ここから本文です

習近平氏が「絶対的権力」を得られない理由

11月18日(土)15時00分配信 東洋経済オンライン

党規約にその名前を冠する思想が盛り込まれた人物は、習近平氏のほか、過去に2人しかいない(写真:Jason Lee/ロイター)
拡大写真
党規約にその名前を冠する思想が盛り込まれた人物は、習近平氏のほか、過去に2人しかいない(写真:Jason Lee/ロイター)
 10月に6日間にわたって行われた第19回中国共産党全国代表大会。その閉幕に当たって、約2200人の代表は、習近平国家主席の思想を党規約に盛り込むことを決めた。習近平時代の始まりが公式に告げられたのである。

 党規約にその名前を冠する思想が盛り込まれた人物は、過去に2人しかいない。毛沢東氏と鄧小平氏だ。習氏の前に国家主席の座にあった江沢民、胡錦濤の両氏は、指導思想に自身の名前を入れることはなかった。
■2つの政治的勝利

 習氏の権力が、今や毛沢東氏や鄧小平氏といった重鎮中の重鎮に匹敵することは周知の事実だ。中国共産党指導部は明らかに、それを公認にしようとしている。

 今回の共産党大会で習氏は、象徴的な意味で中華人民共和国の創設者たちが祭られる殿堂の仲間入りを果たすことになった。加えて同氏は、2つの政治的勝利を手にした。まず、何よりも大きかったのは、後継者を指名しなかったことだ。これにより、2022年以降の3期目も、習氏が国家主席として続投する可能性が開かれた。
 政治力学は決定的に変わるはずだ。習派の政治家があらためて忠誠心を示す一方、習氏と一定の距離を保ってきた政治家も一気に習氏支持になびく可能性が高い。ライバルと見なされれば、徹底的に冷や飯を食わされるからだ。

 2つ目の勝利は、側近2人を共産党最高指導部である政治局常務委員会のメンバーに昇格させたことだ。習氏の最側近、栗戦書氏は全国人民代表大会(全人代)のトップに就任する。全人代はこれまで党の決定を形式的に承認する場でしかなかったが、習氏から直接指示を受けて立法計画を推し進める場となるだろう。
 実際、栗氏の全人代トップ就任は、習氏が政治的野心を達成するうえで、カギとなるかもしれない。国家主席の任期は2期までと憲法で定められており、これが習氏の野心を阻む最後の障壁となっている。

 たとえば「総書記」のように、習氏が共産党内で最高位の役職に就くのを阻むものは何もない。だが、中国の国家元首であり続けるには、憲法改正が必要だ。腹心の栗氏が全人代を掌握していれば、憲法を変えることなど楽勝だろう。

■中国社会は様変わりしている
 もう一人の側近、趙楽際氏は、69歳の王岐山氏の後任として腐敗取り締まりを行う中央規律検査委員会のトップに就任する。共産党の綱紀粛正を担う要職だ。習氏の反腐敗運動の陣頭指揮を執ってきたのが王氏であり、同氏の下で習氏の政敵は次々にパージされ、習氏の権力基盤が強化されてきた。反腐敗運動のトップに側近の趙氏を据えることで、習氏は共産党幹部全員に警告を発したと見てよい。

 圧倒的な権力を手にした習氏が今後、国粋主義に裏打ちされたハードな独裁体制を敷くのではないかとの観測が一気に強まったのは当然のことだ。その可能性はある。だが、これは保証されたような話では、まったくない。
 理由は簡単だ。中国共産党内部の権力構造は過去数十年間、ほとんど変化していないが、中国社会は毛沢東氏や鄧小平氏の時代とは様変わりしている。共産党が掲げる公式の政策を本気で信じている中国人はまずいない。共産党員ですら、そうだ。経済の6割は民間セクターが担っており、一般の中国人の日常生活において、中国共産党は事実上、意味を失っている。

 これこそが、習近平時代における権力のパラドックスである。確かに中国において、習氏はここ何十年かで最も強大な権力を手にした指導者だ。だが、中国社会を形づくる能力についていえば、習氏の力は限られている。その力は習氏と同氏の側近、そして外部の中国ウォッチャーが考えるより、はるかに小さいかもしれないのだ。
ミンシン・ペイ :米クレアモント・マッケン大学教授

最終更新:11月18日(土)15時00分

東洋経済オンライン

 

【あわせて読みたい】

このカテゴリの前後のニュース

YJFX 32000円キャッシュバック キャンペーン
年末大感謝祭

不動産投資コラム(楽待)

ヘッドライン