ここから本文です

少子高齢化、人口流出進むニュータウン 復活は可能か

2月20日(火)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
拡大写真
(写真:不動産投資の楽待)
1950年代に始まった高度経済成長期に、増加する住宅需要の受け皿として建設されたのがニュータウンだ。国土交通省はニュータウンの定義を「1955年度以降に着手された事業」「計画戸数1000戸以上または計画人口3000人以上の増加を計画した事業のうち、地区面積16ha以上であるもの」「郊外での開発事業」としており、2013年時点で全国に約2000箇所存在する。(※1)

しかし建設のピークは1970年代前半であることから、ニュータウンの多くは建設後40年以上が経過。建物の老朽化や住民の高齢化が進むことで街全体が老いていく「ニュータウンのオールドタウン化現象」が問題になっている。

このような事態に陥る背景には何があるのか。また、ニュータウンの団地や戸建てが投資用物件として出回っていることもあるが、不動産投資用として、ニュータウンにある物件は運用には不向きなのだろうか。(※2)

■住民が一斉に高齢化 第二世代には魅力が弱く人口が流出

まずお話を伺ったのは、著作『限界マンション』、『空き家急増の真実』(ともに日本経済新聞社)などを持つ富士通総研主席研究員・米山秀隆さん。オールドタウン化の原因について米山さんは「開発と入居が一斉に行われること」を指摘する。

「住民の高齢化と建物の老朽化が一斉に進み、結果としてオールドタウン化を引き起こしします」(米山さん)

第一世代の高齢化が進むのは理解できるが、第二世代が住み続ければオールドタウン化は食い止められるのではないか。この疑問を米山さんに尋ねると、「ニュータウンは第二世代にとって魅力的とは考えにくい」と話す。

「核家族化が進み、子どもは家から独立して家庭を持ちます。そのため、いまや大人数で暮らすケースは少なくなっています。第二世代にとっては間取りが手狭であることもあり、魅力が弱いのです」(米山さん)

立地や街全体の状態が良好であれば、進学や就職で離れた第二世代が戻ってくる可能性はある。しかし米山さんは、「現状では、そのような条件を満たすニュータウンは少ない」と話す。

■オールドタウン化するニュータウンの特徴

オールドタウン化するニュータウンにはどのような共通点があるのか。米山さんは以下の4点を挙げた。

1:主要都市からアクセスするのに1.5~2時間ほどかかるなど、立地が悪く、第二世代以降に魅力的ではない 。
2:立地の悪さが理由で、開発主体にとって、建物を更新して新たな世代を呼び込むインセンティブが乏しい。
3:住民(町内会、マンション管理組合など)による、建物や街を維持していくための活動が弱い。
4:ニュータウンを維持していくための行政からの支援が乏しい。

ニュータウンは郊外に建設されているため、都心へのアクセスの悪さを嫌って人口が流出し、新たな入居者を得る施策も行われていない、という状況だ。そのため、一度人口減少や高齢化、空き家が増加すると荒廃の一途を辿りやすい。

だが、中には例外もある。不動産会社の株式会社山万が開発を進めた、千葉県佐倉市のユーカリが丘ニュータウンだ。同ニュータウンが他と違うのは、開発を一気に行うのではなく、長期にわたり少しずつ開発を進めたことだ。初期の入居者が高齢になった後は、高齢者の受け皿となるマンションや施設をニュータウン内に用意。空き家となった戸建住宅は現代的に改修し、新たな世代を呼び込む。

また、ニュータウン内に認可保育所など子育て支援のための施設も建設。そうした取り組みの結果、2011~2015年で9歳までの子どもの数は約600人増え、高齢化率は全国平均よりも低い状態を維持している。アクセス面では、都心までは京成線で1時間ほど要するものの、街の取り組みによっては活気を維持できるという好例だ。

■投資価値のあるニュータウンとは?

ニュータウンにある物件へ投資し、収益を得られる可能性はあるのか。そのための条件として、米山さんは以下の2点を挙げる。

1:空き家に対する需要が出てきた場合(場所に捉われずに自らの活動やビジネスを立ち上げる場や、郊外で集中できるITやクリエーティブ職の仕事場としての需要が出てくるなど)
2:将来的に再生が見込めるようになった場合(ニュータウン全体の再生が進み、それに伴って個々の住宅の価値も高まっていく場合)

米山さんは、「そのような条件を満たすニュータウンを見極められれば、投資する価値はあると思われます」と添えた。

投資して成功する可能性のあるニュータウンとそうでないニュータウンをどう見極めるといいのか。以下に、主要なニュータウンの状況を挙げながら解説していく。

■三大ニュータウンの現状を見る

まず、日本三大ニュータウン(東京・多摩ニュータウン、大阪・千里ニュータウン、名古屋・高蔵寺ニュータウン)について見てみよう。米山さんへの取材を元に、各ニュータウンの変遷をまとめた。

○多摩ニュータウン
   
東京都町田市・八王子市・多摩市・稲城市の4市に及び、総面積は約2800ヘクタール。最初の入居が始まったのは1971年だ。人口は増加を続け、2017年10月時点では約22万5000人。(※3)

同ニュータウンでは、地区によって入居開始時期が大きく異なる。最も早く入居がスタートした諏訪永山地区では、第一世代の高齢化が進んでいることに加えて第二世代の流出が相次ぎ、高齢化率(総人口のうち、65歳以上の高齢者数が占める割合)は約40%に上る。その一方で、入居が90年代以降から始まった地区も存在あり、年代にばらつきがある。都心から距離があることから新たな入居を見込んだ建て替えや再開発などが進みにくい点がネックになっている。

2010年には最も早く入居がスタートした地域である諏訪2丁目住宅(1971年入居開始、小田急永山駅から徒歩 10分の場所に立地)の建て替え決議が成立し、2013年に竣工。1988年から建て替え推進の活動が始められていたが、ようやく完成した。これは同ニュータウンでは初の団地建て替えとなる。

その結果、5階建て23棟(640戸)の低層団地は、11階・14階建て7棟(1249戸)の高層マンションに生まれ変わった。建て替え資金は、余剰住戸を販売することで捻出し、還元率100% (従前からの所有者が同じ面積の住戸に移る場合、負担なしで移れる)の好条件となったため、建て替え決議では住民の92%が賛成した。

建て替え後は、緑が多く子育て環境として適しているのではと注目した若い世代が入居し、多世代が入居するマンションになっている。

○千里ニュータウン

大阪府豊中市・吹田市に跨る千里丘陵にあり、1962年に入居がスタートした。総面積は1160ヘクタールであり、日本初の大規模ニュータウンとして注目された。しかし高齢化は免れず、65歳以上の高齢者の比率は21.0%と、大阪府全体の15.7%を上回る。(※4)人口は1975年の約12万9800人をピークに減少を続けたが、2010年以降は増加に転じ、2016年は約9万9500人となっている。(※5)

都心部へのアクセスが良いことがメリットで、千里中央駅から新大阪駅までは約10分、梅田駅までは約20分という利便性の良さは魅力。増加の要因は、こうした好立地である点から新たな需要を見込み、低層の集合住宅の敷地や容積率の余裕を活用されたことにある。これらの住宅は、高層マンションとして建て替えられた。

また、公営住宅集約後の余剰地や、公有地におけるスクラップ・アンド・ビルド(老朽化した建物を廃棄し、能率が高い新鋭設備に建て替えること)後の余剰地に、新たなマンション開発も行われた。子育て世帯をはじめとする若い世代の入居が進み、ニュータウン全体の若返りが進んでいる。

千里中央はリクルート住まいカンパニー「住みたいまちランキング」(2017年)で関西地区4位にランクイン。大阪府では梅田、なんばに次ぐ人気だ。

○高蔵寺ニュータウン

愛知県春日井市東部の丘陵に立地。総面積は約700ヘクタール。1968年に入居がスタートした。名古屋駅から電車で30分ほどであることから、名古屋市のベッドタウンとして開発されたが、その後は名古屋市により近い場所で開発が進んだことで競争に敗れた。

人口は1995年の約5万1000人ピークに減少を続けている。空き家率を見ると賃貸住宅で約17%、高齢化率は約30%と、ともに高水準だ。(※6)。

同ニュータウンでは、URによる空き室の改修(若者や子育て世代への家賃優遇)、官民連携によるまちづくり会社の設立(高蔵寺まちづくり、2017年10月)などの活動が行われている。

以上から、大都市圏に立地する三大ニュータウンでも、高齢化や人口減少などに悩んでいることがわかる。しかしただ手をこまねいているわけではなく、行政や地域住民が協力して再生を進めた結果、前述の千里ニュータウンのように人口が増加に転じるケースもある。

■アクセスの悪さから再生主体が長く不在 鳩山ニュータウン

生まれ変われるニュータウンと、そうでないところの明暗を分けるものは何か。米山さんに再生が進むケースとそうでないケースを挙げてもらった。再生の動きが芳しくないケースとして、米山さんは埼玉県の鳩山ニュータウンを挙げた。同ニュータウンは、戸建て住宅3000戸の団地で、100戸以上が空き家という状態にある。また高齢化率は50%近くに達している。

最寄りの高坂駅から池袋駅を経由して都心に出るには、電車、バスを乗り継いで1時間強を要するため利便性が良いとはいえず、子ども世代の流出に歯止めがかからない。商店街はシャッター通りと化している。

『週刊東洋経済』(2017年1月28日号)によると、同ニュータウン内の中古戸建て住宅の売り出し価格は、場所や物件によるものの、600万円台にまで落ち込んでいる、との情報もある。

同ニュータウンの特徴は、道路や隣家からの距離に余裕を持たせたり、家の高さや色を規制したりするなど、街並みに配慮した住宅地として整備されている点が挙げられる。そのため街としてのポテンシャルは高いと考えられるが、再生に取り組む主体が長い間不在の状態だった。

活性化の動きとしては、2017年7月に、空き店舗を改装した公共施設「鳩山コミュニティ・マルシェ」の指定管理者が中心になり再生を目指してオープンしているが、再生はまだ始まったばかりだ。

■外部から若年層の呼び込みを狙う 大阪・泉北ニュータウン

一方、再生が進むケースとして、大阪府の泉北ニュータウンがある。大阪市内都心部まで30km圏内で、泉北ニュータウン内を横断する泉北高速鉄道の各駅から難波駅までで約30分、大阪駅までは約50分かかる。

千里ニュータウンに比べ立地面では不利であるものの、再生に向けたさまざまな活動が進んでいる。大阪府住宅供給公社が泉北ニュータウンに最初に供給した茶山台団地では、公社と市が連携したり、ときには民間の力を借りたりしながら、以下のような取り組みを行なっている。

1:DIY R SCHOOL(プロの講義を受けながら一般参加者が空き家のリノベー ションを実施)
2:ニコイチ(茶山台団地は45平方メートルの狭い住戸が中心だが、2戸を1戸につなげて90平方メートルを実現し、人気を博している。2017年にグッドデザイン賞を受賞)
3:リノベ45(単身世帯や若年夫婦向けの、45平方メートルの広すぎるワンルームをコンセプトとしたリノベーションの提案を募集)
4:みんなの集会所づくりプロジェクト (住民で話し合い、集会所を新たなコミュニティスペースとして改修)

また、2010年には自治会、介護施設、行政など合わせて20団体が連携して「泉北ほっとけないネットワーク」を発足した。府営住宅の空き室を借りた高齢者支援住宅の開設、空き店舗を利用したレストラン運営、高齢者向け弁当宅配などの高齢者支援事業を行っている。

さらに詳しい話を聞くべく、同ニュータウンの再生を進める堺市役所市長公室ニュータウン地域再生室主査の中川健太さんに具体的な施策と効果を伺った。主な対策は以下の通りだ。

・住まいアシスト補助(家賃補助):一定の条件を満たした子育て世帯で月額2万円の家賃補助を最長で5年間行う。
・住民主導で街の活性化を行う取り組みへの支援:泉北をつむぐ まちとわたしプロジェクト
・戸建物件の場合、リノベーションの啓発活動と補助金の交付:補助については、物件の一部の耐震補強についてのみ実施
・女性やシニアの起業支援:セミナーなどを開催する。共働き世帯の増加に伴い、都心への通勤に負担感が増加。職住近接を実現し、暮らしやすくする狙いがある。

中川さんに効果を聞くと、実際に起業をしたり、小商いをしてビジネスを始めたりする住民が出てきているという。

また米山さんが例示した「ニコイチ」も人気だ。大阪府住宅供給公社が手がける同事業は、対象を子育て世帯など若年層とした結果、主に30代の入居が進んでいる。住民を巻き込んで再生に取り組むことで住民の街への愛着が増しているのも、成功要因の一つだろう。今後も泉北ニュータウンへの居住を希望する層に絞って、外部から若い世代を呼び込み、ニュータウンの若返りに期待ができそうだ。

これからの流れについて中川さんは「府営団地の建て替えによって生じる敷地を活用してまちづくりを進めて行きたい」と話す。堺市だけではなく、府やURなどと連携して泉北ニュータウン内に住宅や働くための場所を用意していく意向だ。

■投資するなら、立地を見極めて

日本の少子高齢化は加速の一途を辿っているが、ニュータウンではその影響が顕著だ。そのためニュータウンが置かれた状況は厳しいが、前述のように官民一体となって再生に向けた取り組みが行われているケースもあり、人口が増加に転じたり街の活気を取り戻したりするところもある。

ニュータウンに立地する物件への投資は、立地の利便性をよく検討し、需要があるかどうかを見極めることが重要になる。ニュータウンを管轄する行政のホームページや、街づくりを行う民間団体の活動をチェックし、それが活発かどうかを確認することも役立つ。そうした活動が活発になる傾向があれば、今は厳しいとされる街でも今後価値が高まっていく可能性はあるだろう。

○取材協力/米山秀隆さんhttp://www.fujitsu.com/jp/group/fri/economic/people/yoneyama.html

○参考

※1:国土交通省 宅地供給 ニュータウン
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000065.html

※2:国土交通省 ニュータウン 面積比率
http://www.mlit.go.jp/common/001205570.pdf

※3:東京都都市整備局 多摩ニュータウン
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/tama/pdf/toukei_01.pdf

※4:国土交通省白書 千里ニュータウン
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h14/H14/html/E1033203.html

※5:吹田市 千里ニュータウン資料集
http://www.city.suita.osaka.jp/home/soshiki/div-toshikeikaku/keikakutyosei/_80069/_80785.html

※6:春日井市 高蔵寺ニュータウン
http://www.city.kasugai.lg.jp/shisei/machi/new_town/1008950.html
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:2月20日(火)20時00分

不動産投資の楽待

 

情報提供元(外部サイト)

不動産投資の楽待

不動産投資の楽待

株式会社ファーストロジック

最新記事を毎日更新

実際に不動産投資を行っている投資家の
「失敗談」や「成功談」をはじめ、
不動産投資をするなら必ず抑えておきたい
ノウハウを記事にして毎日配信!

【あわせて読みたい】

【PR】Yahoo!ファイナンスからのお知らせ

平均年収ランキング

ヘッドライン