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塗装業者が入居者のベランダに勝手に侵入したら

12月13日(水)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
今回のご相談は、入居者から、外装塗装工事を行っていた業者が許可なくその入居者のベランダに入ったらしく、そこに置いていた物がぐちゃぐちゃになっていた上、洗濯物に複数回の切り込みが入っていたという連絡を受けた場合の対応です。

■相談者の質問

所有するアパートの外壁塗装の工事を行ったところ、業者さんが許可なく入居者のベランダに侵入していたようです。ベランダに置いてあったもの(物干し竿やすのこなど)がぐちゃぐちゃになっていただけでなく、洗濯物に複数回切り込みが入っていたと入居者から連絡がありました。大家としてどのように対応すべきでしょうか?

■まずは事実の確認を

今回のご相談はあまり聞いたことのないような話で驚きますが、そんなこともあるのですね。洗濯物に、「ついうっかり」切り込みが何度も入ってしまうとなどいうことは通常考えられません。したがって、もし切り込みが事実なら、過失によるものではなく、いたずらや嫌がらせなどの故意による損壊行為の可能性が高く、悪質です。

さて、入居者から連絡を受けた大家としては、事実を確認しなければなりません。まずは、入居者のもとに行き、「ぐちゃぐちゃ」になったというのは具体的にどういうことなのかを把握します。

整理して置かれていた物が乱雑になっていたということなのか、それだけでなく物干し竿やすのこが壊れてしまっているのかは、損害賠償の要否にもかかわってきますので重要です。

洗濯物についても、実際に切り込み入ったものを見せてもらって、切り込みの程度や、刃物など鋭利な道具できれいに切られている状態なのか、それとも何かに引っかかって切れてしまっている様子なのか、などを把握します。

入居者の苦情どおりの状態が確認できた場合には、今度は業者に入居者からの苦情の内容と実際の状況を伝えます。

ベランダに入ったのか、外装塗装のためにベランダに入る必要があったのか、ベランダに入ることについて入居者に承諾を得ていないのか、ベランダに置かれていた物を動かしたのか、洗濯物に切り込みを入れたか、切り込みは入れていなくとも洗濯物に触ったかなどについて、業者の言い分をきくことになるでしょう。

■依頼業者には損害賠償責任がある

入居者の苦情どおりなら、業者には、承諾なく勝手にベランダに侵入してプライバシーを侵害したことや、入居者の財産である洗濯物に切り込みを入れたことなどついて、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。

業者が非を認めて入居者に謝罪するなどして事が丸く収まればそれに越したことはありません。しかし、入居者の苦情どおりの内容が確認でき、そのことについて業者に責任があるにもかかわらず業者が適切に入居者に対応しない場合、大家はどのようにすべきでしょうか。

大家には賃貸借契約に基づき物件を修繕すべき義務などがある

大家と業者とは、工事の発注者と受注業者という関係しかありませんから、業者が入居者に対して不法行為を行ったとしても、そのことを理由に大家に不法行為責任を問うことは困難です。

しかし、大家と入居者との間には賃貸借という契約関係があります。賃貸借契約により、大家は入居者に対して、物件をその目的に応じて使用させる義務を負います。そして、この物件を使用させる義務には、物件を入居者に引き渡すだけでなく、引き渡した後に入居者の使用に支障が生じない状態に維持することも含まれます。

賃貸人は賃貸物件を修繕すべき義務があるとされますが、その修繕義務は物件を契約目的にしたがって貸すという義務から当然に導かれるものなのです。

ところで、外壁塗装工事は、外壁に破損が生じて雨漏りのおそれがあるためにその補修として行われる場合もありますが、修繕の必要はなくとも、壁の汚れや変色に手を入れて美観を維持するためや、劣化の予防のために行われることもあります。

後者の場合は修繕義務としての工事とはいえないかもしれません。しかしこのような工事も、物件の保存の必要から行われるものであり、入居者との関係においては、賃貸借契約に基づくものと捉えることができます。

■業者を利用した大家に責任はあるか?

契約上の義務(債務)の不履行に基づく責任は、自ら行った行為について生じるのであって、原則として他人の行為についてまで責任を負う必要はありません。

しかし、修繕などの義務を履行しようとする場合、自分で行うこともできますが、業者(第三者)に頼んでやってもらうことが実際には多いはずです。契約上の義務を履行するためにこうした業者等の第三者を使った場合、その第三者の行為による債務不履行についても本人の責任を認めるべきだとする考え方があり、「履行補助者の故意過失」といいます。

履行補助者とは、債務者が債務の履行のために使用する者のことを指します。債務者は、自らの故意過失に基づく責任だけでなくこれと信義則上同視できる場合も責任を負うべきであり、履行補助者を使った場合は、債務者は自分自身の行為によって債務不履行が生じた場合と同様に責任を負うべきだとされるのです。

この考え方をそのままご相談のケースに適用すると、外装塗装工事は賃貸借契約に基づき使用させる義務あるいは修繕義務の履行のために行われたものであり、業者が行った債務不履行についても大家は責任を負うべきだということになります。

大家は、外装塗装工事に際して、入居者の権利や財産を不当に侵害することなく適切に行うべき義務があるのに、業者の行為によってこれを怠ったことになるわけです。

しかし、履行補助者の故意過失の考え方については、責任を問われるべき履行補助者の範囲や、どこまで本人に責任を負わせるのが妥当かなど、学説の上でも議論があるところです。

私としては、業者を頼んだのは大家だからといって、その業者による債務不履行について常に大家が責任を負うべきだとするのは行き過ぎだと思います。工事業者は大家とはまったく独立した業者であす。したがって、大家としても一旦工事を頼んだ後は、その工事の手順や方法などは業者に一任せざるを得ず、監督なども実際上できません。そして、工事を行うにあたっては、他人の権利や財産を侵害しないよう適切に工事を行うべきことは当然のことです。

大家はそのように工事が行われることを信頼して業者に業務を発注するのであって、工事をいわば利用して不法行為が行われることまで予期することはできません。このような場合は、大家として入居者に物件を使用させる契約上の債務を履行するための第三者の利用の範囲を超えており、大家に債務不履行責任を負わせるのは公平を欠くと思います。

■大家としての対応

苦情を受けて間に入る大家は大変ですが、慌てることなくまずはできる限りの事実確認をした上で、業者が保険に加入していればそれが使えないかなどを含め、三者で円満に解決するよう努めるのがよいでしょう。

損害賠償義務があるのに業者がなかなかこれに応じようとしない場合、大家自身には入居者に対する法的な責任はなくても、入居者と良好な関係を保つために業者に代わって損害賠償を行うことも考えられます。

この場合、大家は業者の債務を立替払いしたことになりますから、その分を業者に請求することができます。もし工事代金の支払いが済んでいなければ、工事代金と立替払いした額を相殺して残額だけを業者に支払うことも可能ですから、そうした対応も検討してみてください。
鷲尾 誠

最終更新:12月13日(水)20時00分

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