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ついに国民の4割が「肥満」になった米国の末路

1月14日(日)13時00分配信 東洋経済オンライン

米国人の4割が肥満だという(写真 : tomwang / PIXTA)
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米国人の4割が肥満だという(写真 : tomwang / PIXTA)
 通商交渉で攻撃的な姿勢を取り、オバマ政権で導入された規制を根こそぎ廃棄しようとしている米トランプ政権。世界を覆う肥満問題への対抗策も、その犠牲者となりそうだ。肥満者の割合は急上昇している。放置すれば、ここ数十年にわたって目覚ましい改善を見せてきた世界各国の健康状態や平均寿命は、停滞どころか悪化に転じるおそれすらある。

 現代のグローバル資本主義が抱える矛盾の1つは、8億人以上が飢えているのに対し、推計7億人(うち1億人は子ども)が肥満だということだ。
■女性の平均体重は1960年代の男性の平均とほぼ同じに

 米疾病管理予防センターの最新推計によれば、米国人のなんと4割が肥満だという(BMI〈体格指数〉が30以上の人を肥満と定義)。12~19歳の若者の2割が肥満であり、米国人女性の平均体重(75キログラム)は1960年の米国人男性の平均とほぼ同じか、それを上回っている。

 1960年の女性の平均体重は約63キログラム。現在の米国人男性の平均体重は約88キログラムだ。この間、米国人の平均身長は2.5センチメートルしか伸びていない。同様のことは世界中で起きており、肥満者の割合は欧州、南米、そして中国でも上昇している。
 肥満によって2型糖尿病、心臓発作、特定の種類のがんのリスクが著しく高まることを示す証拠は豊富に存在する。関連医療費は驚くべきもので、米国だけで推計年間2000億ドル(約22兆円)近い。肥満児の割合が世界的に上昇する中、将来の成人人口における健康問題は大幅に悪化することが懸念されており、医療費は大きく上昇する可能性が高い。

 肥満の原因は多様かつ複雑だが、多くのエビデンスが示唆するのは、加工食品重視の文化や座ったままでいることの多いライフスタイルが問題の核心にあるということだ。
 栄養についての啓蒙活動の改善に乗り出している政府は多い。しかし残念ながら、こうした政策努力は、加工食品・ファストフード業界の広告宣伝や、これら食品を全世界に売り込もうと画策する米国の業界ロビー活動を前にかすんでしまっている。

■子どもをターゲットにした広告は規正必要

 1993年の北米自由貿易協定(NAFTA)締結以降、メキシコの成人肥満率が上昇した事実は見逃せない。同協定の下で行われた加工食品産業への直接投資や広告宣伝の増加は、肥満を誘発する重大要因となっている。メキシコでは、糖分を多く含む清涼飲料水の消費は1993年から2014年の間に3倍近くに増加した。同じくNAFTA加盟国のカナダでも肥満率は上昇している。米国からの輸入によって果糖価格が急激に低下したことが一因となっているのである。
 政府の対策が緩慢なのは残念だ。肥満対策の啓蒙活動は、あまりにも長期間、摂取カロリーを機械的に制限することに集中しすぎていて、食品の種類によって食欲に与える影響が劇的に違うことを考慮していない(これは米ハーバード大学医学大学院のラドウィグ教授が著書の中で強調している点だ)。

 啓蒙活動に加えて、子どもをターゲットにした広告にはさらに強い規制をかけるべきだ。人生の早い段階で肥満になると、生涯にわたって続く問題へと発展しかねない。さらに、ラドウィグ教授、米タフツ大学のモザファリアン教授、筆者の3人は、加工食品にも課税することを提案している。
 だが、トランプ政権はオバマ政権の政策を解体するのに忙しく、この政権に肥満対策を期待するのは幻想というものだろう。だからこそ、米国と新たな貿易協定を結ぼうとしている国(EU〈欧州連合〉離脱後の英国やNAFTA再交渉後のカナダなど)は警戒せねばならない。貿易協定の条項によって、肥満との戦いで自らの手を縛ることになりかねないからだ。
ケネス・ロゴフ :ハーバード大学教授

最終更新:1月14日(日)13時00分

東洋経済オンライン

 

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