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高速夜行バスの低価格競争は終焉?「高級化」の動き相次ぐ

3月5日(日)19時10分配信 THE PAGE

[写真]「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」の前でポーズを取る両備ホールディングスの松田敏之副社長(右端)ら
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[写真]「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」の前でポーズを取る両備ホールディングスの松田敏之副社長(右端)ら
 高速夜行バスに「高級化」の波が起きている。大手バス3社が1月に、高価格帯のバスを東京と大阪を結ぶ路線に投入すると相次いで発表したのだ。業界初の全室個室という座席レイアウトや片道運賃が2万円というこれまでの「低価格戦争」とは一線を画す動きだ。価格競争で疲弊するバス業界に一石を投じることになるか。

●東京~大阪片道2万円

[写真]完全個室となった「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」
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[写真]完全個室となった「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」
 両備ホールディングスと関東バスは、業界として初めて全11室が完全個室となった「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」の運行を1月18日から開始した。

 背もたれの角度を40度、座席の角度を30度、フットレストを胸の高さで水平にする「ゼログラビティ姿勢」、凸面で身体を支える「ムアツクッション」によって、寝返りを打つ必要性がないというのが大きなポイント。ウェルカムアロマや除菌消臭効果があるプラズマクラスター、温水洗浄トイレ、パウダールームを設けるなど、インテリアもさることながら、至る所で高級感も演出されている。乗客の状況を把握するためにルームミラーで室内が見渡せない難点は、全室にカメラを設置することでカバーし、乗客が座った状態ではカメラに映らないようプライバシーにも配慮した。緊急時には室内にある通報ボタンで乗務員に状況を知らせることができる。
[写真]「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」のシート
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[写真]「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」のシート
 両備ホールディングスの松田敏之副社長は「安かろう、悪かろう、眠れないというイメージがある。夜行高速バスは寝ていただくのが目的で、寝ている間に移動できる最大の魅力をどういう風に作っていくかといったらこういう形になった。」と、開発に至った経緯を夜行バスの魅力を追求した結果であると話す。

 大阪方面行きは池袋駅西口を午後10時50分に出発し、なんば(OCAT)に翌日午前7時30分に到着。東京方面行きはOCATを午後10時40分に出発し、池袋駅西口には翌日午前6時40分に到着する。夜行バスにもかかわらず、大人片道運賃は2万円(通常期)。2月末までは「運行記念割引」として2000円引きの1万8000円で利用できる。

 計画は両備ホールディングス側からの提案から始まった。導入費用は約1億円で、うちバス本体の価格は約4500万円。損益分岐ラインは8人だが、「11人に乗って頂けるのではないか」(松田副社長)と自信を示す。
[写真]新シート「ReBorn」を導入したWILLER EXPRESS
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[写真]新シート「ReBorn」を導入したWILLER EXPRESS
 WILLER EXPRESS(ウィラーエクスプレス)も、3列で全18席を配置した新シート「ReBorn(リボーン)」を導入する。従来の3列独立シートとは異なり、カーテンではなくシート全体を包む壁に覆われている。隣の人が何をしているのかは着席時には覗くことはできず、個室ではないので閉塞感がない。シートのリクライニング角は156度、座面幅は59センチでウィラーエクスプレスのバスの中で最も広く、高身長でも窮屈感なく過ごせる。運賃は東京~大阪間では片道1万800円から設定されている。

●高速バスの独壇場

 3社が相次いで高価格帯のバスを投入する背景には、ニーズの多様化と競争環境の変化がある。

 東京~大阪間を安価に移動する場合、かつてはJRの快速「ムーンライトながら」などの夜行列車が主流だった。近年では夜行列車が季節運転になるなど縮小したものの、代わりに成田空港を発着する格安航空会社(LCC)も出現した。しかし、LCCは便数が限られる上に空港アクセスの費用や乗り換えの手間もかかるため、高速バスと比べると利便性が高いとは言えず、高速バスの独壇場となった。しかしながら、各社がこぞって参入したため、競争は激化。キャンペーン価格ながらも片道数百円という運賃で販売されたこともあり、40席クラスの4列シートのバスを中心に満席にすることに苦戦するバス会社も続出した。

 今回発表された2つのバスをみると、東京~新大阪駅間の新幹線指定席の片道運賃(1万4450円、通常期の場合)に匹敵もしくはそれ以上の価格であるのが目につく。一方で、両備ホールディングスが横浜~広島間で運行しているバスも4席ある完全個室の座席から予約が埋まっていく傾向にあり、ウィラーエクスプレスも東京~大阪間を結ぶ路線のうち約1割を占める片道8000円以上の高級バスの乗車率は約9割と好調で、いずれも女性からの予約が多いという。利用状況をみても、強い需要があるといえる。

 東京から新大阪へ向かう新幹線の終電は午後9時半前。「DREAM SLEEPER 東京・大阪号」であれば約1時間30分長く東京に滞在することができ、大阪には始発よりも約45分早く到着することができる。コンサートの終演や野球の試合終了まで滞在を満喫し、翌日には余裕を持って出社できる。数年前から休日を中心に大都市のホテルの料金が高値安定している現在、宿泊費が節約できるという利点のみならず、快適に過ごしながら移動できるとなれば、プチ贅沢な移動も良い選択肢になるだろう。

●価格競争で疲弊

 規制緩和によって高速ツアーバスへの新規参入が増加し、最も需要が大きい東京~大阪間では特に競争が激化した。2012年に関越自動車道で乗客7人が死亡する事故が発生したことで規制が強化されたものの、バス業界全体をみると2016年1月の軽井沢スキーバス事故など悲惨な事故が後を絶たない。「こぞって値段競争をしたのが業界の実態。いろんな事故でイメージを下げている。」(両備ホールディングス松田敏之副社長)と先行きを懸念し、「業界イメージの向上、担い手が集まってくる努力をしたい。」(同)と期待を示した。

 高級バスの成功によって高速バスそのもののイメージアップにつながり、良い人材が集まるようになれば、業界全体の発展が見込める。2万円という高価格バスは果たして成功することができるのだろうか。価格競争に疲弊した業界に一石を投じる、業界全体の今後を占う試金石となるだろう。
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■後藤卓也(ごとうたくや) 旅行情報メディア「Traicy(トライシー)」編集長、1989年生まれ。航空や鉄道、バス、格安旅行、航空券、マイルの取材を得意とする。LCCを中心に年間100搭乗。トライシー・サイト

最終更新:3月12日(日)5時02分

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