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Where's the 「内需」?

少子高齢化時代に根拠なき政策

11月5日(木)7時00分配信 JBpress

Where's the 「内需」? (1/3)

 かつて米国で「Where's the beef?」というテレビCMのフレーズが流行ったことがある。元々はハンバーガーチェーンがライバル店の肉の小ささを皮肉ったものだ。以来、政治の世界では政策を批判する際に「中身はどこにあるの?」という意味で使われている。

 日本では「内需主導の経済への転換」というスローガンが1980年代以降、不死鳥のように蘇る。リーマン・ショックで米国向け輸出が大打撃を受けると、鳩山政権は再びこのスローガンを持ち出し、日本経済を内需型にすべく産業政策を打とうとしている。

 しかし、これだけ堂々と「根拠なき政策」が掲げられることも珍しい。つまり少子高齢化する日本社会のどこに今後の需要が見込まれるのか疑問なのである。Where's the 「内需」?

 世界の需要の中心はやはり米国、中国も少子高齢化が鮮明に

 肝心な政策議論の際の報道にはすっぽり抜け落ちているため、国連が作成している国別人口見通しを加工した上で表に示した。「最終需要=消費」という観点から、家計のフローが最も大きな20~49歳の層を意識している。幾つかの注目点を抽出してみよう。

 (1)現在の中国では中核世代が6.5億人超と国民の半数近くに達し、潜在需要がとてつもない魅力に映るが、「一人っ子政策」のおかげで2030年には少子高齢化が鮮明に(2)高齢化はどの国でも見られ、ブラジルでさえ中核人口は20年後にピーク(3)少子化対策に熱心なフランスは2010年と比べて大きな人口構成変化が見られず、現状維持に成功(4)米国はヒスパニック系の移民流入を背景に一貫して中核的な年齢層を増やし続け、人口ピラミッドの形状は極端な変化を見せない。

 これに対して日本では一貫して総人口が減少し、2050年は2010年から▲25%となる。少子高齢化の進展や中核層の減少ぶりは、他国に比べてあまりにも極端だ。

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 鳩山政権が少子化対策に熱心なことは歓迎すべきだ。しかしながら、2004年に「乳幼児迎え入れ手当て」を整備し、それ以前からも熱心に少子化対策を打ってきたフランスでさえ、今の人口構成を守るのがやっとなのである。とても日本がこの悲劇的な人口シナリオを回避できるとは思えない。

 この人口見通しを見て、日本の国内需要を当てにできるだろうか。結局、日本が得意とする中~高付加価値製品の売り込み先は米国を中心に、中国や東欧など新興国を伸び代、そして欧州を押さえに考えるしかない。

*** 日本は期待できない「ウィンブルドン現象」 ***

 移民受け入れまで踏み込まなくても、「場所」さえ提供すれば世界中のプレーヤーが集まり、産業が発展していくという事例もある。英国が金融で一時期成功を収めたいわゆる「ウィンブルドン現象」のことだ。

 だが、このタイプの発展を目指そうにも、日本の将来は悲観的にならざるを得ない。

 その典型例として、東京・日本橋界隈をまさにロンドンのカナリー・ワーフのような金融街にするという構想があった。リーマン・ショックが発生し、今となっては夢のような話だが・・・。しかしそれ以前から、多くの国際金融関係者は「日本に多額の貯蓄があるからといって、東京が金融センターとなるには無理がある」と思っていた。単にリスクマネーが不在であるから、と言うだけではない。

 アジアで国際金融センターの成功例とされるシンガポールに長く勤務していた銀行マンは、東京がそれになり得ない理由を次のように指摘する。

 (1)日本では日常生活で英語が通じないため、家族も含めて生活しづらい。シンガポール人は英語が下手でも何とかコミュニケーションを取ろうとするが、日本人は逃げてしまう。

 (2)日本政府は外国人に住みやすい街をつくろうしない。シンガポールは外国からの勤務者が安心して暮らせるよう、生活に不可欠な制度をまるごと輸入している。例えば、日本の医師免許を保持しているだけである程度の診療行為が認められ、金融マンとその家族のために日本人医師を招いている。

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 (3)日本では女性が働きにくい。安価なベビーシッターがいなければ、女性は長時間働けない。保育所に預けていては残業できない。金融業では勤務時間の限定が活躍の場を限定するから、昇格に支障が出る。安価で優秀なベビーシッターの供給国であるフィリピンが近くにありながら、日本はそれを利用しない。

 (4)日本の硬直的な労働時間管理制度。工場のブルーカラー管理を主眼とした労働基準法で、ホワイトカラーの銀行員を縛る。このため、東京は残業代がかさむことで有名だし、自分のペースで長期休暇が取れない風土も不評だ。ホワイトカラーは勤務しづらく、経営にとっても労働コストが高くつく街である。

 耳の痛い話ばかりである。こうした日本に対する欠陥の指摘は、社会制度や文化・風土の違いに立脚している。つまり、グローバル社会と一線を画そうとしている我々の深層心理が突かれているのである。

 自分たちの社会の価値観やルールが明らかにグローバルスタンダードからずれているのに、最も国際的に画一化されたビジネスである国際金融業が世界に向けて成り立つわけがない。「観光立国」というキャッチフレーズに対しても、同様の理由で危うさを感じるのは筆者だけではあるまい。

*** グローバル化に背を向け、「内需主導」は現状肯定願望 ***

 話を本題に戻す。日本で「内需主導」が魅力的に聞こえるのは、我々自身がその生活をグローバル社会にさらすことを嫌がり、国内ルールで完結する社会を求めているからではないか。実は、内向きで現状を肯定したい感情が「内需主導」という言葉を「不死鳥」にしているのではないか。

 金融センターの事例で見られるように、日本はグローバル化が苦手だ。居心地の良い自分の庭を離れて外に打って出るというのは、現状維持を好む高齢有権者が多いこの国では、政治的にも聞こえが悪い。しかし冷静に分析すれば、これまでもそうであったように、現実の食い扶持の多くを強力な製造業に立脚した外需に求めていくしかない。

 全体のGDPは中国に抜かれても、わが国の1人当たりGDPは非常に高い。少子高齢化の日本にとって、重要課題は高い生産性の更なる向上である。足元から40年後を見渡しても、中国や米国という需要が強い国々と近く、歴史的に深いパイプがある点は他国にない強みと考えるべきだ。

 ここは誠実に国民に理解を求めよう。高い生産性を背景にした「バランスの取れた内外需要」主導の経済立て直しを実現するため、鳩山政権は産業政策を行ってもらいたい。内需と外需に区別した議論自体が時代遅れなのである。
筆者:博雅

最終更新:11月5日(木)7時00分

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