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投資信託、純資産総額の「適正規模」を考える

11月21日(火)13時31分配信 会社四季報オンライン

(写真:スミスジョージ / PIXTA)
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(写真:スミスジョージ / PIXTA)
 投資信託の規模を示す数字に「純資産総額」がある。ファンドに組み入れられている資産の時価総額のことだ。一般的に、純資産総額は小さいよりは大きい方が良いとされる。

■ 純資産総額が小さいと、何がダメなのか

 なぜ、純資産総額が小さいとダメなのか。まず、十分に分散の効いたポートフォリオが組めなくなる恐れがある。運用資産が少ないと、投資できる銘柄に制約が生じてしまう。

 次に、純資産総額が小さいと、繰上償還されるリスクが高まる。繰上償還とは、信託期間が終了する前、あるいは信託期間が設けられていない無期限のファンドでも、償還されてしまうことだ。なぜ、繰上償還するのかというと、純資産総額が小さいファンドを運用し続けても、投資信託会社として収益につながらないからだ。

 投資信託会社は「信託報酬」といって、ファンドの純資産から日々、一定率の信託報酬を受け取っている。たとえば年間の信託報酬率が年0.75%で、純資産総額が100億円だとしたら、その0.75%だから7500万円が1年間で受け取れる信託報酬になる。これを365日で割った日割りの額が、日々、信託財産から自動的に差し引かれていく。

 当然、純資産総額が大きなファンドほど、投資信託会社としては儲かるわけだが、中には10億円にも満たないような小規模ファンドも存在している。純資産総額の規模が小さいファンドは、信託報酬が少なくなるため、そこから各種経費を差し引くと、赤字になる恐れがある。投資信託会社は営利企業なので、赤字要因になるファンドの運用を継続したりはしない。

 これは大分昔に聞いた話だが、日本株を投資対象にしたアクティブ運用のファンドで、損益分岐点となる純資産総額は、ざっくり言って30億円程度という。当然、日々の資金の出入りを考慮すれば、出来ることなら50億円以上の純資産総額を持つ投資信託を選んだ方が、無難ということになる。

 なるほど。それでは、純資産総額は大きければ大きいほど良いのだろうか。
 確かに、純資産総額の規模が大きくなれば、十分に分散の効いたポートフォリオを組むことが出来るし、繰上償還リスクも無くなる。

 純資産総額が大きなファンドからランキングをしてみよう。ただし対象となるファンドは、DC向けやSMA向けを除いた、国内株式型の投資信託である。

 上位からフィデリティ投信の「フィデリティ日本成長株ファンド」、さわかみ投信の「さわかみファンド」、レオス・キャピタル・ワークスの「ひふみプラス」がトップ3となっている。

 なお、レオス・キャピタル・ワークスは、「ひふみプラス」と「ひふみ投信」が同じマザーファンドで運用されているため、実質的に両ファンドは同じと考えると、合計の純資産総額は3813億4000万円になり、フィデリティ投信の「フィデリティ日本成長株ファンド」、さわかみ投信の「さわかみファンド」を抜いてトップになる。いずれも純資産総額は3000億円を超える。立派なものだ。

■ 純資産総額が大きいからと言っても…

 ただ、純粋にパフォーマンスに着目した場合、純資産総額の大きなファンドが、必ずしも高い運用成績を上げているかというと、決してそうではない事実が浮かび上がってくる。

 上のランキング表は、同じくDC向けやSMA向けを除いた、国内株式型の投資信託を対象にして、過去5年間の騰落率が高いものから並べたものだ。純資産総額のランキングに入っているファンドは、5年間騰落率ランキングに1本も入っていない。
 つまり、純資産総額の規模が大きいからといって、運用成績が良くなるとは限らない。それと同時に、投資信託には投資対象によって、適正なサイズがあることも示唆しているのではないだろうか。

 5年間騰落率ランキングに入っているファンドの大半は、中小型株を投資対象にしている。中小型株の中には、確かに高い成長が期待できる銘柄もあるが、何しろ株式市場での出来高が少ないので、機動的な売買は難しい。

 もちろん中長期保有を前提にして組入銘柄を選定するとは思うが、ある日突然、大きな金額で解約が生じた時、解約資金を作るために組入銘柄の一部を売却しようとしても、銘柄の流動性が低いと、思うように売却を進められなくなる恐れがある。中小型株への投資が、運用成績に大きく寄与することが分かっていたとしても、流動性リスクを考慮すると、その組入を進めることが出来ない、というジレンマに陥っているかのようだ。

 確かに、純資産総額上位のファンドも、運用成績が悪いわけではない。ひふみプラスの過去5年間騰落率は237.6%にも達している。年平均47.52%というリターンは、十分に高い。

■ 上位20本の純資産総額に見る特徴

 が、アセットマネジメントOneの「新興市場日本株ファンド」の過去5年間騰落率は517.3%だ。年平均のリターンは103.46%にも達する。そして、その純資産総額は131億7000万円でしかない。他、騰落率ランキングに入っているファンドの純資産総額を見ても、上位20本の純資産総額は、多くても100億円から200億円が中心である。

 以前、日本の中小型株を主要投資対象とするアクティブ運用を担当しているファンドマネジャー5人に、「一番、運用しやすい純資産のサイズはどのくらいですか?」と質問したことがある。不思議なことに、5人の回答はほぼ同じで、200億円から300億円が適正規模だという。投資信託は、純資産総額の規模が大きければ良いというわけではない、ということだ。

 すずき・まさみつ●岡三証券の支店営業、公社債新聞社の記者などを経て独立。JOYnt代表を務める。金融ジャーナリストとして雑誌、書籍の執筆など多数。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鈴木 雅光

最終更新:12月4日(月)15時01分

会社四季報オンライン

 

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