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夫婦で不動産投資をしていたが離婚……その末路は

9月26日(火)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© hikdaigaku86-Fotolia)
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既婚の不動産投資家であれば、配偶者の協力が得られるかどうかは投資成功の大きな鍵となってくる。では、その配偶者と離婚の危機に陥った場合、共に賃貸経営をしてきた物件は一体どうなってしまうのだろうか? 実際に離婚トラブルの渦中にいる2人の投資家を実例に、弁護士の福岡寛樹氏がポイントを解説する。

■マンション投資で連帯保証人になってくれた妻と離婚したい

離婚したら投資用の区分マンション・共同担保に入れた自宅はどうなるのか?/K・Tさん(40代男性、東京都在住、会社員)

食品メーカーに勤めるK・Tさんは40代のサラリーマン。同年代の妻がいて、東京都内で共働きをしている。

「子供はいないので2人暮らしです。10年前にN区に自宅マンションを買いまして、自分名義でローンを組んでいます。生活費は、住居にかかわるローンや光熱費などの引き落としは私、食費や雑費は妻。それぞれのケータイ代や保険などは各自で支払うという、緩い形の折半をしています。妻の方が支払い額が少ない分、家事をメインでやってもらいました」

そんなK・Tさんが不動産投資に目覚めたのは4年前のこと。書店でたまたま手に取った書籍で不動産投資を知り、勉強をスタートさせた。

「10冊くらいの本を読んで、最初は地方高利回りアパートに惹かれたのですが、実際に見に行ってみると、高利回り物件はボロボロだったり、傾いていたり、とても素人の自分の手に負えるように思えませんでした。また、いきなり数千万円も借りるのが怖くて、都内の中古区分マンションを購入することにしたのです」

そうして探し出したのは、K区にある2000万弱の2DKの区分マンション。オリンピックの再開発エリアということもあり、これから発展していく将来性の高い街だ。

「購入したのは2013年の夏で、その秋に東京オリンピック開催が発表されたので、物件価格が高騰する前に買えたのはすごくラッキーでした。ただし、自分自身の年収が400万円そこそこということや物件が旧耐震基準ということで、融資はノンバンクからしか受けられないという話でした」

そのノンバンクに共同担保を求められ、自宅マンションを共同担保に入れて、さらに妻に保証人になってもらったという。

「そうして4%近い金利ですが、30年のフルローンで融資を受けることができました。念願の投資がはじめられてすごく嬉しかったです。家賃は11万円程度でローンや管理費・修繕積立費を差し引くとほんの少ししかプラスにはなりませんが、その後、その地域一体のマンション相場が上昇したので含み益もあるし、賃貸ニーズも強い場所で満足していました」

しかし、それから月日が流れて夫婦仲が悪化。現在、離婚を検討しているという。

「区分マンション購入後、私の仕事の環境が悪くなり、転職することにしたのですが、これまで以上に良い条件の勤務先が見つかりません。そんなこともあって求職期間が長引いて、妻に依存することになってしまいました。結局、私が甘え過ぎて愛想をつかされてしまったのです。妻からは、すでに離婚をしたいと宣言されています。

その場合、投資用の区分マンション、マイホームはどのようにすればいいのか、わかりません。妻には申し訳なかった思う一方で、正直、私も将来には不安あるので、そんなにお金は払いたくないというのが本音です……」

もともとK・Tさんの妻は、不動産投資に対して興味はなく、保証人などの協力はあったものの積極的に関わりはなかったそうだ。また、投資用の区分マンションについてはK・Tさんがすべて費用を支払っていた。

【弁護士の見解】
夫婦の共有財産と見なされるため財産分与の対象となる

K・Tさんが離婚する場合、「財産分与」が問題となります。ここでは、「マイホーム」と「投資用の中古区分所有マンション」の2つを検討します。

(1)財産分与の対象となるかについて

婚姻中に取得した「マイホーム」については、名義がK・Tさんでローン支払いもK・Tさんが行っていたとのことですが、共働きの奥様が生活費の一部を負担し、かつ、家事労働も行なっていたとのことですから、いわゆる「実質的共有財産(名義は一方に属するが夫婦が協力したからこそ得られたと評価される財産)」として、財産分与の対象となります。

「投資用の中古区分所有マンション」についても、名義がK・Tさんでローン支払いもK・Tさんが行っていたとのことですが、結局のところ、「投資用の中古区分所有マンション」の購入資金は、婚姻生活中に奥様の協力(生活費の一部負担、家事労働負担等)によって捻出されたものと評価できるので、いわゆる「実質的共有財産(名義は一方に属するが夫婦が協力したからこそ得られたと評価される財産)」として、財産分与の対象となる可能性が高いと考えられます。

仮に、この区分所有マンションがK・Tさんが相続により取得したものであるとか、奥様の協力とは無関係のK・Tさんの本人のみの特別な才覚によって取得されたものであるという場合には、いわゆる「特有財産(名実ともに一方の所有に属する財産)」として、財産分与の対象とはならないことが考えられます。

(2)不動産価額の評価方法・分与方法について

K・Tさんの場合、「マイホーム」及び「投資用の中古区分所有マンション」のいずれにも残債務(住宅ローン)が残っているとのことです。財産分与時点で残債務がある場合の不動産価額の評価方法は、分与時点での不動産時価額から残債務額を控除するのが一般的です(抵当権付不動産については別の評価方法を採用する裁判例もあります)。

不動産時価額については、簡易な評価方法として固定資産税評価額や路線価を参照して算定することがありますが、必ずしも市場価値と一致しないケースも多いため、不動産鑑定士による鑑定結果や不動産業者による見積額、銀行評価額などを基準にすることもあります。

分与方法については、どちらか一方が不動産を取得して残債務を支払い続ける方法、第三者の援助や借入金によって不動産評価額の2分の1を支払う方法などがあります。資金的に余裕がない場合には、不動産そのものを売却してその代金を財産分与することが考えられます。

なお、「投資用の中古区分所有マンション」については奥様が保証人となっているとのことですが、奥様が離婚に際して「保証人から外してほしい」と希望しても、金融機関の同意が得られない以上は保証債務を免れることはできないため、事実上実現困難であることがほとんどです。

また、「マイホーム」及び「投資用の中古区分所有マンション」について、オーバーローン(不動産時価額よりも住宅ローン残債務額が大きいケース)の場合、原則として、負債が上回っているので不動産価値はゼロであるとして、財産分与の対象とはならないと判断されることになります。

■離婚したら法人はどうなるのか? 妻が有利に財産分与することは可能?

M・Hさん(50代女性、東京都在住、不動産賃貸業)

M・Hさんは50代の女性。60代のご主人はすでに定年退職をしている。3人のお子さんはすでに成人して独立しているそうだ。

「不動産投資は10年ほど前に始めました。きっかけは主人の定年退職を意識したこと。サラリーマン時代は一部上場企業に勤めており、経済的には安定していましたが、退職後のことを思うと不安でした。というのも、子育ては一段落しても自分たちの老後はもちろん、親の介護があるので、年金だけではとてもやっていけないと思ったのです」

当時、ご主人は年収1000万円を超えていたので、M・Hさんが代表取締役を務める法人(株式会社)を立ち上げて(株式の過半数はご主人が所有)、夫婦で不動産投資をスタートさせた。現在、法人で首都圏を中心にマンション・アパート・区分マンションを4棟35室所有しており、投資総額は数億円にのぼる。

「始めた時代が良かったのか、規模は大きくありませんが良い物件に恵まれ、お陰様で順調に賃貸経営ができていました。しかし、定年退職後から夫の様子がおかしくなり、浮気相手がいることに薄々気づいていました。そして1年程前、息子が独り立ちをしたことをきっかけに別居となりました。おそらく今は相手の女性と暮らしているようです。

今も賃貸経営は2人で行っていますし、週に一度は顔を出す形で完全に破局しているわけではありませんが、私としては義母の介護もしていて、このような中途半端な状況に甘んじているのは不本意です」

もし、離婚するのであれば、会社はどうなるのか? 法人所有の不動産はどう分与するのか? 

「今、売却すれば高く売れるのはわかっているのですが、高利回りで運営できていることもあり、できれば所有している物件を売却せずに分けたいと考えています。また、主人が原因の別居からの離婚ですから、私に有利になるように進めたいのです」

【弁護士の見解】
物件を売却せずに株式の財産分与することが可能、さらに慰謝料も請求できる

ここでは、法人所有の不動産(マンション・アパート・区分所有マンション)に限って検討します。法人代表者には奥様であるM・Hさんが代表取締役として就任されているとのことですが、同法人が株式会社ということで、それぞれが保有している株式そのものが財産分与の対象となります。

その場合、別居時に保有していた株式について、財産分与(訴訟であれば口頭弁論終結)時点を基準として価額評価することが多いです。本件では非上場株式であると考えらえますので、公認会計士等の専門家による評価が必要になると思われます。このように株式の財産分与を行った場合には、法人所有の不動産を個別に売却する必要はありません。

ただ、今回のケースでは、株式を分与した結果、M・Hさんと夫との持株比率によっては、M・Hさんが代表取締役を解任され、経営陣から外されてしまうおそれがあります。そこで、M・Hさんとしては離婚の条件として、会社の株式を全て取得・保有することを提案することが考えられます。

本件では別居後に夫が別の女性と同棲しているという事実があるようですし、夫と女性との不倫関係が、M・Hさんとの婚姻関係が破綻する以前からのものであるということであれば、夫からの離婚請求が認められない可能性が高いと思料されるため、上記離婚条件の提案も十分に実現可能なものではないかと考えます。

また、この場合、M・Hさんは夫の不貞行為について、不法行為に基づく損害賠償請求ができることになりますから、財産分与の際に慰謝料的側面を強調して、M・Hさんにより多くの財産(会社株式を含む)を分与するよう求めることが考えられます。

■もしもに備えて対策を

このようなトラブルを未然に防ぐための方法として、夫婦財産契約(民法第755条~759条)の利用が考えられる、と福岡氏は言う。

「夫婦財産契約とは、婚姻前から所有している財産を夫・妻どちらの名義にするのか、それとも共有にするのか、また、婚姻中に取得する不動産についても名義をどのようにするのかといったこと等を定めておく契約で、婚姻の届出までに登記が必要とされています。

一般的に、財産分与等の問題意識は、離婚を検討し始めたときに生まれるものですから、夫婦財産契約が活躍する場面はほとんどないと言えるでしょう。

常に離婚を念頭において準備しろ、というのは難しいかもしれませんが、万が一の場合に備えて、「適切な財産管理を行う」という意識を持つことが大切です。

特に、配偶者の協力を得て不動産投資を進めている場合、離婚を想定せず不動産名義を相手名義にしていたり、株式の比率を五分五分にしていたりするケースも散見されます。離婚の際には財産分与があることを踏まえて、できる限り自分の名義、所有にしておく方が後々の交渉を進めやすいことが多いでしょう」

どんなに仲の良い夫婦でも、一生添い遂げることになるかどうかは分からない。夫婦で協力して不動産投資を行っていく際には、離婚のみならず、死亡や病気など、万一の事態にはどうするのか夫婦で話し合いをしておくことが必要になると意識しておくのが肝要であろう。

○弁護士 福岡寛樹(ふくおか ひろき)氏のプロフィール
大阪府出身。平成23年、司法修習終了、弁護士登録。大阪弁護士会所属。フォーゲル綜合法律事務所にて、交通事故(保険金詐欺等のモラルリスク事案を含む)、労働問題、相続、離婚などの事案を担当。

顧問先の不動産管理会社にて、建物明渡請求事件、賃料増額請求事件といったトラブルを解決する。平成29年7月「袖縁綜合(しゅうえんそうごう)法律事務所」を開設。交通事故、労働、相続といった分野を得意する。不動産投資家 岡田のぶゆき氏との共著「大家さん、その対応は法律違反です!」(ぱる出版)が11月発売。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:9月26日(火)20時00分

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株式会社ファーストロジック

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