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東京ショー、マツダのあの4ドアクーペが秘める市販計画 新型Xの直6搭載?

10月30日(月)10時00分配信 THE PAGE

[画像]前回の東京ショーに出品された『RX-VISION』(左)と今回出品された『VISION COUPE』(右)
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[画像]前回の東京ショーに出品された『RX-VISION』(左)と今回出品された『VISION COUPE』(右)
 マツダが東京モーターショーに出品し、流麗でシンプルなデザインが注目を集めているクーペ型コンセプトカー『VISION COUPE』には、市販化へ向けた動きが密かに進行しているようです。モータージャーナリスト、池田直渡氏のレポートです。

エンジンのめどがなかった前回の『RX-VISION』

[画像]ソウルクリスタルレッドを身にまとう『魁 CONCEPT』。明らかに2019年登場予定の次期アクセラだ。ルーフの造形は流石に市販時に採用されないだろう。これがマツダ第7世代デザインの方向性である
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[画像]ソウルクリスタルレッドを身にまとう『魁 CONCEPT』。明らかに2019年登場予定の次期アクセラだ。ルーフの造形は流石に市販時に採用されないだろう。これがマツダ第7世代デザインの方向性である
 10月28日から11月5日まで開催される第45回東京モーターショーにマツダは2台のコンセプトカーを出品した。

 一台は『魁 CONCEPT』。ソウルクリスタルレッドを身にまとうその姿は明らかにCセグメントハッチバックで、誰がどう見ても次期アクセラにしか見えない。隣に堂々と置かれた次世代エンジン、SKYACTIV-Xからみても、筆者が8月にドイツで試乗してきた第2世代SKYACTIVシャシーの第一弾かつSKYACTIV-X搭載車第1号となることはもはや明々白々である。このスタイルについて、是非ともこってりと書きたいのは山々だが、それ以前に今すぐ報じなくてはならないスクープを掘り当ててしまったのだ。

 スポットライトを浴びたもう一台、『VISION COUPE』の話だ。なんと市販化計画が進行しているのだ。
[画像]RX VISIONのセンタートンネルはエキセントリックシャフトの高さに合わせて異様に高い
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[画像]RX VISIONのセンタートンネルはエキセントリックシャフトの高さに合わせて異様に高い
 話は一度、2年前に戻る。マツダは前回の東京ショーで、RX-7の後継車を意図した『RX-VISION』を出品した。実は『RX-VISON』には直接的な市販化計画はなかった。何より肝心のロータリーエンジンが、排ガスでも燃費でもまだ市販できる様にアジャストできていないのだ。

 しかし内装の写真を見れば明らかなように、このクルマのセンタートンネルは異様に高い。つまりプロペラシャフトが高い位置を通るのだ。そんな高い所にクランク軸を持つレシプロエンジンはないから、エキセントリックシャフトの位置が高いロータリー専用デザインであることは明白だった。しかしその肝心のエンジンは「まだ」だ。つまり『RX-VISON』はエンジンのめどが立っていないコンセプトカーだったのだ。

 だから筆者はマツダのとある偉い人に言ったのだ。「ショーに絵空事のハリボテは出品しないとマツダが今まで語って来たのはウソだったんですか?」

 この原稿は、この先マツダの色んな人の証言をパズルのように組み立てて話が進んでいく。広報の人もいればエンジニアも主査級のひともデザイナーも、複数の取締役も含んでいる。もちろん「話してはいけない」ことになっていることは誰もペラペラしゃべれない。しゃべれないけれど、彼らは本音本気のモードで問い詰められた時、ウソもまたつきたくないのだ。そうやって聞き出した話を筆者は流石に誰が何をしゃべったとは書けない。書けないので、架空の人物「松田氏」を設定して聞き出して行きたいと思う。

「単純なウソや絵空事じゃないんです」

 さて2年前のビッグサイトで問い詰められた松田氏は、話して良いものかどうか考え込んでから「このまますぐに売るかと言われれば、それはありません。でも絵空事ではないんです。こういうクルマを作るためにはステイクホルダーに応援してもらえる態勢を作らなくてはならないんです。ウチも小さいなりに会社ですから、そういう手順は要ります。だからウチのデザイン部が全力を傾けてとにかく見ただけで魅惑される美しいクーペを作りました。 ステークスホルダーの皆さんが『良いね。やりなよ』と言ってくれる美しいスタイルのクルマを作ろうとしたんです。すぐに市販計画のあるクルマではないのは確かですが、単純なウソや絵空事じゃないんです。ホントに作りたい。作らせて下さいお願いしますの心でできたのがRX-VISIONなんです」。

 ちなみにデザイン統括取締役の前田常務に「前田さんの美しいクルマの原点はどこにあるのですか?」と尋ねたことがあるが、そこで名前が挙がったのは「ジャガーEタイプ」だった。その理由を尋ねると「余計なことは何もしていない。必要最低限の形でありながらあれだけ美しいという点ですね」と答えた。『RX-VISION』も『VISION COUPE』もそして『魁』も、共通しているのはものの形そのもので勝負している点だ。強制的にハイライトを作る様なプレスラインは皆無。だから角度によってそのハイライトは曲面上を動き、多彩な表情を見せる。

 通常、デザイナーは「線を加えない」ことが怖い。加飾することより、加飾を削って行くことの方が遙かに勇気が要るのだ。今回の『VISION COUPE』でも、そこは散々迷い、それでも原則に立ち返って、徹底的に引き算のデザインをやり通したと言う。マツダからの明言はないが、おそらくそれこそが第7世代のマツダ『魂動デザイン』のテーマである。

ただのモックアップではなく仮エンジンで自走可能

[画像]低く長いノーズと後退したAピラーは古典的ロングノーズショートデッキのプロポーション。当然FRをイメージしている形だ
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[画像]低く長いノーズと後退したAピラーは古典的ロングノーズショートデッキのプロポーション。当然FRをイメージしている形だ
 さて話は現在に戻って、2017年の東京モーターショーだ。「ウソや絵空事のモデルを作らない」のだとしたら、今回の『VISION COUPE』もまたそれに当てはまることになる。誰がどう見てもFRレイアウトのプロポーション。そしてセンタートンネルは低い。つまりレシプロでFRということになる。

 「松田氏」に尋ねる。「これ塗装デリケートだから搬入大変だったでしょう? 指紋が付いたら取れないし、市販車と違って押して大丈夫な場所も少ないし、タイヤを回して押したんですか?」

── いやいや、とりあえず動かすための仮のエンジンは入ってますから、これでも自走できるんです。

 なるほど、ただのモックアップじゃない。自走できるということは何らかのランニングシャシーがあるということだ。マツダでFRと言えばロードスターだが、あまりにもホイールベースが違う。手押し対応程度なら切った貼ったでロードスターを下敷きにできるだろうが、多少なりともエンジンのパワーをかけて大丈夫となれば、これはもうある程度現実的なシャシーがあるとしか思えない。

「へぇ。エンジンが載せられるってことはなにがしかのシャシーは出来てるってことですよね?」

── 公式にはエンジンは入ってないとアナウンスしています。あくまでも移動用で、クルマとのマッチングだとかそういう話じゃないです。

 
「まあ、動かすためのものってのは分かります。でもそのエンジンを載せてどこかのタイヤに動力を伝達できる構造にはなっていると。しかもどうやったってFFじゃないですよね? タイヤからドアの間の長さは明らかにFRです。スタイルを見せるためのコンセプトカーでFRの形を見せたいのに、フロントタイヤ位置がパワーユニットの都合で決まっちゃったら問題外ですものね」

── うーん。ボクはもう限界なので違う松田さんに聞いてください。

レシプロのFR? エンジンはV6かV8?

[画像]ボディはフェンダーラインにもウェストラインにも一切プレスライン無し。形状そのものに当たる光でハイライトを自然に作るデザイン。ボディ側面には窪みをつけて、上からの光が当たらない場所を設けた。これが多彩な映り込みを作っていく
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[画像]ボディはフェンダーラインにもウェストラインにも一切プレスライン無し。形状そのものに当たる光でハイライトを自然に作るデザイン。ボディ側面には窪みをつけて、上からの光が当たらない場所を設けた。これが多彩な映り込みを作っていく
 そして違う松田氏があらわれる。

「カッコ良いですね。これ何かただのショーモデルじゃなさそうじゃないですか?」

── えっ!? どこでそんな話を……

「見ればわかるじゃないですか。全体のシェープとセンタートンネルの低さを見ると、これレシプロのFRですよね?」

── まぁ、形はそうですよね。

「エンジンはどうするんですかね? まさかこれに4気筒はないですよね?」

── うーん、一般論として商品として成立しないでしょうね。

「でも今更マルチシリンダーを作ってコスト回収できるんですかね?」

── ………。

 無言なのだが明らかにノープランではないことが分かった。ノープランなら「そうですよね」で終わりである。

「6気筒か出来ればV8が欲しいですよね?」

── できれば良いですよね?

「例えばですよ。トヨタアライアンスの中でV6かV8のスポーツユニットを共同開発して共有するってのはどうなんですかね?」

── いや、それは……。勘弁してくださいよ。偉い人に聞いたら果たして何と説明するかボクも興味がありますんで、もう少し偉い人に聞いて下さい。

 この発言で、エンジンについて具体的なプランがあることがはっきりした。

エンジンは新型SKYACTIV-Xの直列6気筒?

[画像]リヤ部分は力強く踏ん張るリヤタイヤとその後ろになびく様につながるテールの造形。リヤ周りの造形はコーダトロンカ時代の裁ち切り型テールをイメージしている
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[画像]リヤ部分は力強く踏ん張るリヤタイヤとその後ろになびく様につながるテールの造形。リヤ周りの造形はコーダトロンカ時代の裁ち切り型テールをイメージしている
 そしてまた新しい松田氏の登場である。

「VISION COUPEって市販化前提ですよね?」

── 売れたらいいですねぇ。

「気持ちとしては売りたいと。でもエンジンが困るでしょう? V6かV8は欲しいじゃないですか? となるとアライアンス内で共同開発とかですかね?」

── いやそれはまだないです。エンジニアもみんなプライドがありますから、他社製のエンジンをほいほい載せたりはできませんよ。

「でも自社で作って、開発費を回収できるんですか?」

── できますよ。例えば最新のXとかってヤツの6気筒とかがあったら良いんじゃないですか?

「おお、SKYACTIV-Xの6気筒。それってVですかね直ですかね?」

── Vだと基礎実験をやり直さないといけないですよねぇ。

「なるほど、そうか固定と変動の固定部分を動かさないためには直6じゃないとダメなんですね? すると3リッター300馬力か、過給して400オーバー?」

── 馬力の話はまあ色んなものとのバランスなので。

「例えば車両重量ですよね。1.6トンくらいですかね?」

── いやいや、ハイブリッドとかにしなければそんなにはなりません。

「ってことは1.5トン切り?」

── ご想像にお任せします(笑)。

「あとは価格ですねぇ。1000万くらい?」

── いやウチのブランドで1000万はまだ無理ですよ。

「ということは700くらい?」

── まだ高いんじゃないですか?

「500万円!?」

── その位で売りたいですねぇ。

「良いですねぇ。100周年(2020年)を祝うに相応しいですね」

── うーん。100周年にはちょっと間に合わないんじゃないですか?

「なるほどねぇ。で、この4ドアクーペが売れたら、2ドアのヤツもね」

── ですねぇ。前回のショーに出したヤツ。あれもそろそろ良いんじゃないですかね(笑)

連続で大型クーペを出品したマツダの意思

[画像]VISION COUPEの内装。車両重量は1.5トンを切り、価格は500万円目標。発売はおそらく2022年か
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[画像]VISION COUPEの内装。車両重量は1.5トンを切り、価格は500万円目標。発売はおそらく2022年か
 さて、まとめよう。マツダではVISION COUPEは開発計画が進行中である。エンジンは直6のSKYACTIV-X。おそらくSKYACTIV-Xのハイパフォーマンスバージョンとして位置づけられる。車両重量は1.5トンを切り、価格は500万円目標。発売はおそらく2022年。

 となると、噂になっているアテンザのFR化計画とも紐付く。直6ならFRとのマッチングが明らかに良い。何よりプレミアムブランドまで含めてほとんどのDセグメントカーが4気筒化した今、6気筒なら明確な差別化が可能だ。と考えると実は順番が逆なのではないかと思う。アテンザの直6・FR計画があってこのクーペなのではないだろうか?

 あるいは北米で苦戦中のCX-9のリニューアルに際して、エンジンコンパートメントを完全にやり直して、この直6が使えるかもしれない。そう考えるとマツダが直6エンジンを開発しても採算が取れる可能性は十分にある。マツダの生産ラインは、1台ずつ違うクルマが流れてくるのが基本の混流生産ラインで、しかもそこにはロードスターも流れる。FFとFRを混流生産するノウハウもあるのだ。

 もちろんこうしたプランは途中で立ち消えになることもある。しかし、前回今回と続けて大型のクーペモデルを出して来ている所にマツダの意思を感じる。マツダ復活を支えて来た立役者たちの卒業制作という意味合いを考えても、彼らはなんとかしてこれらのモデルを世に出そうとしているのではないか?
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■池田直渡(いけだ・なおと) 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。自動車専門誌、カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパンなどを担当。2006年に退社後、ビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。現在は編集プロダクション「グラニテ」を設立し、自動車メーカーの戦略やマーケット構造の他、メカニズムや技術史についての記事を執筆。著書に『スピリット・オブ・ロードスター 広島で生まれたライトウェイトスポーツ』(プレジデント社)がある

最終更新:11月17日(金)11時05分

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