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「安倍総理がんばれ!!」に滲み出た自公の焦燥

10月22日(日)12時02分配信 東洋経済オンライン

自民党のマイク納めの場所は秋葉原。目立つ場所に安倍首相を支持するプラカードを持つ人々が集まっていた(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
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自民党のマイク納めの場所は秋葉原。目立つ場所に安倍首相を支持するプラカードを持つ人々が集まっていた(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
 12日間の選挙戦が慌ただしく終わった。第48回衆議院議員選挙の最終日である10月21日、各党は何を有権者に訴えたのだろうか。

 午後7時の秋葉原駅前は小雨が降って肌寒かった。にもかかわらず、広場には多数の人が集まっていた。この場所では自民党から出馬した山田美樹候補の最後の訴えが行われることになっていたが、集まった人々の目当てはずばり自民党総裁である安倍晋三首相だ。

 安倍首相は都議選最終日の7月1日、反対派の野次に「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と叫んだことで、57議席から23議席に激減という自民党の歴史的敗退の一因を作っていた。今回どのような訴えをするのか、注目が集まるのは当然だった。
■テレビ朝日とTBSを名指しで批判

 そもそも安倍首相にとって、秋葉原は縁起のいい場所だ。2012年と2014年の衆院選ではここがマイク納めの地に選ばれ、自民党はいずれの選挙でも大勝している。

 今回は7月の都議選のリベンジを果たすかのように、かつて野次が飛んだエリアでは大量の日の丸がはためいていた。日の丸は日本の国旗だが、大量の国旗がはためく風景は、ここ最近の選挙ではあまり見られないものだ。「街宣車に近い一部のエリアは招待客用だった。その方向に行こうとしたら入らないように注意された」と、現場を取材した記者が話していたことからも、“動員”があったことが窺える。
 テレビ朝日とTBSを名指しして「偏向報道」と糾弾するプラカードを掲げた集団が、広場を何度も練り歩いていた。これも今回の衆院選では頻繁に見られたものだ。秋葉原に限らず、安倍首相を守ろうという警戒感がそこかしこに漂っていた。その一方で、「アベ政治を許さない」や「お前が国難」といった安倍政権を批判するプラカードを持って立つ人々もいたが、7月の都議選とは異なりそれほど目立たなかった。

 街宣では友党の公明党から竹谷とし子参議院議員が応援演説し、麻生太郎財務相兼副総理もマイクを握る。音楽が流されていよいよ安倍首相の番になると、いちだんと大きな歓声が響いた。
 「看板を替えたからといって、あの3年3カ月はなくならない。国民を欺くことは、騙すことはできない。その選択をこの選挙区で出そうじゃありませんか」

 安倍首相の演説はまず、かつての民主党政権を批判するところから始まった。経済が低迷し、日米同盟が危機に陥ったことを次々と語る。安倍首相の本音としては、政権を奪還した「2012年の衆院選よ、再び」といったところだろう。

 政策の中で最も強調したのは外交防衛だ。その中心は北朝鮮に対する危機対応で、11月に来日予定のドナルド・トランプ米大統領との強い絆を力説した。「強い日本」を主張することこそ、安倍首相の最大の強み。それをアピールする都度、日の丸がはためいた。
 自民党の動員力を見せつけたのは秋葉原だけではない。午後2時の中野駅北口には、これまでにない数の人々が溢れていた。

■きわめて高い小泉進次郎氏の人気

 彼らの目当ては小泉進次郎自民党筆頭副幹事長だ。街宣車の上には東京7区の松本文明氏と東京10区の鈴木隼人氏が立ち並ぶ。いずれも自民党の最重点区で、安倍首相は衆議院を解散した9月28日夕方、山口那津男公明党代表とともに7区内の渋谷駅前で街宣した。また10区は希望の党の小池百合子代表の地元で、自民党を離党した若狭勝氏が立候補している。自民党にとっては負けられない選挙区だ。
 その10区に進次郎氏はこの日2度応援に入っている。すでに小泉氏は10月10日の公示の日には、池袋東口で街宣して多くの人を集めた。21日は午後4時半から池袋駅西口で街宣が行われたが、そのすぐ近くに小池氏と若狭氏の事務所がある。失速している希望の党に、進次郎人気を見せつけたといえるだろう。

 さて今回の衆院選の注目の的になった立憲民主党の枝野幸男代表は大宮駅東口でマイク納めを行ったが、その前には新宿駅南口でも大規模な街宣を行った。道路を挟んで両側の歩道は観衆であふれた。また陸橋やバスタの2階から街宣を眺める人も多かった。
 この場所は昨年7月の都知事選で、民進党が街宣会場として使用した場所だ。だがその時と熱気も雰囲気もまったく違っていた。集まった人たちの表情は極めて明るい。

■2009年の衆院選も期日前投票が多かった

 ただ14日の新宿駅東南口や池袋で行った街宣の盛り上がりの方が大きかったように思えた。台風の影響もあるだろうが、もう少し選挙戦が長ければ、右肩上がりだった立憲民主党の人気が失速する可能性もあった。まさに絶妙なタイミングに恵まれた立憲民主党は運がいい。当初は希望の党への参加が叶わなかったために結成された立憲民主党だが、最終的にはその勢いは希望の党をはるかにしのぎ、ほぼ頂点で投開票日を迎えたからだ。
 今回の衆院選は台風21号の接近もあって、期日前投票が大きく増えた。総務省の発表によると、20日までに期日前投票を行った人は1564万5349人で過去最多になった。これまでの最多は1398万4085人の2009年で、これは民主党が政権を獲得した衆院選だ。

 期日前投票が多いことは何を意味するのか。このことに、盤石と言われる自民党は懸念を抱いている。ある自民党のベテラン議員の秘書はこう打ち明けた。「2009年の衆院選で、うちは民主党の候補に当初はリードしていた。ところが期日前投票の分が加えられると、一気に逆転されてしまった。今回もそんな予感がして仕方ない。絶対に油断はできない」。
 自公優勢とする大手メディア各社の調査の傾向は、選挙戦終盤まで変わらなかったが、これから年末にかけて、新しいドラマが待ち受けているのかもしれない。
安積 明子 :ジャーナリスト

最終更新:10月24日(火)12時56分

東洋経済オンライン

 

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