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<勝者の成功哲学 Vol.6>芦沢晃さん

11月18日(土)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真:不動産投資の楽待)
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(写真:不動産投資の楽待)
サラリーマンエンジニアを続けながら、区分マンションの現金買いに絞って堅実に規模を拡大し、現在は都内や京浜地区の中古ワンルームを中心に51棟・51室を所有する芦沢晃さん。投資歴22年で総投資額約3億円、無借金で年間家賃収入3200万円となった「区分のプロ」に、中古物件市場価格の源流である「聖なる泉」への近づき方、購入に値する「未来が輝く物件」の見極めについて聞いた。

■突如リストラ……それでも

「芦沢君、もう会社来なくていいよ」

2004年、46歳の時、21年勤めた会社から突然の指名解雇を通告された。20年以上残っている住宅ローン、アルツハイマーとなった親の介護、まだ小さな子供の教育費……。さまざまな将来の不安が頭をよぎった。

しかし、その数カ月後。一家そろって「早期退職記念旅行」としてハワイへ向かった。心地よい海風と光を浴びながら、昼間は人気のビーチでシュノーケリングを楽しみ、夜は趣味のアマチュア無線で世界の仲間と交信するという悠々自適の日々を送った。

リストラという憂き目に遭いながら、のんびりとリゾート気分を満喫することができた理由。それは当時、すでにサラリーマンの給与を上回る家賃収入があったからだ。以降、専門技術を生かして再就職した会社で好きな仕事を楽しみながら、少額の中古マンションを少しずつ買い足して家賃収入を積み上げ、家族全員で安定した生活を送っている。

「私が会社からの給与だけで生活するサラリーマンだったら、あの時、精神的に参ってしまったかもしれない。当然、のんびりハワイ旅行なんて絶対できなかった。マンション投資をしていたことが、私と家族の窮地を救ってくれたんです」

■大家業の凄みを知った幼少期

不動産投資との出会いは幼年時代まで遡る。「小さい頃、親が小さな個人商店に住み込みのような形で働いていて、そこの社長が社宅として戸建てを用意してくれたんです。その後、周りに社宅が増築されていって、田んぼを埋め立てた同じ敷地内に戸建て5戸とアパート1棟5室ができた。今考えれば完全に社長の節税対策なんですが……」

社長は社員のほか、一般の賃借人もかわるがわる入居させていた。「私の母親は、社長から『あの部屋、人入ったから家賃集めてきなさい』などと言われて、回収業務をしていたんです。当時は家から一歩出ると毎日大工さんが作業をしていて、どんどん家が建って、すぐに人が住んで、お金が入ってくる。子どもながらに『大家さんって凄いなぁ』と思いながら育ったんです」

小学校時代は街の電気屋で壊れた家電品をもらってきては部品を取り、自ら回路を考えてオーディオアンプやラジオを作る「マニア少年」だった。大学で電気工学を専攻し、1983年に大手電気メーカーに入社。6年間は家賃1500円の独身寮で暮らし、毎晩、深夜2時3時まで仕事に明け暮れた。土日もほぼなく、朝昼晩は工場内の社員食堂で1食300円ほどの食事。毎月の残業は200時間を超えていた。

激務に耐えかねて退職者が続出する中でも辞めなかったのは、仕事が心底楽しかったからだ。「顧客のニーズを聞いて業界初の一品をゼロから手探りで作る毎日で、世界最先端の通信システムの開発・研究に没頭できた。大家さんがゼロから物件を建てるようなものです。大好きなことの延長線上に仕事があったから、どんなに寝られなくても、嫌になる事は絶対なかったです」

「自分の年収も知らずに働いた」という6年間。当時は社内預金で非課税・元本保証6%複利で増えていく時代で、複利運用の利子一括払い型利付金融債「ワイド」(9%・5年固定金利)なども購入。年齢制限で独身寮を追い出される30歳を迎えたころ、貯蓄額は3000万円に達し、昔からの夢だったマイホームの購入を決断した。

バブル前の入社時は1000万円あれば戸建てが買える時代だったが、その後、地価は急激に上昇し、購入を考えたバブルのピーク時は6000万円出しても戸建てなど買えない。「もっと早く借金して買っておけば……」と後悔しつつも、東京郊外に2800万円で2DKの中古マンションを購入。現金買いもできたが、「少し怖くなり、半分に分けて取っておこう」と、自己資金1500万円、残りを住宅ローンで借り入れた。「今思えば、あの時1500万円を手元に残したのが命綱になりました」

■バブル崩壊で価値急落

95年末、結婚を機にこのマンションが手狭に感じたことから売却することにしたが、6年間で価値は4分の1まで暴落。1000万円以下まで下がって担保割れを起こし、売っても借金が返せず引っ越しもできない状況に呆然とした。

途方に暮れていた時、書店で邱永漢氏の書籍と出合った。マンションは自分で住む以外に、他人に貸して家賃収入を得る方法が有効だと気付いた。「もちろん今では当たり前なんですが、当時はそんな本も少ない時代だった。幼い頃の記憶がよみがえり、家賃をもらえばローンを返せる、と思って自宅を貸し出したのが大家業の始まり。投資目的ではなく、『生存』のための必死の決断だったんです」

■1戸目はフルローンで失敗

初めて投資目的で購入したのは鶯谷の築8年の区分マンションで、表面利回り6.9%。1090万円をフルローンで買えば、返済や諸経費や差し引いても月5000円程度のプラス、「元手ゼロで毎月お金が入ってくる」と考えた。しかし、実際は空室時の管理費負担や設備修繕、退去時のリフォームなど、赤字に転落。「当時はネットもなければ大家仲間もおらず、どれぐらいコストがかかるかも知らなかった。ここでの失敗が今の投資スタイルの教訓となっている記念碑的物件です」

その後の3年間は自己資金を貯める期間に充てた。バブル崩壊後の当時、ワンルームは借金だけ残って破産するというのが常識で、誰も手を出さないような時代だった。「でも、ちゃんと計算してみるとそうではない。しっかりと利回りが出る物件を選んで現金で買えば勝てる、と思ったんです」

調査の末、建物管理がしっかりしていると感じたワンルームマンション販売会社I社を訪ね、「売ってほしい」と頭を下げたが、「今どき買いたいなんて、頭がおかしいのでは?」と驚かれた。それでも、99年に中古仲介部門の営業マンが、自身が15年間所有している部屋の真上、同じ間取りの物件を紹介してくれた。

用賀の築17年、630万円のワンルームで、利回り11.8%。「個人投資家の視点から、本当に推薦できる物件を自社顧客間に仲介するという姿勢だったから、これなら間違いない、と判断してキャッシュで購入しました」

実際に、この物件は購入から10年程度で投資金額を回収し、20年近くが経過した現在は時間とともに利益が積み上がる状態。買値の半分以上の利益を積めたことから、今年に入って賃貸価値アップのために水回りを全面リノベーションした。

このI社営業マンとの貴重な出会いは、その後のオーナー業に大きなプラスとなった。この物件の成約後、「芦沢さんはなかなか熱心ですね。これを見て研究してください」と、I社が入居者向けに発行している賃貸募集用の雑誌を手渡された。I社創立以来の全物件の写真、賃料相場、管理費、敷礼金などが掲載されていた。

毎週末、気になった物件を見に行くことで、少しずつマンションを見る目を養っていった。「トータル1000件ぐらい見ました。営業マンから『この物件出ました』と連絡があれば、『こないだ見に行った物件だな』と分かるし、もらった雑誌で物件の情報は頭に入っているので、すぐに買いを入れられたんです」

■区分のメリットは何か

当初から区分物件に絞った投資スタイルを貫いている。「私の本業はあくまでもサラリーマンで、仕事を安心して継続しながら家族を守るのが不動産投資。本業に差し支えのない範囲で、失敗のリスクを抑えながら良い物件を選別して現金購入し、着実にキャッシュフローを積み上げていく戦略です。現金でコツコツ買い足していくのは効率が悪いという見方もできますが、区分で融資を使えばキャッシュフローが出ず与信も毀損することになるので、現金購入に絞っています」

区分マンションの場合は物件に賃貸管理・建物管理などのシステムが付随して売買されることが多い。「自主管理、代行管理、家賃保証と、管理システムの選択肢が広く、一棟ものと違って部屋ごとに管理メニューを選べることは大きなメリット。仕事優先のサラリーマンにとって、自分で募集もできるし、管理を任せることもできるし、家賃保証もできる、というように、物件状況と自分の都合に合わせて最適な方法が取れることは非常に重要なんです」

百戦錬磨の投資家がライバルとなる一棟ものに対し、比較的入門者が多いことも区分の利点。「物件数が多くて参入ハードルが低い分、よく分かっていない人も多いということ。投資は結局、『知っている人』が『知らない人』に対して有利な取引をするので、少し勉強すればすぐ頭一つ抜きんでることができるんです」

■「聖なる泉」に近づくために

区分物件は競売の落札価格がすべての最上流、つまり中古物件市場価格の源流となり、より上流で物件を入手できれば投資は有利になる。例えば、新築区分を購入して窮地に追い込まれた投資家が手放した物件を競売・任売で狙うのも一つの戦略だが、多大な労力と時間、スキルが求められる。本業が多忙なサラリーマンにとっては、仲介業者独自の情報を市場に流れる前に掴むことが重要になる。

「必要なのは『この人なら買ってくれるから紹介したい』と思ってもらえる仕組みを築くこと。業者もビジネスなので、確実に成約しそうな顧客から優先的に情報を流す。不動産は株式と違って『人と人』の相対取引なので、そういった上流情報を持った業者といかに信頼関係を築いていけるかが重要になります」

確実な成約と決済につながる投資家だと思ってもらうために必要なこと。「やはり『本気度』です。まずはネットや口コミの情報に買いを入れて、連絡がきたら『自分はこういう人間で、こういう物件が欲しいから紹介してほしい』と具体的なニーズを伝える。物件の紹介が来た時に、買わないから無応答というのは絶対ダメです。『この部分がこうだったら買える』と返せば、次はもう少し希望に近い物件が入ってくる。もちろん1回や2回のやり取りでは足りない。半年や1年かけてキャッチボールしている間に、たまたまいい物件が出てくるイメージです」

重要なのは、まず実績を作ること。「買って手数料を渡さなければ、相手にとって何もメリットがないわけです。実績を作って、確実に利益をもたらしてくれる買い手だと営業マンに思ってもらう。人柄がいいとか、レスポンスが早いとか、そういったことではなく、ビジネスなので営業成績とお金が全てなんです」

■5戸目で思い知った任売の威力

2002年、I社の営業マンから「中野で任意売却が出ました」と連絡があった。中野新橋駅徒歩3分の築19年ワンルーム。「所有者が破産してローンが焦げ付いているので、好きな値段を言ってくれれば交渉します」という話だった。固定資産税評価額とほぼ変わらない490万円で購入でき、利回りは15.2%。「まだ『区分なんて買ってどうすんの』という時代なので、こんな任売物件が出ても誰も見向きもしなかったんです」

この物件は12年間同じ入居者が住み続け、退去リフォームもなく、その1人だけで元が取れて利益を積み増している。「1人の賃料で利益確定できたわけなので、その人から物件をプレゼントされたようなものです。安く買えて立地が良ければ、何もしなくても利益積み上げ段階に入れる。任売の威力を思い知ったと同時に、こういう一見客に紹介されない上流情報は絶対に『人から人』じゃないと回ってこない、と実感した強烈な経験でした」

■どうやって情報を入手するか

立地選定にあたっては「エリア」ではなく「スポット」で考える。「例えば立川は中央線の新宿以西で吉祥寺を抜いて最も乗降客数が多くなりましたが、いい『エリア』かというとそうも言いきれない。ワンルームマンションは掃いて捨てるほどありますが、東京から遠い分家賃が安いので維持費を考慮すると投資としてペイしない。家賃が高くても戸数が少なく、将来の管積金などを考えると長く持てそうにないケースもあるので」

「買い」と判断できるのは、全体のわずか0.1%程度だという。「私に言わせれば、立川で区分を買ってもいい物件は4物件ぐらいしかない。例えば橋本なんかも新幹線駅として中国系の買いがかなり入っていますが、私は1物件しかないと思っていて、その1戸を買っています」

物件の紹介を依頼する場合は、営業マンの視点で条件を噛み砕いて具体的な情報を伝えている。「例えば『築25年以内で空室率5%、15年後の売却価格が80%以内と予想できる物件』と言われても、区分の場合は無限にあるわけで、1日何百枚とマイソクを見ている営業マンは1人の顧客の視点で数値を計算しているヒマはありません。漠然とした条件を提示するのではなく、自分自身でターゲットエリアの路線価や賃貸動向を調査し、具体的な『物件名』を伝えること。そうすれば物件が出た瞬間に即自分にたどり着きます」

区分はとにかくスピード勝負。業者の中には手間なく成約スピードを上げるために条件が抜群に良い物件を一瞬だけネットに出し、即連絡してきた買手に売るケースもあり、そういった物件を狙うデイトレ的手法の投資家もいる。「一棟ものに比べれば圧倒的に足が速いので、業者さんから未公開の上流情報を紹介してもらったら、数時間以内に買い付けを入れるのが望ましいです」

物件情報が届いたらすぐに複数のサイトから築年や総戸数、家賃相場、取引事例価格などをチェックする。Googleストリートビューも活用し、最寄駅から物件までの商店街の雰囲気や交通量、人通りなどを観察。管理会社・建設会社の名称と物件名称を組み合わせて検索し、修繕履歴を確認する。Google3Dモードで地形の概要、建物の影の長さから周辺建物の相対的高さを推定し、隣接地の状態などもチェック。これらを30分程度で調査する。

外観にも物件の良し悪しを判断する材料は多い。「建物の汚れや傷み具合を見て前回の大規模修繕からの経過年数を予想できますし、駐輪場やゴミ置き場の手入れ状況から管理レベルが想像できる。あとは、例えば維持費のかかる植栽は管理組合の財政状況が苦しくなってくると一番に削られる部分なので、きれいに手入れされていれば修繕積立金が潤沢にあると予測できます」

物件情報がきてから慌てて調べるのではなく、自分のターゲットエリアの周辺環境や賃貸動向などは普段から勉強して頭に入れておくことが重要になる。「そうすれば物件独自の部分をピンポイントで冷静に検討することができるようになるので、自然とスピード感が増して、慌てて高値掴みしてしまうことを防げます」。区分のプロの間では、物件の名前さえ聞けば外観や家賃推移、管積金の額などが一瞬にして頭に浮かぶ投資家も多いという。

区分は土地が残らない。物件価値がゼロになっても、積み上げたキャッシュで資金を回収した上、さらに利益確定をする必要がある。「区分の最後は老朽化による維持費アップ+価値下落と資金回収との時間競争になります。つまり、数字上は仮に建て替えになっても、その費用を負担した上、さらに利益が手元に残る価格で買える物件のみが対象になる。そうすれば、何らかの事情で売らなければならなくなったとしても、半分以上回収できていれば買値の半額でも利益は出る。売却しなければ利確できないキャピタル頼みの物件を買えば、家賃収入を得るだけだと永久に水面から出られない。私はそれを避けています」

■19年の思いが実った

区分物件に集中した投資スタイルを続けていると、同棟内で別室の売り物に出合うこともある。

2014年に購入した横浜市内の3点ユニット中古ワンルームは、ある業者が19年前に新築で広告していた際に「中古で出たらいつかは欲しい」と考えていた物件だった。従来のシリーズより建物のグレードがワンランク高く、築年を経ても商品価値を維持できると思ったからだ。

2009年に、付き合いのある営業マンから「あのマンションを売りたいというお得意オーナーさんがいます」と連絡があった。売主の男性は妻が病気で入院し、治療費と介護費用のために至急現金化したいという状況だった。家賃は5万5000円取れる物件で、価格は400万円。新築以来の売買価格も賃料も熟知しているため、即決で買いを入れた。

売主も快諾し、契約手続きに入ったが、思わぬ問題が発生した。物件は夫婦の共有名義で、妻は病気で意識不明状態のため、司法書士が病室で面談したものの売却意思確認が取れなかったのだ。結局、契約まで到達せず、話は流れることになった。

ところが2014年になって、別の物上げ業者の営業担当の女性から、同棟内の別室の物件情報が入った。家賃も価格も5年前とほぼ同額で、管理状態も修繕積立金の額も頭に入っている。即決で買いを入れたが、同日に3件競合の買いが入った。しかも、すべて自身を上回る価格で、最高値をつけたのは中国人だった。しかし、女性は「これは値段じゃないです。とにかく私は芦沢さんに決めているから」と、物件を回してくれた。「じっくり物件調査をしてからの買いでは間に合わなかった。19年間狙いすまして予習していた区分ならではのケースですね」

その女性との出会いは物上げの営業電話だった。「売る気はないけど、現金はあるから」と、売り情報が出たら話を持ってきてほしいと伝えた。「当時はバブル期に掴んだ物件のローンが焦げ付いて早く売り逃げたいという人ばかりで、『買いたい』なんて人はほとんどいない時代。だからすぐに動いてくれて、よい関係が築けた。横浜の物件の時も、彼女からしたら素性の分からない外国人より、常に現金決済で常連の私の方が安心感があったんだと思います」

■買いだと判断する基準は

区分一筋22年、これまでどのような基準で物件を選んできたのだろうか。「一言でいえば『未来が輝いている物件』です。将来にわたって家賃が大きく下落せず、物件状態もそれほど悪化しない。最初は『そんなの分からないよ』と思うかもしれませんが、区分は物件数が無限にある。周りを見れば30年前に新築された物件はいくらでもあって、毎日それを見ていれば、『この物件は30年後どうなる』というのが分かってくるんです」と語る。

「とにかく最初は自分の手で計算を繰り返すことです。専有部の修繕費やエアコン・給湯器が壊れた場合の修理費、業者の広告費などを全部入れて計算し、グラフを作ることを繰り返していると、徐々に良い物件・悪い物件が分かってくる。私は直感で『これは間違いなくいける』と思った物件でも、必ず積算と収益還元のシミュレーションは入れます。たとえ買えなくても必ずシミュレーションすることを続けていけば、次に同じ物件が出たときの反応も早くなる。それを地道に繰り返しているうち、『未来が輝いている物件』がみえてくるんです」

買いを逃した物件でも、仕事の合間に見に行くようにしている。「特別に見に行く時間を捻出するのはなかなか難しいので、出張で通りかかったから少し見てみようとか、途中駅にあれば降りて覗いていこう、という感じです」。街を歩いていて、「コレは」と感じる物件もあるという。「外観を見ると輝いて見えるんです。この物件ならあと20年経っても絶対ピカピカだ、と。ある程度慣れてくると、管積金の状況なんかも見ないで分かるようになる。『1戸あたりの管積金が月額3000円で、だいたい200戸だから15年で1億たまるな』とか」

データを取っておいて、仕事の合間に物件を見て、たとえ買わなくてもシミュレーションにかける。自分の生活の中に不動産投資がある、という生き方。「1億を超す一棟ものならせいぜい1年に1度買いを入れられるかどうかですが、区分は持回り契約&代理決裁が商習慣なので、現金売買なら手間はかからず買いの機会は多い。100発撃って1発当たるかどうかというイメージなので、買いを入れるごとに真剣勝負だと思うこと。本気で買おうと思えば本気で勉強する。その積み重ねで、物件の未来を見抜く第六感が磨かれるんです」

■ガラス張りの修繕積立金

実際の賃貸管理では、管理会社との関係性も重要になる。「修繕積立金の状況は管理会社に見えているので、管理組合の財布を握られている状況。つまり、相手の手の内が分かっているポーカーのようなもの。維持修繕などの工事費から利益を抜く手法はよく知られていますが、修繕積立金がある程度貯まった段階で一気に吸い上げるケースもあるので注意が必要です」

そのため、購入時のシミュレーションでは、管理会社に物件の維持コストを抜かれてもペイできる価格で買うことを意識する。「管理会社は建物保守の最適化よりも自社利益優先で大規模修繕をしますが、あまりにボロボロになれば飯のタネを失うので『生かさず殺さず』を徹底する。つまり、物件価値の下落や管積金の値上げ、家賃下落、空室などのリスクをすべて盛り込んでも投資が成立する価格で物件を購入することが必要になってくるんです」

■ワンルーム規制で高騰する価格

ここ数年、区分物件の値段は上昇傾向が続いてきた。「96年から2000年ぐらいまでは、わずか5年で1000万ぐらいの物件が600万円ぐらいまで下がりました。その私が底値で買った時期から比べると、今は2倍ぐらいまで上がっています」。非正規雇用の増加などで都心部の狭小賃貸ニーズは依然として高いが、都内ではワンルームマンションの建築規制で狭小のワンルームは建築できない。希少性の高まりによって需給バランスの歪みが価格を押し上げている状態で、「16平米ぐらいの3点ユニットは今後増えていかないので、競合が100%生まれないマーケット。ニーズがある限りは参入者が増えるのは必然といえます」と指摘する。

「ただ、最近の値動きを見ていると上昇スピードは鈍ってきていて、今をピークに下がる可能性は高い。現金買いの区分も、マクロな論理としてはローンの動向に左右される一棟ものと同じように動く。つまり、不動産市況全体が下がれば下がるし、上がれば上がるというのは過去20年ほどの傾向なんですよね」

今の「不動産バブル」については「東京五輪まで持つか持たないか、場合によっては来年あたりから崩れる可能性がある」とみている。「そう考える根拠の一つは、Jリートの指数がすごい勢いで下がっていること。これは常に個人投資家が対象とする規模の物件の値動きに先行しているので、あとから現物が引っ張られる可能性は高いと思います」

海外投資家の買いの勢いは依然として強い。「最近は八王子など東京郊外の方まで中国系の個人投資家の買いが入っていて、真っ向勝負になった結果、満額以上の『被せ』の買い付けで持っていかれることもあります。ただ、プロの区分業者に聞くと、特に湾岸のタワーマンションなど最精鋭のところは一斉に売りに回っているようです。だから日本人の長期投資家や実需で買っている人たちは売り浴びせられている状況で、値崩れが始まっているところもあるようです」

一昨年ごろまでは4カ月に1戸ぐらいのペースで買い増していたが、今年は10月に入ってようやく1年ぶりに1戸購入した。「確かにいい物件はあるんですが、投資である以上は買値が全てなので、高すぎてしまうんです」

■目指す高みへ

現在は買値の倍近くに値上がりしている所有物件もあり、全物件を売れば4億円を超す可能性があるが、売却は考えていない。「私の不動産投資の大きな目的は、17年間続けたアルツハイマー病の母親の介護費用を捻出することでした。母親は今年亡くなりましたが、売却することが出口なのではなく、目的を達成するという実績を示せた賃貸システムの完成こそが出口に達したと考えています」

不動産投資をするには「まず明確な目標を立てることが重要」と考えている。「最近は『5年で10億』とか『3年でリタイア』といった目標を立てる人も多いと思うんですが、最大最速だけが最優先で、周りに目がいかなくなることがあるように感じます。自分の人生目標や家族の生活などとバランスを取りながら目標を決めて、それに最も適した方法を取ること。あくまでも、『不動産投資のために生きる』のではなくて、『生きるために不動産投資をやる』ということを忘れてはいけないと思います」

通常は、ローンで複数物件を購入し、借金を完済して物件だけが残ることをゴールに設定する投資家が多い。「私は借金が皆無なので、現在の目標は、少しマニアックというか、万人には向かないかもしれないですが……。区分は積算価値≒ゼロなので、例えば大震災ですべての物件が破壊したら家賃が入らず土地もありません。それでも、区分の投資額と同額の金融資産があれば、もう一度同じだけの区分が買える。つまり、すべての不動産とキャッシュ・紙系ポートフォリオ(外貨や証券)が天秤でバランスしている状態を目指しています」

この状態に達すれば、紙系資産のポートフォリオから配当が出てくる。そうすれば、家賃のキャッシュフローに何かあっても、配当のキャッシュフローで補填できる。「今は毎月50~60万円の管積金を払っていますが、これは1億円を金利3%で30年借りるのと同じぐらいのキャッシュアウトなんです。これはある意味リスクなんですが、配当のキャッシュフローが湧いていれば補えるんですよね。不動産だけでなくトータルのポートフォリオで、区分が全滅しても復活できるシステムを作ることが目標。これにはあと10年ぐらいかかりますかね」

○芦沢晃さんプロフィール

1995年、担保割れを起こした自宅中古マンションを賃貸に出したことをきっかけに不動産投資を始めた。現在は中古ワンルームを中心に51棟・51室を所有し、家賃年収は約3200万円。46歳で指名退職後、再就職した電気メーカーに勤務する現役エンジニア。著書に『改訂新版 中古ワンルームマンション投資の秘訣』(ごま書房新社)など。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:11月18日(土)20時00分

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