雰囲気があったことや、業績も改善に向かう変化が見られたのだ。

 以下が当時の同社の【業績】欄で売上高と営業利益の関係を見ていただきたい。

 株価が好パフォーマンスを演じた前の期に当たる2012年3期は、売上高も利益も減少する「減収減益」だったが、今期に当たる13年3期予想は、売上高は減少するが利益は増加する「減収増益」に転換し、来14年3期予想は売上高も利益も増加する「増収増益」に復活する形になっていたのだ。

 以上のポイントをまとめると、

 1.コメントは悲観がほとんどだが一部に明るさが見えた。
2.今期業績は株価が大底をつけるとされる「減収増益」予想になっていた。
3.株価チャートは右肩下がりで将来の改善を織り込んでいなかった。

 という特徴があったことがわかる。このような特徴を満たす銘柄は今後も注目である。

 最後に2018年1集新春号で、業績に変化がある銘柄をいくつか選んでみたので参考にしてほしい。条件は四季報オンラインの最新業績予想で、売上高と営業利益が、今期もしくは来期「減収増益(横ばい増益、減収黒字含む)」になっている銘柄である。

 渡部 清二(わたなべ・せいじ):大手証券会社に23年間在籍。中堅企業、個人投資家向けの資産コンサルティング、世界の運用会社向けの日本株セールスに携わる。2014年四季リサーチ設立、2016年「複眼経済観測所」設立、所長。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
渡部 清二

最終更新:3月14日(水)17時01分

会社四季報オンライン

 

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