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管理会社社員が、合鍵で物件に侵入していたら?

9月13日(水)20時00分配信 不動産投資の楽待

(写真© Monet-Fotolia)
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こんにちは。銀座第一法律事務所弁護士、鷲尾です。今年6月、大手不動産会社の従業員が、合鍵を使って管理を委託されていた物件に窃盗目的で侵入して逮捕されたという事件がありました。実はこの会社では、以前にも別の従業員が合鍵を使って管理物件である女性の居宅に侵入して暴行を働くという事件が起きています。

業者に賃貸物件の管理を委託する場合、オーナーは、物件の鍵を入居者のほかに管理会社にも渡していることが多いため、こうした事件も起こり得るわけです。また近年、空き家や空き室に犯罪組織が目を付けて不正に利用しているとの報道がなされています。

たとえば、昨年10月に犯人が逮捕された事件では、犯人グループは、インターネットサイトからだまし取ったパソコンなどの電化製品をその空き室に配送させ、住人になりすまして商品を受け取って転売していました。

犯人は、不動産会社が使う専用サイトに不正アクセスし、内覧用に不動産会社が用意したキーボックスの暗証番号や保管場所の情報を閲覧し、キーボックスから鍵を入手していました。空き室を犯罪に利用する事件では、空き室の情報や鍵を犯人に提供する悪質な不動産会社が関与しているケースもあるようです。

今回は、この二つの事件を題材として、悪質な管理会社に物件の管理を任せていたところ、その管理会社を通じて、物件の入居者に被害が及んだり空き室を違法不当な目的のために使われてしまうリスクについて考えてみます。

■管理会社の違法行為で入居者が被害を受けても、原則、オーナーに賠償責任はない

物件の管理を委託していた管理会社の従業員が、預かっていた合鍵を使って物件に侵入したケースで、被害を受けた入居者から、そうした違法行為を行うような会社に管理を任せたオーナーも同罪だとして損害賠償の請求を受けた場合、オーナーはこれに応じなければならないのでしょうか。

オーナーと契約して管理を引き受けた管理会社は、「善良な管理者の注意義務」に則って管理を行う必要があります。

オーナーは、管理会社がこのような善管注意義務をつくして適切に管理を行ってくれると信頼して管理を任せたのであって、管理会社の従業員が合鍵を不正に使用して物件に侵入、窃盗をはたらくなどとは夢にも思わないでしょう。

このような場合、オーナーは自分が行ったわけでもない違法行為についてまで責任を負うべきいわれはなく、入居者からの損害賠償請求に応じる必要はありません。従業員を監督すべきなのは、オーナーではなくその従業員の雇用者である管理会社です。

ただし、オーナーが、管理会社の違法な行為に協力していたり、違法を行っていることを知りながらこれを黙認して放置していたとなると、オーナー自身も損害賠償責任を問われるおそれがあります。

まさか窃盗目的での住居侵入を黙認することはないでしょうが、たとえば賃料を何カ月も滞納して明渡しにも応じない悪質な入居者に対抗するため、管理会社が鍵を勝手に交換しようとしているなどという場合、オーナーも見て見ぬふりをしてしまう誘惑にかられるかもしれません。

私も、賃料不払いを理由に建物明渡訴訟を起こそうと準備していたところ、管理会社が部屋の鍵を換えてしまったということを聞き、慌てて管理会社に連絡して鍵を元に戻させたことがあります。これを知ったオーナーから、「せっかく管理会社が鍵を交換してくれたのに」と食ってかかられたことがあります。

しかし、不誠実な入居者相手でも、法的な手続に従わず勝手に鍵を交換して部屋に入れないようにしてしまうのは違法です。オーナーが管理会社に指示してこれを行わせたり黙認していた場合には、オーナー自身も不法行為に加担したとして損害賠償責任を問われる可能性がありますから注意が必要です。

■空き室の放置は危険

空き室については、管理会社に任せきりにしているというケースもままあると思います。管理会社がその信頼にこたえて適切に管理してくれていればよいのですが、管理を怠るだけならまだしも、その空き室の情報や鍵を第三者に渡して空き室を犯罪のために使わせていたとなると大問題です。

犯人が身元を隠すため、そうした空き室を、ネット通販商品やキャッシュカード、さらには振り込め詐欺などの特殊詐欺により騙し取った現金の送り先として利用するのです。このような空き室の不正利用については警視庁も対策に乗り出し、宅建業者に対し、空き室が犯罪者に利用されないよう、空き室情報や内覧等で使用する合鍵の使用・保管について管理の徹底を要請しています。

しかし、管理会社の対応を待つだけでなくオーナー自身も気をつけなければなりません。オーナーが詐欺被害を受けた被害者から直接責任を問われることはないでしょうが、こうした犯罪の拠点として使用されていた部屋だということが分かると、犯人グループやその関係者がまた現れるかもしれないという不安心理が働き、入居者の募集にも支障が生じかねないのです。

■結論

○違法・不正な行為を働いた管理会社に損害賠償請求できる確率:90%以上

上にあげたような不正・違法行為に管理会社が関与していた場合、管理会社はオーナーとの管理委託契約に基づく善管注意義務に違反したことになります。したがって、管理会社の不正・違法行為によってオーナーに損害が生じた場合には、管理会社に対して損害賠償を請求することが可能です。

損害には、鍵などの設備を交換せざるを得なくなった場合の実費などはもちろん、たとえば侵入された入居者が転居してしまった場合の減収分などの請求も一定範囲で認められるでしょう。

■これからは鍵の管理も問われる時代に

相続税の増税やマイナス金利などの影響で、人気が高いはずの東京や周辺の県でも賃貸住宅は慢性的な供給過剰状況にあり、そのため空室率が上昇していると言われています。

ご紹介したような事件が後を絶たないことからすると、これからは、そうした空き室を放置していたり、物件の管理を管理会社に合鍵を預けて後は任せきりにしていたり、というのでは安心できないということです。そのため、以下のような工夫が必要になるでしょう。

○入居者が退去した後で新しい入居者と契約する場合には、鍵を交換する。

→前の入居者などが合鍵を使用して部屋に侵入したりすれば、平穏に居住できる部屋を貸すという賃貸人としての基本的な義務を怠ったものとして後から入居した者から損害賠償の責任を問われることにもなりかねないため。

○管理会社のキーボックスの利用を止めさせたり、合鍵を渡さず内覧の都度、鍵を渡すようにしたりする。

→管理会社の自主的な管理体制の徹底を待つだけでなく、オーナー自らも注意の目を光らせる。

○空き室については、頻繁に行くことは無理でも2、3カ月に1回程度でも物件を見に行く。

→郵便受けの周囲やゴミ置き場などを清掃しておくと、管理が厳しそうだということで犯罪グループから目をつけられるリスクが減ると思われるため。

オーナーとして責任を問われることのないよう、しっかりと物件に目を行き届かせることが重要です。
鷲尾 誠

最終更新:9月13日(水)20時00分

不動産投資の楽待

 

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株式会社ファーストロジック

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