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仕事でミスを連発する人は「トヨタ式」に学べ

1月14日(日)8時00分配信 東洋経済オンライン

「以後、気を付けます」だけでは不十分です(写真:tomos / PIXTA)
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「以後、気を付けます」だけでは不十分です(写真:tomos / PIXTA)
 どんな仕事でもすべて完璧な人はいません。人間である以上、ミスはつきものです。ただ、同じミスを何度も繰り返す人は、仕事に対する責任感が希薄と言われても仕方がありません。

 慣れない仕事や初めての仕事であれば、「初めてのミス」は大目に見てもらえますが、慣れた仕事で何度も同じミスを繰り返すのは、「初めてのミス」にしっかりと向き合うことをせず、「初めてのミス」から教訓を得ていないからです。

 たとえば、「初めてのミス」をしたとき、こんな言い訳をする人がいます。
 「忙しいのに『早めに頼む』とせかすからミスをしてしまった」

 「やったことのない仕事をやらせた上司が悪い」

 「ミスといってもたいしたミスじゃないんだから上司もあんなに文句を言わなくてもいいのに」

 たしかにミスは誰しもするものですが、ミスをこのように「他人のせい」にしてしまうと、ミスと真摯に向き合うことができないため、当然「反省」と「対策」もできなくなってしまいます。結果、同じようなミスを何度も繰り返すことになるのです。
 反対に「初めてのミス」であっても、このように考えることもできます。

 「どうしてミスをしてしまったのだろう?  どこに問題があったのか考えてみよう」

 「どうすれば今回のミスを防ぐことができたのだろう?」

 「同じようなミスをしないために対策を考えなきゃなぁ」

 このようにミスを「他人のせい」ではなく、「自分の責任」ととらえて、その理由を突き詰めていけば、次にどうすれば同じミスを防ぐことができるかを考えることができます。
■トヨタは異常があればすぐに生産ラインを止める

拙著『トヨタだけが知っている早く帰れる働き方』でも詳しく解説していますが、トヨタ式で大切な考え方の一つに「異常があれば生産ラインを止める」があります。ものづくりをしていれば異常(不良ができる、機械の故障、作業ミスなど)が起きるのは当たり前であり、「異常が何もない」ということはむしろ「異常を隠している」のではないかというのがトヨタ式の考え方です。

 製品の組み立てを人間が行う以上、体調が悪ければミスをすることもありますし、機械だって日頃の整備を怠れば故障することもあります。あるいは、協力会社から納品された部品に問題があることも考えられます。
 言わば、異常は当然のように起こるだけに大切なのは異常が起こったときにどう対処するかなのです。たとえば、不良が出たときに企業によっては不良品を脇によけておいて、あとで手直しをしますが、トヨタ式では不良が出たときにはすぐに生産ラインを停止して、「なぜ不良が出たのか」をその場で徹底的に調べたうえで、二度と同じような不良が出ないように改善を行います。

 これがトヨタ式の「異常」に対する対処法です。ポイントは、
 (1)その場ですぐにミスの原因を調べる

 (2)二度と同じミスが起きないような改善を行う

 の2つになります。

 たとえば、不良が出たときに、不良品を脇によけて、そのまま生産を続けたとすれば、たしかに生産そのものは順調に進みますが、不良ができた原因はそのままなので、再び同じ不良が出る可能性がありますし、場合によってはさらに大きな不良につながる恐れもあります。

 原因についても「あとで調べよう」と思ったとしても、時間が経ってからでは、「不良が出たそのままの状態」は残されていないため「真の原因」を見つけるのは困難です。結局は、「もっとみんな作業に集中して」「みんなで不良が出ないように気を付けよう」といったたいして役に立たない精神論に終わってしまいます。
 これでは不良を完全に防ぐことはできません。だからこそ、トヨタ式は不良が出るといった異常があればすぐに生産ラインを止めて、その場で徹底的に原因を調べるのです。そのうえで改善を行えば、同じ異常は二度と起こらないようにすることができるのです。

■「気を付けよう」ではミスの再発は防げない

 「初めてのミス」にもこうした厳しさや徹底が必要です。大きなミスであれば、誰でも反省しますし、二度と同じミスをしないために対策を考えようとします。ところが、小さなミスや初めてのミスの場合は「なぜミスが起きたのか」といった原因解明に時間をかけることはなく、「以後、ミスをしないように気を付けます」という対策とは呼べない対策で片づける傾向があります。
 しかし、実際には小さなミスにも初めてのミスにも必ず何らかの原因があるはずです。

 私の知るA社で顧客に3枚の書類を送るところを1枚違う書類を入れるというミスが起きました。書類を入れる作業を担当したのが新入社員であったため、最初は「作業に慣れていなかったため」ということで片づけようとしました。

 「慣れていないんだから仕方がないね、これからはみんなで気を付けようね」という解決策です。

 ミスをしたとき、しばしば使われるのが「これからは気を付けようね」です。たしかにどんな仕事にも「気を付ける」ことは必要ですが、どれほど気を付けたとしてもミスは起こるものです。
 たとえば、工場の生産などで部品を取り付ける際にたくさんの部品が乱雑に置かれている箱から必要な部品を取り出して取り付けるためには「選ぶ、判断する」という過程が必要なため、余計な注意力が求められます。

 これでは人によって、あるいはその日の体調によって作業にバラつきが出るのは仕方のないことです。このようなミスを防ぐためには、1回の作業に必要な部品を必要な数だけ箱に入れ、並べ方も統一して、作業をする人はただ部品を手に取って、そのまま付ければいいように改善すればいいのです。そこには「選ぶ」も「判断する」もありませんから、たとえ「気を付けていなくても」ミスをする確率は減ることになります。
 つまり、「気を付けて」に頼るかぎり、ミスをなくすことはできませんし、「気を付けて」を対策として認めるかぎり、同じようなミスは何度も繰り返されるのです。

 A社では「気を付けて」以外の対策を考えようと、「なぜミスが起きたのか」を調べたところ、原因は新入社員以外のところにありました。書類の封入作業は午後一番に行われ、その日の夕方までに投函することになっていました。そのため、封入する書類は遅くともその日の午前中には作成して必要な枚数をコピーすることになっていましたが、午前中、担当者に急ぎの仕事が入ったため、3枚の書類のうち2枚しか作成できず、1枚は午後にずれ込んだのです。
 つまり、午後一番から封入作業を予定していたのに書類は2枚しか用意できておらず、作業に入ることができませんでした。午後になって担当者は慌てて残り1枚の書類の作成に取りかかりましたが、あまりに急いだため間違った書類を作成してしまいました。封入作業に必要な時間と投函の時間を考えれば、まさにぎりぎりでした。そのため、担当者の上司もしっかりと確認することなく、そのまま封入作業に回してしまいました。

 「書類を3枚封筒に入れて時間までに投函してください」という指示しか受けていない新入社員に書類が正しいか間違っているかを判断できるはずもありません。
 その結果が書類の封入ミスでした。もし「気を付けよう」で片づけていれば、こうした「真因」にたどり着くことはなかったでしょう。

■「ミス再発防止ノート」を作成しよう

 小さなミスや初めてのミスにも必ずどこかに原因があるのです。その原因をしっかりと究明することなしに、「これからは気を付けて」「仕事のときはしっかり集中して」と言うだけでは小さなミスはやがて大きなミスになり、初めてのミスは何度も繰り返すミスになっていくのです。
 こうした取り組みはトヨタ式のように本来は全社で行うことが理想ですが、それが無理ならミスをするたびに「ミス再発防止ノート」を自分なりに作成することをおすすめします。

 たとえば、初めてのミスであれば、どうしても慣れていなかったり、十分な指導を受けていなかったりしたという理由も考えられますが、だからといって「慣れていなかった」「教えてもらっていなかった」という理由だけで納得するのではなく、

 □どんなミスをしたのか
 □なぜミスが起きたのか

 □ミスを防ぐために はどんな対策が考えられるのか

 といった点について考えて、ミス再発防止ノートにまとめるといいでしょう。

 初めてのミスの場合、「どんな対策が考えられるか」といっても、自分1人では思いつかないケースも考えられますが、その場合は上司や先輩に相談をして、「注意すべきポイント」や「作業のコツ」などを教えてもらうと今後の参考になります。

 初めてのミスに比べて、「同じミスを繰り返す」場合は、より真剣に「ミスに向き合う」ことが必要です。たとえば、約束の時間にいつも遅刻するとか、資料作成がいつも締め切りに間に合わないといったミスを繰り返すようでは、誰も「仕事を安心して任せる」ことはできません。
 こうした人はミスをしても「すみません」の一言で片づけます。「なぜミスを繰り返すのか」「どうすればミスを防げるのか」を真剣に考えていないことがミスを繰り返す最大の原因です。もちろんミスをして、上司や先輩に注意されたときは「反省」するはずですが、頭の中で反省するだけではなく、ミス再発防止ノートを開き、文字にすることでより冷静に、そしてしっかりと考えられるようになります。

 再発防止策についても、上司や先輩から言われて「いやいや」やるよりも、自分で考えるほうが納得している分、実行に移しやすいし、ミスを前向きな教訓にしようと考えることもできます。
 約束の時間に遅刻したといった小さなミスでも、しっかりとミス再発防止ノートに記入しましょう。遅刻一つとっても、「前の予定が押して出発が遅くなった」「初めての場所で道に迷ってしまった」「予想以上に乗り換えに時間がかかってしまった」「事故の影響で電車が遅れた」といった理由があり、「場所や電車の乗り換えなどを事前にしっかり確認する」「少し余裕を持ってアポイントを取り、動くようにする」などの対策や、「遅れそうなときには早めにお客さまに連絡をする」といった注意点を書き込むといいでしょう。
 いずれも「当たり前のこと」ばかりですが、ミスというのはこうした当たり前のことを疎かにすることで起こることがよくあるものです。

■「ミスの見える化」でモレやヌケ防止を

 ミス再発防止ノートと並んで効果的なものとして、書類の作成などでミスをした場合、書類の現物をコピーして、赤のマーカーなどで「ミスをした場所」や「注意すべき場所」を丸く囲むやり方もあります。

 たとえば書類を作成した際、「日付」や「出席者」「件名」など、間違えたところを赤で丸く囲みます。こうした書類は使いまわしすることもあり、よく直し間違いが起きます。「見積書」の桁違い、「企画書」のページ抜けなども、同様です。
 言わば、「ミスの見える化」です。

 トヨタ式を導入しているある企業が「ゴミゼロ」の実現に向けて、ゴミの分別を徹底しようとしたときのことです。

 工場などで作業をしている人にとってゴミの分別は手間のかかる厄介なものです。何をどこに捨てればいいかの確認も大変です。

 そのため最初はほとんどの人が「これはどこに捨てていいかわからないや」といちばん近いボックスなどに捨てることがよくありました。ゴミゼロ推進委員会のメンバーは最初は「何をどこに捨てるか」を文書にして各部署に配布したり、貼り出したりしましたが効果はありませんでした。細かく書かれたものを読むのが面倒だからです。
 そこで、ゴミゼロ推進委員会のメンバーは分別用ボックスの中身を点検、間違って捨てられたものの写真をとり、写真と一緒に「これはこちらのボックスへ」と貼り出すようにしました。

 みんなが間違える度に、間違いやすいものを「見える化」して、もし迷ったときはその写真を見ればすぐにわかるようにしたのです。

 最初はそれでも「面倒だから」と適当な捨て方をする人もいましたが、毎日、根気よく続けていくうちにみんなの「ゴミゼロ」への理解も深まり、ほとんど間違いはなくなりました。それでも迷うときには新たに設置した「? ボックス」に捨ててもらい、同じように「見える化」を続けることにしました。
 ミス再発防止ノートに文字で書くだけでは不安のある人や、あるいは書いたにもかかわらず同じようなミスを繰り返す場合は、自分のミスを「見える化」することをおすすめします。

 たとえば、「書類の日付を間違えた」「書類の宛名を書き間違えた」「見積書の計算ミスをした」といったミスを「見える化」しておけば、自分なりのマニュアルにもなりますし、一種のチェックシートにもなります。

 大切なのは小さなミスや初めてのミスであっても、「うっかりしていた、これからは気を付けよう」の一言で片づけないことです。ミスの原因を調べて、対策を考え、時には自分のミスを「見える化」するといった作業を丹念に繰り返すことでミスは着実にゼロに近づけていくことができるのです。
■「失敗のレポート」で失敗をみんなの共有財産にする

 ミスをどのようにとらえ、ミスにどう向き合うかによって企業のありようは大きく変わってきます。ミスを許さず、ミスをした人の責任を厳しく追及するだけで、ミスを活かそうとしない企業では、ミスをする恐れのある新たな挑戦をしようとする人が現れることはありません。

 一方、トヨタ自動車という企業の特徴は「ミスは仕事の質を向上させるチャンス」と前向きにとらえ、たとえ大きな失敗をした社員に対しても「失敗の記録」をつけることで当人だけでなく、みんながその失敗から教訓を得るところにあります。
 そこにあるのは、「ミスはより良いものをつくるためのチャンス」であり、「ミスは社員にとっての成長のチャンス」という考え方です。

 あるとき、若いトヨタマンAさんが部品開発のために必要な機械をアメリカの工作機械メーカーに注文しました。今と違ってインターネットなどない時代ですから、情報収集にも限界がありました。正式な稟議を経ての注文でしたが、いざ機械を使い始めてみると、いくつもの問題が見つかりました。

 改良にはさらなる費用と時間がかかります。上司からは「お前が何とかしろ」と突き放されたAさんは仕方なく、当時、開発部門の責任者で後にトヨタの社長、会長を務めた豊田英二さん(2013年没)のところに謝罪に行きました。
 Aさんは英二さんから「それで、その実験の理屈はわかったか?」と聞かれ、「わかりました」と答えると、英二さんは「わかればいい。その失敗はお前の勉強代だ」と言って、決して叱ることはありませんでした。

 準備をした結果、挑戦した結果の失敗は許されます。ただし、勉強代は「1人」ではなく、「みんな」のものであることが必要でした。英二さんはこう言っています。

 「社内では、失敗してもいいから思い切ってやれと言っている。そして、その失敗のレポートを書いておけと言っている。それを書かないで、ただ覚えているだけだと次の世代まで伝わらないからだ」
 たとえ小さな失敗でも、二度と同じ失敗を繰り返さないように、失敗の理由と対策を書類に書いてみんなが共有できるようにするのがトヨタのやり方です。そうすれば、失敗した当人にとって成長の糧になるだけでなく、みんなが同じような失敗を避けることができるし、みんなが失敗を糧に成長できるのです。

■3つの姿勢で臨む

 ミスや失敗に対しては、次の3つの姿勢で臨むのが肝要と私は考えています。

 (1)ミスや失敗をしたときは責任追及よりも原因追究を重視する
 (2)ミスや失敗を隠すのではなくみんなに見えるようにする

 (3)ミスや失敗に対して「気を付けろ」ではなく、「ミスや失敗をしたくてもできないほどの改善」を行う

 案外難しいのが2番目の「みんなに見えるようにする」です。

 特に大きなミスのときと、同じミスを何度も繰り返したときは上司やお客さまからの厳しい叱責を恐れて、ついミスを隠したいという気持ちになりがちです。

 ミスをすると、「あいつは使えない奴だ」「またミスをして本当に仕事ができない困りものだ」という烙印を押されることがあります。仕事をするうえで上司やお客さまにこうした烙印を押されてしまうと、その後の仕事にも大きく影響します。
 そのため「できればミスを隠したい」と考える人が少なくありませんが、ミスは「隠すと何倍にもなって跳ね返ってくる」ものです。信頼を失いたくないつもりが、かえって信頼を失う結果を招くのです。

 そればかりかミスが起きて「すぐに」上司に報告していれば事なきを得ていたはずのものが、あとになってミスがわかり、そのときにはもはやできることがないという最悪の事態を招くこともあります。

 トヨタ式が大切にしていることの一つは「バッド・ニュース・ファースト」です。どんな小さなミスや異常でも「隠す」とか「あとで何とかする」のではなく、「すぐに」「みんなに見える」ようにしてこそ、ミスや失敗は「より良いもの」をつくるチャンスになり、その人だけでなく、みんなの成長の糧になるのです。
■失敗したときには「失敗した」と大きな声を出せ

 トヨタ式を実践しているある企業の経営者は新入社員研修でいつもこんなことを言っていました。

 「もし仕事で失敗をしたときは、みんなに聞こえるように大きな声で『失敗した』と言いなさい」

 新入社員にとって仕事の多くは経験したことのないものですから、当然そこにはミスや失敗が起こります。そんなとき、「こんな失敗をして怒られたらいやだなあ」などと考えたり、「このくらいの失敗ならいいか」と学生気分が抜けないまま、失敗を隠すようなことがあるとあとあと悪い習慣になって困ります。
 そうならないためにも経営者は、失敗の大小にかかわらず、失敗したときは「失敗した」と周りのみんなに聞こえるように言いなさい、と教えたのです。

 そうすれば、周りの先輩や上司が「何やってんだ」くらいは言うかもしれませんが、「ここはこうすればいいんだ」と助け船を出してくれるというのです。

 大切なのは失敗をしたときに決して隠すとか、自分1人の力で何とかしようとしないことです。仕事における失敗というのは1人では何ともならず、あがけばあがくほど問題が大きくなることがほとんどです。
桑原 晃弥 :経済・経営ジャーナリスト

最終更新:1月14日(日)12時14分

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