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増え続ける孤独死にオーナーはどう対応する?

5月19日(金)18時20分配信 不動産投資の楽待

(写真© godfather-Fotolia)
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近年、孤独死が深刻な社会問題となっている。ひとりで暮らす高齢者の増加や、地域内のコミュニケーションの希薄さなど、問題が簡単に解決できない点も大きなポイントだ。さらに亡くなってから遺体が発見されるまでに長期間かかるケースも増えており、賃貸だった場合は事故物件となる可能性もある(※)。マンションなどを経営するオーナーにとっても、けして他人事ではないのだ。

しかし人は必ず誰もが死ぬ。高齢化が進む社会で、孤独死をリスクと考えていただけでは、未来はないのではないだろうか。今回は不幸にも孤独死を体験してしまったご遺族やオーナー、そして特殊清掃業者の声を聞き、現場でどんなことが起こっているかを検証する。さらに自治体や保証会社を通して、オーナーが取れる対策についても紹介をしていきたい。

※次の入居者への告知義務が発生するのは自殺、殺人、事件が起きた物件のことであり、自然死、病死の場合は必ず事故物件になるとは限らない。しかし遺体発見までに時間がかかり、部屋の汚染が進んでいる場合は、次の入居者への告知をするか否かは判断が難しくグレーゾーンとなっている。

■孤独死の現場で遺族と大家はどう対応したか

孤独死が起きた時、現場ではどんなことが起きるのか。まずはご遺族から話を伺った。

○Aさん(40代女性・東京都)のケース

関西圏出身のAさん。ご自身は結婚して東京に移り、母と兄は大阪ながら別々の住まいで暮らしていた。

「父が亡くなったことをきっかけに、母親が賃貸で一人暮らしが始めたのですが、父が亡くなったショックからアルコール中毒になってしまいました。私が引き取りを申し出たのですが、本人は聞き入れず、兄が週に1~2回母の住むアパートに様子を見に行くことにして、私からもなるべく連絡していました。

そんなある時、突然連絡がつかなくなり、兄が見に行くと部屋の中で亡くなっているのを発見しました。後で分かったのは、脳こうそくで倒れた拍子に、頭をぶつけて死亡した、ということ。母の場合は死後3日くらいで、遺体の傷みはそれほどなかったのが救いでしたが、やはり兄妹の間であの時無理を言ってでも引き取っていれば、という話しを何度もしました。

部屋はそこまでの汚れがなく、血痕が少しあったので私たちのほうで掃除をし、大家さんに確認してもらい了承していただけました。賠償請求などもなく、家賃は日割りにするのでゆっくり部屋を片付けてくださいと仰ってくれたのが本当に救いでした」。

○Bさん(40代男性・千葉県)のケース

孤独死をされたのはBさんの叔母。結婚をしなかったBさんの叔母にとって、Bさん一家が唯一の親族だった。

「母の姉である叔母が孤独死をしました。私たちも割と近くに住んではいたのですが、母が亡くなったあとはなかなか連絡を取る機会がなく、月に1度くらい連絡をしあう程度でした。ある時連絡がつかなくなり、不審に思って家に行ったところ、風呂場でもたれるようにして亡くなっていました。

叔母のかかりつけ医に連絡したところ、すぐに来てくれることになりました。今考えれば遺体には触れないほうがよかったのでしょうが、その時は気が動転していて妻と服を着させ布団に運びました。医者、警察と到着して調べてもらったところ、気分が悪くなってうずくまったまま、亡くなったのだろうということでした。

死後1週間ほど経っていたのですが冬場だったこともあり、遺体はそこまで傷んではいませんでした。風呂場で亡くなっていたので、汚れを洗い流すことはできたのですが、臭いは少し残っていました。何度か掃除をして、大家さんにもご了承いただけました。資産価値が下がったという賠償請求があるかもと心配していたのですが、特にありませんでした」。

次に孤独死された方が住んでいた物件のオーナーにも話を聞くことができた。

○Cさん(不動産賃貸業・奈良県)

「私の物件は奈良県の田舎にありまして、お子さんが都会に出ていき、一人暮らしになったご老人に住んでいただくケースが増えているのですが、やはり一人で暮らすのが難しくなるとお子さんが引き取られたり、病院に入ったりするのが一般的です。なので、孤独死をされる方は少なく、私も2度ほどしか体験したことはありません。

その一つのケースでは、息子さんが大阪に住んでいる一人暮らしの女性だったのですが、ほぼ毎日散歩をされていたので、よくあいさつをしていました。ある時、数日姿を見かけないことに気付き、息子さんに電話をして旅行にでも行かれているのか確認したんです。すると、そんなことはないので鍵をあけて確認してほしいと言われました。それで行ってみると布団の中で亡くなっていました……。

死後4日で、布団は汚れていましたが、ご遺体の損傷はほぼありませんでした。もうひとつのケースも建物が駄目になるといったことはなかったです。もし発見が遅れて部屋に汚染がある場合は特殊清掃を入れますし、場合によってはリフォームも必要になるでしょうから、その費用はご家族に請求することになると思います。どこまできれいにするかは話し合いになるでしょうね。ただ孤独死が起きても私はそれほど迷惑だとは感じないと思います。同じ人間ですから、やはり気の毒という感情が勝つのではないでしょうか」。

○Dさん(不動産賃貸業・愛知県)

「自分が大家をしていた物件で、70代の男性が孤独死をされました。気付いたきっかけは、家賃を滞納されていた上に連絡がつかなかったことです。長年うちの物件に住んでいた方でその方の父親が保証人となっていたのですが、その方とも連絡はつきませんでした。そこで管理会社に様子を見に行ってもらうと、新聞受けに新聞がたまっているということで、孤独死の可能性を判断し、警察を呼びました。

そして私と管理会社の3者で自宅内に入り、先に警察の方に中を確認してもらうと、こたつに入った状態で仰向けに倒れている状態で亡くなっていました。1カ月以上が経過しており、ご遺体の傷みも激しかったので、本人確認のためのDNA検査と事件性がないかの捜査があり、その結果が出るまでの2週間ほどは部屋を片付けることができませんでした。

2週間後に本人確認がとれ、死因は病気によるものと判明しましたので、特殊清掃業者に依頼して室内の清掃をしてもらいました。20万円ほどかかったと思いますが、ご遺族もいなかったため、私が負担しました。早く清掃をしないと、衛生面で周りの住人にも迷惑がかかりますし、迷いはありませんでした。

次の入居者の方には告知をし、家賃も相場から2割ほど引き下げました。周りに聞くとひどいときは資産価値が1/3ほどになる場合もあるようです。孤独死の場合、定義も曖昧ですし告知義務も明確ではありませんが、周りの住人から新しい入居者の方の耳に入ることは十分考えられますし、あとでトラブルになるよりはと思って告知しました。ただ殺人や自殺でないのであればと、そこまで気にせずに入居してくださる方がいたのでありがたかったです。

高齢者の方の入居を避ける大家もいますが、私としては、若い方でも自殺などがありますし、年齢によってそこまでリスクが増えるとは捉えていません。ただ今回のケースで学んだことは、保証人がいたとしても長年住んでいる間に保証人が亡くなるということがあるので、保証会社を通すほうがいいということです。原状回復費用まで負担してくれるような保証をつけておけば、安心ですよね。私が考える一番のリスクは空室です。身構えすぎて空室が続くよりは、保証会社を通して入居してもらうのがいいと考えています」。

状況は違うが、所有する物件で孤独死が起きてしまったCさんとDさん。しかし二人とも、その後高齢者の入居を避けるということはないという。Dさんの言うように保証会社を利用しつつ、大家も入居者も双方が安心して貸し借りができるようになれば、空室という大きなリスクにも対策を取ることができる。

■孤独死の現状を知る

この章では、孤独死が実際にどれくらい発生しているのかを見ていきたい。

まずは「孤独死」や「孤立死」の定義についても確認をしておく。両方とも明確な定義はないのだが、一般的には社会とのつながりがなく、死亡してから長期間気付かれなかった状況を指す。

ニッセイ基礎研究所の報告書では、遺体発見まで2日以上かかった場合を「孤立死」と定義し、東京都監察医務院が行った「東京都23区における孤独死の実態」では、「異常死(自殺、事故死、死因がはっきりしない死)の内、自宅で死亡した人」を「孤独死」と定義している。記事内ではニッセイ基礎研究所の報告書以外の部分は「孤独死」という表現に統一する。

平成23年3月に発行されたニッセイ基礎研究所の「セルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のあり方に関する調査研究報告書」では、全国の年間の孤立死を推計している。これによると、死後2日~8日以上経過して発見された事例は全国で約52,000人と推計されており、男性の孤立死の発生率は65歳~69歳が3,220人と一番高い。

平成22年に東京都監察医務院が行った「東京都23区における孤独死の実態」も見ていこう。この資料によると平成18年時点で東京都23区内における孤独死は3395件発生している。昭和62年の調査開始以来、年々増加傾向にあり、平成18年の段階では、単純計算で1日あたり10人前後が孤独死をしていることになる。

また、死後発見までの平均日数は男性で死後12日、女性で6日となっており、孤独死という問題の深刻さが伺える。

■孤独死のリスクに対応する 特殊清掃・家賃保証

不幸にも発見が遅れ、部屋の汚染が進んでいた場合、特殊清掃を依頼することになる。特殊清掃や遺品整理を行う、有限会社A&Tコーポレーションの代表、高江洲敦さんに話を聞くことができた。

――まずは、特殊清掃の内容について教えてください。

「発見までに時間がかかってしまったご遺体による汚染や臭いを、特殊な薬品などを使いながら取り除く作業です。パッと見ただけではわかりづらい、床下にまで汚染が進んでいる場合もあり、臭いの元となる汚染を完璧に取り除き、次の方が安心して住めるよう原状回復することを目的としています。フルリフォームをお考えであれば臭いを取るだけでいいでしょうし、逆に臭いが残ってもかまわないので汚染だけ取り除いてほしいというような依頼もあります。作業内容は依頼主の意向によって様々です」

――作業時間、費用はどのくらいになるのでしょうか?

「作業時間は内容、状況にもよりますが半日程度です。費用は、特殊清掃は一律9万8000円、遺品整理は5万8000円からになります。以前は遺品をすべて処分していたのですが、今はリサイクル業者との連携により、遺品の買い取りもしています。もちろん売る売らないはご遺族の意志ですが、買い取らせていただいた場合はその金額を費用から差し引きますので、2~3万円ほど安くなるケースも多いです」

――大家が特殊清掃を依頼する上で、注意したほうがいい点はありますか?

「特殊清掃業を名乗りつつ技術力の低い業者とトラブルになったというのはよく聞きます。全く匂いが取れていないと、弊社に再度依頼してくる方もいますね。特殊清掃は、目に見える汚染部分を取り除くだけではないのです。場合によっては床下にまで汚染が進んでいることもありますから、そこまでの清掃が済んでいるかを現場で確認すべきです。また最初に金額の合意がないまま、作業が進んでしまい、思っていた以上の金額を請求されたという話も聞くので、作業の前にきちんと提示してもらうことも大事だと思います」

――数々の現場を見られてきたと思いますが、孤独死を起こさないために、大家ができることには何があると思われますか?

「対策はいくらでもあると思います。例えば弊社で提供している家賃保証は、2年間1万2000円程度の保険で、もし入居者が亡くなった場合は清掃、火葬、納骨までの費用が負担されるので、大家の持ち出しはほとんどありません。また生活保護を受けている方の火葬納骨費用は行政からの補助でまかなえる場合がほとんどです。私のような業者に特殊清掃や遺品整理を依頼いただければ、リサイクル品の買取などもできます。

人は必ず亡くなりますし、いつ何が起こるかわからないのは誰しも同じです。私は個人的に、孤独死を少しでもなくす活動もしており、家賃を払えなくなってしまった方への仕事の紹介などをしながら、身寄りのない方でも社会で生きる場所がないか一緒に探しています。これから高齢化がますます進みますから、対策はとりつつ、終の棲家になるのを必要以上に恐れない世の中になっていってほしいと願っています」

■自治体と提携しながらできる孤独死対策

孤独死の事態を重く受け止め、各自治体では様々な取り組みが行われている。その中で大家ができる対策はないか、練馬区高齢者支援課の方から話を聞いた。

――高齢者支援の柱として見守り支援の事業をされているそうですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

「今現在行われているのは、地域のボランティアである『見守り訪問員』が希望する高齢者の自宅を定期的に訪問する見守り支援、個人宅をまわる企業と提携した見守り事業です。

さらに平成29年度から新しく、『ひとり暮らし高齢者等訪問支援事業』というものを行っています。今までは希望者だけにしぼっていた見守りから、区の情報を元に一人暮らしの高齢者宅などに訪問し、定期的な訪問が必要だと判断した場合にはボランティアのが伺うという形をとることになっています。高齢の方の中には区や地域の情報が届かず孤立しがちな方もいますので、こういった形で取りこぼしをなくすことを目的としています」

――見守り支援の事業における効果はいかがでしょうか?

「異変を感じたという連絡を受けて、一命をとりとめたという事例はいくつもあがっています。数年前に起きたあるケースでは、ご本人に持病があり一人暮らしを不安に感じていらっしゃいました。そこで区と見守りについて提携している新聞配達業の方にも注意して見てほしい旨を伝えていたのです。ある日、新聞配達の方が朝刊の配達時に前日の夕刊がポストに入ったままになっていることに気付き、警察に通報しました。そこで倒れているのを発見し、緊急搬送され、一命をとりとめたのです」

――高齢者の方の入居に対し、オーナーができることはありますでしょうか?

「練馬区の場合は、先にお話ししたように一人暮らし高齢者への訪問を行い、必要であれば見守り等を行っていきますので、安心いただきたいのですが、そのような取り組みがなく、高齢者の方が入居されて不安に思うことがありましたら、各自治体にある地域包括支援センターにご連絡ください。ケアが必要と判断した場合には、日々の暮らしをサポートする介護サービスなどにつなぎます。高齢者の方への見守り等の情報はなかなか届きにくい場合もありますから、大家さんからご連絡をいただけるのは大歓迎です。

見守り支援事業はもしもの時に備えるだけでなく、家に閉じこもらずに外へ出て関わりを持つことを促すことも大きな使命だと考えています。そのため「街かどケアカフェ」という取り組みをしています。高齢者の方をそちらへお誘いし、地域の方との交流を促しています。

高齢者の方の入居が不安という大家さんもいらっしゃるでしょうが、大家さんだけでなく、自治体、ご近所の方、自宅を訪問する業者などがいれば、何重にも高齢者の方を見守っていくことができます。地域での支え合いの中暮らしていければ、孤独死は減らしていけると考えています」

今回、孤独死の対策を調べていく中で、多くの関係者が孤独死を恐れず、未来を明るく語ってくれたのが印象的だった。不動産オーナーとしては、資産が事故物件になってしまう可能性もある孤独死。一人暮らしの老人に大切な物件を貸すことをリスクと捉える人もいるだろう。しかし、何かある前に、あるいは何かあってもすぐに発見できるシステムを構築できれば、住む人の幅が広がりつつ、将来的に大きな社会貢献に繋がる可能性も秘めているのだ。

楽待新聞編集部

○取材協力
・A&Tコーポレーション 高江 洲敦様
https://www.facebook.com/pg/A-Tコーポレーション-321315631229297/about/

・練馬区高齢者支援課 課長 屋澤様
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:5月19日(金)18時20分

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株式会社ファーストロジック

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