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高積算・高利回り・中古RCを買ったが……どう頑張っても手放すしかなかった

3月17日(金)18時20分配信 不動産投資の楽待

(写真© hikdaigaku86-Fotolia)
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楽待コラムニストとしても活躍中の五十嵐未帆さんは「家族を大切にして自分一人で稼げるようになりたい!」と不動産投資をスタート。住まいのある神奈川県を中心に新築アパートを購入する投資スタイルで順調に規模拡大をして、5年半で8棟購入2棟売却1棟フルリノベーション。

現在は8棟74室を所有して年間家賃収入6000万円、CF2200万円を達成! そんな五十嵐さんでも1棟目の物件は「大失敗」だったという。ここで誰もが陥りがちな地方投資の罠を紹介する!

■表面利回り16%のお得なRC物件

五十嵐さんがはじめて購入したのは、2011年10月、兵庫県K市にある中古の1棟RC造マンション。住んでいる神奈川県川崎市からは、新幹線を使って4時間と、だいぶ離れており、土地勘もない関西の物件だった。

「なぜ、その物件を購入したのかといえば、銀行が融資の判断基準としている『積算価格』よりも、だいぶ安く売られており、利回りも高い物件だったのです。積算価格とは土地や建物の評価のことで、これが高いほど担保価値があるので、銀行などから融資が出やすくなります」

その物件の情報を得たのは、購入の3カ月前。関西の売買仲介業者からの非公開情報だった。実は、この1カ月前に、同じ兵庫県の物件を買い逃していたそうで、このとき知り合った業者が紹介したのが兵庫県K市の物件だった。

神奈川県に五十嵐さんがなぜ兵庫県を選んだのか。というのも、当初、首都圏だけにエリアを限定して探していたのだが、なかなかいい物件が見つからない。そこで、対象を全国に広げたという。つまり、兵庫の物件を購入したのは「たまたま」だった。

「当時、私が物件選びの基準にしていたのは、主に『高積算』『高利回り』『RC』でした。なぜこれを重視していたかというと、不動産投資をしている人たちの間でバイブルになっていた不動産投資の教材を参考にしたからです。積算評価の高い、つまり銀行が融資をしやすい物件をどんどん買い進めていくという手法で、資産を増やしていこうと思ったのです」

そう五十嵐さんは語る。こうして購入を決めたのが兵庫県K市の物件だ。駅から徒歩4分という好立地にあり、平成元年築で5階建てエレベーター付き。規模は1階に店舗、2階に事務所が入ったいわゆる「下駄ばき」といわれる物件で、3階以降に住居は3LDKが6世帯ある。

「この物件の魅力は、積算価格が1億円なのに、売買価格が35%引きの6500万円。しかも満室時の表面利回りが16%もあります。数字だけ見たら、明らかにお買い得ですよね。こうした『 おいしい物件』は、すぐに決まってしまうことがあるので、この情報を聞いたときはスピード勝負だと思いました」

五十嵐さんは、自己資金や借入条件など「資金計画」をもとに、利回り、年間家賃収入、返済額、経費等のシミュレーションを行った。利回りも16%と高いので、物件価格6500万円×16% =1040万円。つまり年間家賃収入が1040万円。満室で回せれば手取り額は470万円以上となるため、連絡を受けたその日のうちに買付証明書をファックスした。

買付証明書とは物件購入の意思表示。しかし買付を入れて終わりではなく、すぐに銀行へ融資の打診をしなくてはならない。なぜなら、物件の購入は買付を入れた順ではなく、購入が確実な順に優先権が与えられることが多いからだ。

「買付証明書を送ってすぐに業者からO銀行の融資事前審査申込書を書くように言われました。なぜO銀行だったのかといえば、銀行はエリア外の物件の融資は通常取り扱いません。遠方に住む私でもK市の物件が取り扱いできる銀行は、数行しかなく、その中でも自分が一番取り組みやすかったのがO銀行でした」


■「お買い得」の裏には、それなりの理由がある

これだけスピーディーに行動しても、2番手だったという五十嵐さん。ところが、1カ月以上経った9月に入って、1番手がまわってきた。その理由は「1番手が境界を確定しろと言っていたのですが、お隣と連絡がつかず確定できなくて……。だから、五十嵐さんに順番が回ってきました」というもの。境界とは土地の境目のこと。隣地との境界がどこになるのか明確にして、境界確認書に関係者全員で署名捺印を行うことを「境界の確定」という。

「そのときの私は、『なんで境界が確定できないんだろう?』と不思議に思いながらも、同時に『なんで境界ぐらいで物件の購入を諦めちゃうんだろう?』とも思いました。今だったら絶対に手を出しませんが、業者からは『関西は境界確定されていない物件は多く当たり前。融資もつくので大丈夫!』と言われて、そんなに大問題ではないと思ってしまったのです」

境界が確定しないというのは、敷地面積が確定されていないということ。例えば、敷地面積に合わせて、建ぺい率、容積率いっぱいで建物を建てていた場合、実際の境界が自分の敷地で大幅に食い込んでいた、つまり敷地が思っていたよりも狭かったというケースだと、建ぺい率や容積率オーバーの違法建築物になってしまうこともあるような、実は怖い状況だった。

本来は少しでも疑問に思うことがあれば、近隣の不動産業者にヒアリングを行うものだが、K市の物件は非公開物件。「物件売買の情報は極秘なので近隣業者には絶対に問合せないでください」と釘を刺されており聞き込みができなかった。

「今でこそ、もう少し警戒していれば……と思いますか、初めての物件購入でそこまで頭が回りませんでした。また、O銀行に『自己資金は2割必要』と言われました。O銀行は収益還元評価で、同じ兵庫県でも三宮や神戸あたりまでなら利便性を評価され、自己資金も1割で済んだのですが、中心地から少し離れたK市ではいくら積算評価が高くても、自己資金が2割必要になるという説明でした」

その他にも、物件を紹介してくれた不動産投資コンサルタントに300万円の紹介料が必要となったが、結局それは物件価格に込みとなった。そして、O銀行ではコンサルタント料が差し引かれた6200万円の約8割、4950万円の融資が通った。現金での支払いが増えたため、自己資金が足りなくなった五十嵐さんは、日本政策金融公庫で借りて、なんとかお金の都合をつけた。

■購入後、問題が次々に発覚!

こうして、ようやくオーナーになれた五十嵐さんだったが、問題が次々と勃発する。まずは空室。この物件は駅から近く駐車場はあったが、1階2店舗用で、居住用戸数分の空がなかった。

「地方は車社会ですから、駐車場があれば借り手がつきやすいだろう、と考えて、管理会社に『お隣の空き地を駐車場として使えるように交渉できませんか』と相談してみたのです。すると『難しい』と言われました。『お隣の土地を持っている方は、その筋の方の遠縁みたいなので、お話はできないんです』。

その筋の方の遠縁……? そのときの衝撃は忘れられません。そんな物件を購入してしまった、どうしようと胃が痛くなりました。お隣とは顔も会わせていませんし、隣地は今のところ空地です。でも、購入のときに判明している通り、境界の確定もできていませんから、今後、何か建物が建ったりしたら、ちょっとしたことでトラブルが起こるかもしれません」

そして何より、五十嵐さんが不安になったのは、この物件を売るときに「そのことを知られたら購入したいと思う人がいるだろうか?」ということだった。

さらに別の問題も浮上する。その物件を預けていた管理会社でトラブルが起こったのだ。

「管理会社の担当が、会社と揉めて管理部門の主要人物を率いて退社してしまったのです。遠方の物件は何かと不安でしたが、その担当の方が信用できると思って管理をお任せしていたので、辞めてしまったことはかなりショックでした。管理会社に残されたのは、若い新人ばかり。予想通り空室もなかなか埋まりませんでした」

くわえて、建物のメンテナンス費用が予定していた金額よりだいぶ多くかかってしまい、経費削除の交渉に追われる日々。その上、売買仲介業者から「すぐに決まりますよ」と言われていた2階の2つの事務所は全く入居が決まらない……。

そして、さらに追い打ちをかける問題が発生する。物件を購入して1年後、2012年に入ってから、マンションの大規模修繕の必要性を管理会社から指摘された。見積りを出してもらったところ、総額1000万円以上!

「目を疑いました。購入する前に、修繕費のことを売買の不動産仲介に尋ねたときは『せいぜい100万円ぐらいです』とのお返事で、何も知らずにそれを鵜呑みにした私が間違っていたのです。そもそもRC物件の修繕費がそんなに安いわけはないのです。この物件は元の利回りが高いので空室でも黒字でしたが、さすがに修繕費が1000万円もかかってしまっては、完全に赤字です」

このように、いろいろなことが重なると、さすがに「これは、私が手に負える物件ではないかも……」と、危機感を抱き始めた。そもそも、物件が遠方にあることも心理的に負担になっており、関東と関西ではアパートの敷金一つをとってみても、不動産の慣習が全然違うことも不安要素だった。

「今ならまだ引き返せる……そう思った私は、夫にも相談して『損をしてでもいいから、この物件は手放そう』と決めました。購入してからまだ1年のことでした」

こうして、五十嵐さんは1棟目が失敗物件だということを認識し、売却の手続きを開始した。

■買い手がついたのに融資が流れて、白紙撤回

売却を決意したのは2012年の秋、売買仲介業者に、この物件を持ち込んで相談したところ、積算価格が高いためか、ほどなく買い手がついた。しかし、すぐに売買契約が白紙撤回される、ある事件が発生した。

「買主さんは、地元の信金で融資を受けて購入予定でした。売買契約前の事前審査で内諾が出ていたのにも関わらず、売買契約後の本審査で融資不可となってしまったのです。その理由とは、境界確定できていなかった、例のお隣さんでした。私は知らなかったのですが、銀行が融資を翻してしまうくらいの方だったのです」

結局、売買契約は無くなり、売買仲介業者も手を引くことになった。この件があって、高積算、高利回りでお買い得だった本当の理由を知り、最初から騙されていたことに気付いた五十嵐さんだった。

そうとわかっても泣いているわけにはいかず、この事態をなんとか打開するため、悪条件も含めて全ての条件を開示して、物件の売却を別の業者に依頼する傍ら、何人かの弁護士の先生の無料相談に出かけたり、解決に向けて駆けずり回った。

「そうしたところ、問題を把握した上で『購入したい』という投資家が現れたのです。地元の不動産投資家で、毎月3棟も4棟も買い進めているような方でした。プロに買っていただけるなら私も安心です。やっとのことで売却することができたのです」

もともと積算価格が高かったのと、少し不動産価格が上がってきている時期だったので、購入時よりも高く売れたのも幸運だった。もちろん売却時にも諸経費はかかるので売却益がプラスマイナスゼロ。ただし、所有期間中のキャッシュフローが1年で200万円ほどになったので、投資としては失敗ではなかったそうだ。

■知っている土地で、新築アパートを買う

失敗の理由は遠方の物件に手を出したこと。五十嵐さんは、そう当時を振り返る。やはり物件の状況がよくわからない限り、収益物件の経営は難しい。また、購入後に起こる様々なリスクを考慮すると、買い進めるエリアを絞るのが大事だ。

「私は子供3人の母親でもあるので、頻繁に現地に行くことはできませんでした。K市の物件を見に行ったのは、結局1回だけです。近場の物件なら、空室対策や修繕に関するトラブルなど、何かしらの問題が発生したらすぐに出向いて物件や周辺状況をこの目で確認することができますが、遠方ではそれもできません。管理会社とコンタクトを取るのも、メールか電話。直接会って話ができないもどかしさをいつも抱えていました」

これを教訓に、物件選びは積算評価にこだわるのではなく、家賃収入から返済額と諸経費を引いた「手残りのお金」を重視した物件選びの基準に変更し、エリアも自分の住んでいる周辺に的を絞って探すことにした。今では新築アパートを順調に買い増やし、現在では8棟74室を所有、年間家賃収入は6000万円、CF2200万円を達成した。

これからの夢を聞けば、40代までに月間のCF400万円を目標として、経済的にも時間的にも自由を手に入れることで、家族を大切しながら気ままに暮らしたいとか。

「子供に資産を引き継ぎたいという気持ちよりは、夫婦の時間を大切にしたいですね。また、十分な収入を得られるようになったら、子育てしながら働く女性の不動産投資を通じた自立支援をしていきたいと思っています。本来なら収入が不安定な属性が悪い方ほど、本当に家賃収入が必要なはずなのですが、今の世の中ではなかなか不動産投資に取り組みにくいところがあります。そういった方が少しでも多く収入を得られるようなサポートができたらと考えています」

女性を応援するスタンスの五十嵐さん。自身の失敗からも、気軽に相談できるコミュニティは大事だと実感して、女性限定の交流会「エレガンス・オーナーズ」を主宰している。
不動産投資の楽待 編集部

最終更新:3月17日(金)18時20分

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