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「勝てないアマ投資家」には何が足りないのか

8月13日(日)6時00分配信 東洋経済オンライン

どんなアマの投資家でもプロ顔負けの成績を残すことはできる。勝てない投資家はプロが持っていない「せっかくの武器」を使っていないかもしれない(写真:Rawpixel / PIXTA)
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どんなアマの投資家でもプロ顔負けの成績を残すことはできる。勝てない投資家はプロが持っていない「せっかくの武器」を使っていないかもしれない(写真:Rawpixel / PIXTA)
 株式投資というのは「何を買うか」、「いつ買うか」そして「いつ売るか」といった判断の連続です。日経平均株価は、企業業績が総じて好調な割には足踏みが続いています。こんな時に「投資のプロは一体どう相場を考えるのだろう?」とか「ここから何をどうやって売買すればいいか」、といったことを知りたくなるのは当然です。

 もちろんプロの投資家であるファンドマネージャーが売買する前に自分の手の内を公開することはありませんが、あわよくばここからの相場の動きとそれに対する対処の仕方を聞いてみたいという人は多いと思います。ところが、プロの運用者が必ずしも正しい投資判断をするとは限りません。実際にファンドマネージャーが運用するアクティブファンドでも、市場平均を下回る成績しか出せていない投資信託もたくさんあります。実は運用の世界では必ずしもアマはプロに勝てないというわけではないのです。
■藤井四段は無理でも、ファンドマネージャーには勝てる

 これが仮に将棋の世界ならどうでしょうか。最近話題の15歳のプロ棋士である藤井聡太四段。恐らくアマチュアでかなり上位にいる人でも彼と戦って勝てるということはまずあり得ないでしょう。

 ところがサッカーや野球であれば、たまにアマのチームがプロに勝つこともあります。この理由は結果に対してどれぐらいの割合で「偶然」が左右するかというところにあります。これらの競技は団体で行い、かつ野外で行われるため風やグラウンドコンディションなど、さまざまな偶然の要素が影響するのに対して、将棋や囲碁の場合、本人の体調以外にはあまり偶然になる要素がありません。
 では投資の世界はどうでしょう? これはかなりの部分が偶然に左右される世界です。もちろん投資対象に対する分析も重要であり、全てが偶然に支配されるというわけではありませんが、株式市場というものが多くの参加者の心理によって動く要素がなくならない限り、どこまで行っても偶然に左右されるということを避けることはできません。したがって必ずしもプロの運用には勝てないということはないのです。

 私は過去40年間で何万人もの個人投資家を見てきましたが、別に職業的に投資をしているわけではない彼らが、投資信託などより、かなり上回る運用成績を上げているという例を数えきれないぐらい見てきました。
 プロの運用成績をはるかに凌駕する個人投資家はかなりの数で存在します。それに、これはある種の皮肉ですが、そもそもインデックスを下回るアクティブ投信の数が多いということであれば、単純にインデックス投信を持っている個人投資家の運用成績はみんな、多くのプロの運用成績を上回っているということになります。

■アマチュア投資家は、いつでも運用を休める

 では、多くのファンドマネージャーはプロとしての値打ちがないのでしょうか。いえ、決してそういうわけではありません。投資をする時に大切なのは、投資対象の分析をしっかりおこなうことです。投資しようと思っている会社の財務内容を分析したり、その会社に出かけて行って経営者や現場を見たりすることはとても重要なことです。プロはそういうことができるのに対して、アマチュアの投資家は恐らくそこまでやる時間はありません。情報量ということで言えば、アマは逆立ちしてもプロが得る情報量にはかなわないでしょう。
 ではなぜ、そんなに豊富な情報量を持っているプロでもアマに勝てないなどということが起こるのでしょうか。それは「プロはどんな状況になっても常に運用し、動き続けなければならない」のに対して「アマはいつでも運用を休むことができる」ということだからです。

 言うまでもなく、プロというのは人様のおカネを預かって運用するのが仕事です。さらに競争相手の運用会社もたくさんあります。その上、ファンドには決算があり、期間収益を上げることが求められます。1年間の運用成績を見て悪ければ他の運用会社に乗り換えられてしまうことだってあります。
 年金基金などは当然そういう行動を取るでしょうし、個人で投資信託を買っている人だって、あまり成績が良くなければ他に乗り換えようと考えるのはごく自然なことです。つまり、プロは常に比較される競争相手の存在を気にかけながら、期間収益を上げなければならない、という宿命を負っているのです。相場が悪い時でも悪い時なりにしのいでいかなければなりませんし、逆に上昇相場になった場合は「持たざるリスク」を意識せざるを得ません。
 これに対して個人投資家はどうでしょうか。個人には決算などというものはないので、期間収益など気にする必要はありません。他の人との比較も意味はありません。人が儲けようが損しようが、それはどうでも良いことで、自分が儲かるか損するかだけが、関心事だからです。

 相場が悪い時は敢えて運用する必要はなく、まだまだ下がりそうだと思ったらさっさと手仕舞ってキャッシュで持っていればいいのです。そんなにうまく手仕舞うことができず、もし相場を読み違えて大きく下がってしまっても焦る必要はなく、辛抱して持っていれば、いずれは戻る時が来ます。
 つまり、これらが素人の個人投資家が持っている最大のアドバンテージなのです。相場というものはどんなに精緻に分析したり予想したりしても、必ず予想外のことが起こります。

 そうしたことが起きた時に、どれぐらいゆとりを持って対処できるかということが実は運用結果に意外と大きな差を生み出すのです。したがって個人投資家が最もやってはいけないことはプロの真似であり、「無理をすること」、「焦って行動する」ことだと言ってもいいでしょう。何もわざわざ不利なプロの投資家と同じ心理的状態に自分を追い込む必要は全くありません。そうならなくても良いぐらいの金額の資金で投資すること、それこそアマがプロに勝てる秘訣と言えるのではないでしょうか。
大江 英樹 :経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

最終更新:8月13日(日)6時00分

東洋経済オンライン

 

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