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築古でも「逆転発想」のPRで人気物件に

1月21日(日)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© west_photo-Fotolia)
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ロバート・キヨサキ氏は著書「金持ち父さん貧乏父さん」で「セールスとマーケティングの能力ほど重要な技術はない」と書いている(*1)。

日本の賃貸物件市場の厳しさは人口減少が背景にあるが、それだけではない。国土交通省が発表している新設住宅着工戸数のデータによると、昨年11月時点の年率換算で賃貸アパートなどの「貸家」は約41万8000戸。相続税など節税対策による供給増を背景に、持ち家27万4000戸や分譲住宅26万2000戸と比べて約2倍の着工数となっている(*2)。

「金の卵」を期待して取得した不動産も、空室が埋まらず返済がかさめば、地獄のような負債になりかねない。賃貸ビジネスで勝ち抜くために、どんなマーケティングが必要なのか。今回は「物件購入後」に焦点を当て、マーケティング・広告制作が専門で不動産投資も行っている吉野明生さんの考え方を紹介する。

吉野さんは、築40年前後で300万~1000万円程度、高利回りの戸建てや区分マンションに狙いを絞って投資。地方都市郊外や駅徒歩45分など、一般的に客付け困難な物件も多いが、「この手法を使った結果、ほとんど空室期間なく、想定通りの入居者を獲得できています」と語る。

「マーケティングは、マーケット(市場)の競合(ライバル)とターゲット(見込み客)を見定め、サービスや商品を購入してもらう戦略立案プロセスです」。吉野さんが考える、マーケティングを取り入れた入居者を獲得するプロセスは5段階に分かれる。

■ステップ1:物件の特徴をキーワード化

マーケット(賃貸物件市場)で戦うには、まず「自分の物件の競合(ライバル)は?」を知ることが第一歩。吉野さんは賃貸不動産のポータルサイトで、自分の物件と同じ駅や条件を入力してヒットした物件50~100件程度と自分の物件との違いを整理し、キーワードにしている。

「たとえばヒットした物件が和室メインの間取りで自分の物件は洋室だけならば、『全室洋室』がキーワードになり得ます。一方、ヒットした他物件に洋室メインの物件が多ければ、逆に『和室が多い』がキーワードとなる。『ベランダなし』といった一見短所に見えることも、他の物件のほとんどにベランダがあるならキーワード候補に入れます」

吉野さんが実際に客付けに成功した物件をモデルに、マーケティングの方法を考えてみる。

○オレンジハイツ101号室(仮名)

<立地>
・ターミナル駅から電車で25分、駅から徒歩15分、郊外の住宅地
・近くにコンビニなし

<部屋特徴>
・2DK、43平米
・日当たりが良い
・和室メイン
・ベランダなし
・駐車場空きあり

「例えばベランダがないことが欠点だと思っても、女性の家族に聞けば「室内に洗濯物干しがあれば、女性が下着などを外に見えないように干せてかえっていいかも」と言うかもしれない。ならば1万円程度の室内洗濯物干しを取り付けるだけで「室内に洗濯物干し」が物件のキーワードになります」

物件に他と違う特徴がどうしても見出せない場合は、周辺の特徴をキーワード化する。近くにコンビニが全くない物件でも、大型スーパーが徒歩圏内で見つかった場合。コンビニがなくても自炊を好む人には、生鮮食品が豊富な大型スーパーの方が好まれるので、これをキーワードにする。

キーワードがある程度出てきた段階で、複数の不動産会社や家族、そのエリアや沿線を知っている知人などにこれらの特徴を伝えて、「この物件の他と違う特徴は何だと思う?」と反応を確認する。物件のどんな点がアピールできるのか聞き出せれば、自分の物件の特徴を見直すことができる。

○オレンジハイツ101号室(仮名)
<キーワード> 変更前
・日当たりが良い
・間取りは広め
・和室が多い
・ベランダなし
・コンビニなし

<キーワード> 変更後
・日当たりが良い
・和室
・洗濯室内干し可能
・間取りは広めでキッチン収納多め
・近隣に食材豊富な大型スーパーあり

周囲の人に反応を確認した際に、例えば自分の物件が和室メインで、不動産会社では「洋室にリフォームすれば? 今の時代やっぱり洋室が受けるよ」などと助言を受けるかもしれない。

しかし、吉野さんは「最初から『良い』『悪い』の判断をするのは早計です」と強調。「入居者の価値観が多様化している現代の賃貸市場で、どちらがいいかを即断するのはリスクもある。例えばファミリー物件なら、乳幼児がいる家庭では子供がハイハイしたり立ち上がって転んだりしても安心な和室が好まれることもあります。そういった層は確実に存在するし、内見者が出会った他の物件が洋室なら、和室であることが決め手になり得るんです」

■ステップ2:入居者の絞り込み

複数のキーワードを発見したら、それらをつなげる1つのキーワードを考えてみる。すると、たとえば前述の「コンビニなしで近くに大型スーパーあり」の物件なら、「自炊をするタイプの女性」や「料理が好きな女性」のような入居者をイメージすることができる。

「ただし、肝心なキッチンがこうした女性に好まれないタイプの仕様なら、物件の仕様かコンセプトを再度検討します。この場合もキーワードをコンセプト化する過程で、高額なキッチン取り替えに固執する理由がなくなる。たとえば『カウンターだけ購入し、キッチンを隠し収納は増やす』など検討の幅が広がるんです」

「イメージした入居者」が好みそうな文言に書き換えることで、短所が短所でなくなるという考え方だ。

○オレンジハイツ101号室
<コンセプト>
自炊を楽しみたい女性向けのお部屋

<アピールポイント>
・広めのキッチンでカウンターは収納たっぷり
・近くに大型スーパーあり
・洗濯室内干し可能
・明るく落ち着く和テイスト

【POINT!「日当たりが良い」がセールスポイントにならないケース】
地元の不動産会社がお客向けの広告(紙のマイソクやインターネット上ポータルサイトでの文言)で「日当たりがいい」ことを決まり文句にしているケース。近隣の類似物件を複数内見した人には、特別な点とは認識されない。逆に「日当たりが良い」ことが珍しいケースでは、差別化になるので謳うべし!

【POINT!「ニッチマーケット」もキーワード化】
「料理が好き」「ペット可」「楽器演奏可」「SOHO可」「外国人可」など。例えば事例の物件を「SOHO可」とし、店舗募集サイトに登録することで、和室がある店舗を探していた着付け教室主催者が借りてくれるかもしれない。

このように、キーワードとあわせて入居者の層をイメージしていく。年齢や職種、性別など特定の人物像まで浮かべばベスト。ほぼターゲットは絞られたことになる。

■ステップ3:物件と家賃の適正化(家賃の決定、設備などの決定)

入居者像を想定できると、戦略が立てやすくなる。ステップ2で想定した入居者層で、「その○○さんは、家賃をどのくらい払えるだろうか? 初期費用は? どんな部屋の条件を好むか?」というところまで考えてみる。

「例えば週刊文春を愛読する弁護士事務所勤めのKさんを思い浮かべてみます。Kさんはベンツに乗っており、コーヒーはルノワール。年齢は40代、年収はおそらく1000万円。Mac Fan の愛読者のMさんはスターバックスでコーヒーを購入し、30台の外資系IT社員、年収800万円……といった感じです」

このように、誰かあてはまる人のタイプまで思い浮かべることができれば、その人が選ぶ家賃と初期費用の価格帯が想定しやすくなる。そうなればリフォームにどのくらい費用をかけるか? も考えやすい。

○オレンジハイツ101号室(仮名)
<入居者イメージ Aさん>
・女性シングル(または共働き夫婦)
・子供はいない(または乳幼児程度の年齢)
・20~30代
・自炊が好き
・読む雑誌 オレンジページ(料理雑誌)
・車 中古のミニ
・職業例 介護系など団体職員

「ここまでイメージできれば、外観など物件のその他条件も加味し、ただ料理が好きなだけでなく、家庭的で安定志向、節約家の女性で、例えば介護系職員や団体職員のような職業の方であろう、など膨らませやすくなります。ならばキッチン周りに集中したリフォームでそれ以外はコストをかけず、心理学的に落ち着きを持たせるとされるグリーン系のアクセントクロスを貼るにとどめて、家賃は抑えめにするのが得策、というふうに方針が的確でまとまりやすくなるんです」

<リフォーム案>
・洗濯室内物干しフック:1万円
・キッチンは既存のものを利用する代わりにキッチンカウンターを設置:2万円
・クロス交換 白メイン、落ち着きあるグリーン系のアクセントクロス:5万円
・20~30代女性に受ける和室用・和モダン柄襖と和紙照明:計2万円

■ステップ4:サービスの適正化(広告費、礼金、敷金、フリーレントの決定)

入居者イメージ(ターゲット)が明らかになれば、リフォームせず初期費用ゼロにする方がいい、などサービス面も決めやすい。「例えば、『収入は少ないが安定した職業についているHさんなら家賃は割り引いて礼金ゼロ・敷金1カ月のまま』『収入も安定しているKさんならこれら全て割引なしでフリーレントだけつける』といった具合です」

○オレンジハイツ101号室
<家賃、広告費、礼金、敷金など>
・家賃は相場より安く設定する
・礼金、敷金を1カ月のままに
・保証人不要(保証会社必須)
・時期や反応を見て必要ならばフリーレント1カ月をつける

■ステップ5:広告の適正化(募集不動産会社の選定・キーワードの共有)

○オレンジハイツ101号室(仮名)
<募集不動産会社>
・2~3駅隣の駅やターミナル駅で募集
・女性の担当がメインの賃貸不動産会社

「例えば前述の例として、室内洗濯物干しがいかに若い女性にとってメリットがあるか説得するなら、年配男性の担当者より若めの女性の担当者の方が共感を得やすいでしょう。2~3駅隣の駅やターミナル駅の不動産会社を訪れて『なんで最寄駅で依頼しないの?』と断られた場合は、物件を扱ってくれる不動産会社を見つける努力をしなければなりません。不動産会社や担当者との相性もあります」

キーワードで検索したり、知人に聞いたりして、コンセプトを理解し共有できる不動産会社が見つかれば、より決まりやすい内見者を連れてきてくれる可能性が高くなる。吉野さんの物件は全て築40~50年だが、高所得層も周辺に住むエリアの物件だけは「ブルータス」の読者をイメージし、建築デザイナーに依頼してリノベーションした。

■最後は、キーワードを共有できる不動産会社にかかっている

いくらオーナーが頭の中でキーワードから入居者のイメージをシュミレーションしても、不動産会社と共有できなければ意味がない。賃貸オーナーがアピールしたいキーワード(前述の例では室内洗濯干し)を広告に一言も書かないだけでなく、「ベランダがないのは欠点ですね」などとネガティブな内容として内見者に伝えることはありがちだからだ。

「初めは物件のコンセプトを理解してくれる不動産会社探しに苦労しましたが、以前設計をやっていた社長のいる不動産会社が物件に惚れ込んでくれて以降は、客付けのために努力したことは一度もありません」と吉野さん。「自分が探り当てたキーワードを理解できるような柔軟性のある不動産会社を選び、事前にまとめたコンセプトを理解してもらう工夫や熱意が必要で、ここまでくれば成功まであと一歩。さらに関連づけて『この物件はこういう人に』と印象づけられれば、ピッタリな人が現れた時に『あの物件』と即座に紹介してもらえて効果的だ。

(*1)ロバート・キヨサキ「金持ち父さん貧乏父さん」筑摩書房 p198
(*2)国土交通書「平成29年11月の住宅着工の動向について」
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:1月21日(日)20時00分

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