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JTB 、民泊にも参入する「第3の創業」の衝撃

9月24日(日)6時00分配信 東洋経済オンライン

9月21日の会見では、ユニークな動きのダンスを取り入れながら、訪日観光客向けの手ぶら観光サービス「ラゲッジ・フリー・トラベル」をアピールした(記者撮影)
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9月21日の会見では、ユニークな動きのダンスを取り入れながら、訪日観光客向けの手ぶら観光サービス「ラゲッジ・フリー・トラベル」をアピールした(記者撮影)
 「目指すのは課題解決型への転換、第3の創業だ」ーー。大手旅行会社ジェイティービー(JTB)の髙橋広行社長は熱く語る。

 同社は9月21日にパナソニックとヤマトホールディングスと提携し、訪日外国人観光客が手ぶらで、旅行や観光ができる「ラゲッジ・フリー・トラベル」を2018年1月より開始すると発表。9月11日には民泊を手掛けるベンチャー企業の百戦錬磨(仙台市)に資本参加し、民泊への本格参入も開始した。
 同社はこうした事業を社会課題の解決(ソリューションモデル)と位置付け、取り組みを加速させている。

■12年ぶりに大規模な組織再編へ

 こうした新事業の開始と同時に進めているのが、2018年4月に控えるグループの大型再編だ。JTBは2006年に首都圏や東海など地域会社に分割したが、今回は各社を本体に吸収合併し、”One JTB”として組織を再編。各社に分散する事業を個人、法人、グローバル(訪日や海外間)という3つのビジネスユニットへと組替えを行う。
 改革を主導するのは2014年にトップに就任した髙橋広行社長だ。

 JTBは1912年に創業、元々は国鉄のチケットを代理販売する事業を手掛けていた。

 今は「旅行会社」とされている業界が、かつて「旅行代理店」といわれていたのはこうした代理販売モデルに由来する。

 その後、1960年代後半からパッケージツアーの販売を開始。宿泊施設や航空会社との強固な関係、国内最大の店舗網を擁する圧倒的な規模を生かし、パッケージツアーの販売で成長を遂げた。現在の取扱高は約1.6兆円と国内では断トツ、世界でも有数の規模を誇る。
 ただ、近年はOTA(オンライン旅行会社)に大きな差をつけられている。1996年に米マイクロソフトの一部門として創業し、独立した米エクスペディア。2006年にオランダのOTA、ブッキングドットコムを買収した米プライスライングループはいずれも、8兆円前後の取扱い高を誇る。

 OTAの台頭によって、この10年ほどで個人旅行をめぐる環境は大きく変わった。かつてはJTBやエイチ・アイ・エス(HIS)など旅行会社の店舗やパンフレット、新聞広告などを通じて、パッケージツアーや航空券を予約するのが主流だったが、今では旅行会社各社のウェブサイトで航空券やホテルといった単品を購入するように転換した。
 ウェブサイトのみを展開するOTAは低価格販売や大量の広告費投入という戦略を展開。あっという間に、JTBのような伝統的な旅行会社を取扱高で追い抜いた。JTBも1998年から個人旅行のインターネット販売を本格的に開始。すでに20年近い歴史があるが、ネット販売が全体に占める比率は15%程度に過ぎない。

 「世界の旅行業界はウェブ化とFIT(海外旅行の個人手配)化という2つの波にさらされており、どう向き合うかが問われている」(髙橋社長)。
■「家族の絆を深められたか」まで掘り下げたい

 そこで来春の組織再編では同社史上初めて、商品の企画部門と、実際に店舗で接客に当たる販売部門を同じ部署に統合。社内調整を大幅に減らし、機動的な商品企画の販売を打ち出せる組織に移行する。

 今後は約750店を数える店舗とインターネットの販売比率も見直す方針だ。

 一方で、JTBが強みとする法人部門には最大の経営資源を投入する。法人部門は出張や東京五輪やラグビーW杯などのスポーツ旅行に加え、MICE(会議、報奨・招待、国際会議、展示会などの総称)や、地方自治体の観光振興策などを扱う。
 改革の先に見据えるのが、ビジネスモデルそのものの転換だ。

 「今までは商品を売ることを最優先にしてきた。お客様に対し、ホテルはよかったですか、お食事はよかったですか、という問いかけしかできなかった。これからは旅行の目的・課題である家族の絆は深められたか、親孝行はできたかという部分にまでかかわっていきたい」(髙橋社長)。

 JTBは国鉄のチケットを代理販売するモデルを第1の創業、パッケージツアーを作り、大量に売るメーカーモデルが第2の創業と位置付けた。
 今後は“第3の創業”として、個人や法人の顧客、社会が抱える課題に解決策を提示し、対価を得るソリューションモデルに転換を進める。

 冒頭の事例では、大きなスーツケースを持って来日する観光客が手ぶらで観光できるようにJTBが商品販売を、パナソニックがシステムを、ヤマトHDが配送を分担して担当する。

 民泊についても、地方自治体に地域経済の活性化策として、農家に泊まる農泊やお祭り時に提供するイベント民泊といった事業モデルを提案し、社会的な課題解決で収益を得る計画を立てる。
 JTBが民泊に参入する衝撃は大きい。同社は全国の旅館やホテルといった宿泊施設、約4000軒を組織化したJTB協定旅館ホテル連盟を抱えており、民泊は最大の競合相手といえる。

 今回は合法な民泊のみを展開する百戦錬磨と提携し、自治体向けに提案する。「地方活性化というパッケージの中で、農泊やイベント民泊を提案していく。単品の民泊をやるつもりはない」(髙橋社長)。JTBのこの動きについて、JTB協定旅館ホテル連盟はコメントをしなかった。
 JTBは組織再編後の2018年4~5月に新たな中期経営計画を公表する。その中で個人部門はOTAとどう向き合うのか、インバウンド関連をどう取り込むか、そして法人部門をどう伸ばしていくのかといった点への方針を示す。

 ソリューション事業への転換については「現状は微々たる規模だが、2022年度までに一定の形を作る」「社員を削減することは一切ない。教育や自己研鑽の機会を設ける。困難だがやり遂げるしかない」(髙橋社長)とする。
 そのために10月から国内15カ所を回り、店長などを対象にタウンミーティングを実施、直接社員に語りかける機会を作る計画だ。

■ビジネスモデルの転換はできるのか

 ただ、これまでの成功モデルを転換させるのは容易ではない。早急にOTA対策が必要な個人部門については「店舗やコールセンターなど多様なチャネルを持っているのが強み。ウェブは1つの武器として磨いていく」(髙橋社長)と言及するにとどまった。

 あるJTBグループの中堅社員は「人員カットをするつもりではないのか。現場にいると、顧客の課題解決ができるようになるには数世代かかりそうだ。自分も含めてそんなのは無理」と嘆く。
 はたして「第3の創業」という大転換を果たせるのか。来春、その全容が明らかになる。
松浦 大 :東洋経済 記者

最終更新:9月25日(月)18時26分

東洋経済オンライン

 

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