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四季報は予言していた!? アナログ製品で成長する企業

9月13日(水)20時11分配信 会社四季報オンライン

アナログ製品で成長する企業を思いつくままに挙げてみた
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アナログ製品で成長する企業を思いつくままに挙げてみた
 今年6月、ソニー(6758)の音楽子会社であるソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、29年ぶりにアナログレコードの自社生産を再開すると発表した。

 同社のプレスリリースによると、アナログレコード製造用マスターのラッカー盤カッティングマシンやアナログレコード用のプレス機を導入し、カッティングマスター制作からプレス製造におよぶ一連のアナログレコードの量産体制を2017年度中に整えるとしている。

 国内におけるレコード人気は、音質にこだわるマニアやかつてのヒット作を求めるシニア世代にあったが、今では一度もレコードに触れたことがない若者にまで広がっているという。このレコードブームは日本のみならず世界でも沸きあがり、世界的な「アナログ回帰」になっている。それが今回のレコード生産再開の一因になったようである。

 そこで今回のコラムでは、デジタル時代の現代にあって、アナログ製品で成長する企業について考えてみたい。

■ アナログって何? 

 まずはそもそもアナログやデジタルとは何か?  一般的な会話で「アナログ」と言うと、「レトロ」「自然」「手作業」「機械式」といった意味合いで使われることが多く、デジタルは「最先端」「人工」「全自動」「電子的」といった意味で使われることが多い。実際「私はアナログな人間だから……」などと言う時は、自分はちょっと古い人間だからという意味で会話は十分通じている。

 しかし本来の意味のアナログは「連続した量(例えば時間)を他の連続した量(例えば角度)で表示すること」で、デジタルは「アナログの反対の概念で、連続量をとびとびな値(離散的な数値)として表現(標本化・量子化)すること」と解説される。

 たとえば、針が回るアナログ時計と液晶上に数字が表示されるデジタル時計で比較して考えるとわかりやすい。ともに秒針もしくは秒単位の表示がないもので考えると、アナログ時計の場合は連続した時間を連続して回転する針で示しているので、秒の表示がなくても大雑把に何秒ぐらいかわかるが、デジタル時計の場合、連続した時間でも「04:00」の次の表示は「04:01」と、とびとびの値しか表示しないため、何秒なのかまで把握することはできない。
 一方で、仮に「04:02」のタイミングで瞬間的に目を移して時間を見る場合、アナログ時計では、何となく「04:00」であることはわかっても正確に何分かまではわからないが、デジタル時計の場合は明確に「04:02」と認識できる。

 つまりアナログは曖昧なところまで表示できるが、正確な数値がわかりにくい一方、デジタルは曖昧なところは表示できなくとも正確な数値がわかりやすいともいえる。レコードの場合、この曖昧な音まで表現できることが、臨場感のある高音質につながると考えられる。

 ではこのレコード人気の「アナログ回帰」はいつごろから本格化したのか。ニュースをさかのぼってみると、昨年2016年3月が転換点だったようだ。

 同月ソニーは、アナログレコードの高品位な再生とアナログレコードの音を「ハイレゾ」で録音できる、世界初のステレオレコードプレーヤー「PS-HX500」を発売すると発表し、同じくパナソニック(6752)も、同年6月に高級オーディオブランド「テクニクス」のターンテーブル(アナログレコードプレーヤー)「SL-1200」の発売を発表している。「SL-1200」シリーズは1972年に発売され、DJからの人気もあり、全世界で累計350万台を出荷する大ヒット商品となった。これら両社が発売したレコードプレーヤーは、ともに新製品として8年ぶりということで大きな転換点になったことは間違いない。

 実は、このレコードの「アナログ回帰」をさらに早い段階で伝えていたのが、2015年12月に発売された『会社四季報』2016年1集(新春号)である。同号では、リサイクルショップチェーンのハードオフコーポレーション(2674)のコメント欄に、「【アナログ】シニア層対象の高級オーディオコーナーが意外にも若者から人気」と書かれており、このころすでに古いアナログのレコードプレーヤーなどが人気だったことを伝えていた。会社四季報の魅力として「継続性」「網羅性」「先見性」の3つがあるが、この記事は現在のアナログレコード復活の流れを予見する「先見性」を発揮した事例ともいえるかもしれない。

 さらにレコード以外のアナログ回帰では、アナログシステムの代表ともいえるインスタントカメラの好調について、もっと早い段階の2013年3集(夏号)の四季報が伝えている。同号の富士フイルムホールディングス(4901)のコメントは、「中国、韓国で好調のインスタントフィルムカメラ「チェキ」は今期販売200万台(前年比25%増)狙う」となっていた。

 「チェキ」とは同社が1998年に発売したインスタントカメラで、最大の特長は撮った写真がその場でプリントされ、すぐに見ることができるというものだ。インスタントカメラは元々、米国の発明者で科学者であるエドウィン・ランドが1944年にインスタントカメラの基礎技術となる「ワンステップ撮影システム」を発明し、1948年に「ポラロイド・ランドカメラ」として発表したのが原点である。その後永らくインスタントカメラといえば「ポラロイドカメラ」という時代が続いたが、1981年、富士フイルムがインスタントカメラ「フォトラマ」を発売し、その後チェキにつながっていった。
 ところが2000年ごろからデジタルカメラやカメラ付き携帯電話が普及し始めると、インスタントカメラの市場は世界全体で急速に縮小していく。その後の状況は同社ホームページによると次のとおりだ。

 発売当初10代の女性を中心に人気商品だったチェキも、2002年をピークに売り上げは低迷し始め、2008年にはついにインスタントカメラ発祥のポラロイド社が祖業の撤退を決めるという厳しい環境に直面する。その頃のチェキの売上高はピーク時の10分の1となり、当然、同社内でもチェキの撤退が議論されるようになった。

 そんな中、2009年から2010年頃を境に、日本の都市に住む一部の若い人々の間で再びチェキへの注目が高まってきた。その背景にはフィルムを使うトイカメラのブームや、スマホで撮った写真を加工してシェアできるSNS「Instagram」の登場があったとしている。誰もが気軽に写真を楽しめるようになった結果、自分にしか撮れない「味のある写真」で自己表現したいという欲求が生まれ、その欲求にチェキは見事に応えたというわけで、今では若い世代だけでなく大人の男女や中高年男性も手に取るシリーズまで広がっていった。

 最後に、古いものという意味も含め、広い意味でのアナログ製品で成長している企業をまとめてみた。前述のレコードやアナログ時計、チェキに加え、たとえばテレビゲームではなく昔ながらの玩具とか、メールではなく手紙を書くということで筆記具など、思いつくまま関連銘柄を挙げてみたので参考にして欲しい。

 渡部 清二(わたなべ・せいじ):大手証券会社に23年間在籍。中堅企業、個人投資家向けの資産コンサルティング、世界の運用会社向けの日本株セールスに携わる。2014年四季リサーチ設立、2016年「複眼経済観測所」設立、所長。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
渡部 清二

最終更新:9月15日(金)10時46分

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