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銀行マンの運命を左右する「地銀再編」の大波

3月21日(火)6時00分配信 東洋経済オンライン

従来のビジネスモデルはもはや通用しない(写真:(C)Kiyoshi Tanaka/orion/amanaimages)
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従来のビジネスモデルはもはや通用しない(写真:(C)Kiyoshi Tanaka/orion/amanaimages)
 地銀再編が加速している。

 3月16日、新潟県首位の第四銀行と同2位の北越銀行が経営統合に向けて動いていることが明らかになった。

 その1週間ほど前、地域金融行政の第一人者である金融庁監督局の西田直樹審議官の姿は長崎にあった。長崎県内首位の十八銀行と同2位の親和銀行が進めている統合計画を受けて、地銀の経営統合に対する金融庁の考え方を県内の事業者に向けて説明するためだった。

 西田氏は説明会でこう述べた。「人口減少で貸出の市場規模が縮小していくと、地銀の安定的な収益確保が難しくなる。経営統合は、経営の効率化を通じて健全性を維持し、金融仲介機能を安定的に発揮していくための選択肢の一つ」。

 その一方で、「銀行の自主的な経営判断を尊重した行政運営をしている。決して経営統合を推進しているわけではない」(西田審議官)とも強調したが、人口減少に耐えるビジネスモデルの構築を地方銀行各行に求めてきたことは事実だ。

■地銀再編に3つのパターン

週刊東洋経済は3月20日発売号(3月25日号)で『銀行マンの運命』を特集。全国で起こる再編や変革を迫る金融庁、フィンテック(ファイナンスとテクノロジーを合わせた造語)の大奔流など銀行マンの運命を左右する大波を追っている。

 銀行界での再編は活発化している。第四銀行と北越銀行の統合交渉を含めると、地銀の再編が明らかになるのは今年に入って3例目だ。2月28日に三重銀行(三重県)と第三銀行(同)。3月3日に近畿大阪銀行(大阪府)、関西アーバン銀行(大阪府)、みなと銀行(兵庫県)の3行統合が発表されている。

足元で起きている地銀再編3パターン

 足元で起きている地銀再編には3つのパターンがある。一つ目が県内の首位地銀と2位地銀による統合。長崎の十八・親和、冒頭の第四・北越がそれだ。二つ目がメガバンク主導の再編で3月に公表された関西の3行のケース。近畿大阪銀行はりそなホールディングスの傘下。関西アーバン銀行とみなと銀行は三井住友フィナンシャルグループ(FG)の傘下銀行である。三つ目が県内トップ地銀の対抗で県内の2位と3位が統合に動く事例。これが2月に発表された三重銀と第三銀に当てはまる。

 今後も、地銀再編はこの3パターンを軸に統合が加速していくとみられる。ただし、第一のパターンは、公正取引委員会の壁を越えなければならない。その壁にぶつかっているのが、長崎県の2行である。昨年2月、十八銀行と、ふくおかFG傘下の親和銀行が、2018年4月に合併するという計画を発表した。

 だが、今年に入り、この合併計画は半年延期が決まった。理由は公正取引委員会の審査が完了していないため。十八と親和が合併すると、長崎県内の融資シェアは7割に及ぶ。そうすると、地元企業の選択肢(取引できる銀行の数)が狭まり、競争が実質的に制限される可能性があるというのが公正取引委員会の見方だろう。

 要は“待った”をかけられた格好だ。長崎ほどではないが、新潟の第四と北越も統合すると新潟県内の融資シェアが5割を超えるため、公正取引委員会の判断を仰ぐことになるだろう。

■県内に3地銀の岩手、山形が注目

 長崎をはじめとして「県内1位、2位」の統合が実現すれば、ほかの地域でも雪崩を打って再編が加速する可能性がある。47都道府県のうち3行以上の地銀がひしめくのは14都府県。中でも、人口減少の大きい岩手県と山形県が注目される。国立社会保障・人口問題研究所の人口予測によれば、岩手県の2040年の人口は10年比29.5%減。山形県は同28.5%減。全国平均の16.2%を大きく下回る。岩手県は同減少率でワースト4位。山形県は同5位だ。1位の秋田県、2位の青森県、3位の高知県はすでに県内2行体制となっている。

 そうすると、岩手県内で断トツの岩手銀行が、2番手の北日本銀行あるいは3番手の東北銀行と統合する可能性も考えられる。どちらと統合しても融資シェアは5割を超える。山形県では断トツの山形銀行が、フィデアホールディングス傘下の荘内銀行を選ぶか、じもとホールディングス傘下のきらやか銀行を選ぶか。荘内銀行ときらやか銀行の県内融資シェアはほぼ拮抗している。フィデアはかねて「オープンプラットフォーム戦略」を唱え、ほかの地方銀行の合流に前向きだ。山形銀行が動くとすれば荘内銀行が有力だろう。

メガバンク主導や県内2・3位統合のパターンも

 第二のパターンの「メガバンク主導の再編」で今後動きがありそうなのは愛知県。三菱東京UFJ銀行で唯一の持ち分法適用地銀は中京銀行。2015年に約64年ぶりに生え抜きの頭取が誕生したが、会長は今も三菱東京UFJ銀行の出身者だ。同じ愛知県で、三菱東京UFJ銀行が第2位株主となっている愛知銀行との統合が有力候補とみられる。

 一方、みずほ銀行が筆頭株主である千葉興業銀行も注目だ。県内トップの千葉銀行は武蔵野銀行と業務・資本提携を結んでいる。また、足利ホールディングスと経営統合した茨城の常陽銀行が千葉への南下攻勢を強めることも考えられ、競争が一段と激化しそうだからだ。

 第三のパターンの「県内2位・3位の統合」で、今後注目されるのは富山県。2位の富山第一銀行と3位の富山銀行は、頭取がともに日本銀行出身者。富山第一銀行は昨年3月に株式を上場しており、すでに上場済みの富山銀行との再編もしやすい形を整えている。

 第一のパターンは公正取引委員会の判断次第だが、メガバンク主導や県内2位、3位の地銀による統合は今後も進むだろう。

■大再編に加えてフィンテックの大波も

 業界再編の大波が押し寄せる中で、自主独立を貫くか、提携や統合に動くかの判断を問われている地銀は数多くある。ただし、経営統合による規模拡大や効率化をすれば安泰というわけではない。銀行業界にはフィンテックという別の波も押し寄せているからだ。

 フィンテックに対するグローバルの投資額は2016年に232億ドルへ達し、2年連続で200億ドルを超えた。日本はグローバルに比べ額が小さいものの、前年比約2.4倍の1.5億ドルだった(アクセンチュア調べ)。これまでフィンテックベンチャーの手掛けるサービスは家計簿アプリやクラウド会計など周辺分野にとどまっていた。だが最近では、為替、融資、預金という銀行の三大業務にまで拡大している。「フィンテックベンチャーと組まないとこの先は厳しい」と漏らす銀行首脳は少なくない。

 金融庁もフィンテックへの対応を行政の重点施策にしている。3月に閣議決定された改正銀行法案では、銀行に対しAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と呼ばれる外部サービスを活用する仕組みの開放を求めている。これは銀行が自前のオンラインバンキング上で顧客を囲い込みづらくなることを意味しており、「(さまざまなサービスを提供する)フィンテックベンチャーに主導権が移る端緒になる」(フィンテック企業関係者)と言われる。法改正を追い風に「小が大をのむ」という事態が起きても不思議ではない。

 自前主義にこだわらず、フィンテックを活用してほかの銀行との差別化をどれだけ図れるか。目先の業界再編だけにとらわれない対応が、今の銀行には求められている。
福田 淳/二階堂 遼馬

最終更新:3月21日(火)6時00分

東洋経済オンライン

 

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